高岡簡易裁判所 平成18年(ハ)241号 判決 2007年2月27日
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原告
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同訴訟代理人弁護士
近藤光玉
東京都目黒区三田一丁目6番21号
被告
GEコンシューマー・ファイナンス株式会社
同代表者代表取締役
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同訴訟代理人弁護士
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主文
1 被告は,原告に対し,13万3516円並びにうち12万2067円に対する平成18年6月27日から及びうち1万0500円に対する同年9月12日から各支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを10分し,その9を原告の,その余を被告の負担とする。
4 この判決主文第1項は,仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
被告は,原告に対し,104万4633円並びにうち65万7927円に対する平成18年6月27日から支払済みまで年6パーセントの,うち10万円に対する同年9月12日から支払済みまで年5パーセントの及びうち25万円に対する本件訴状送達日の翌日(同年9月20日)から支払済みまで年5パーセントの各割合による金員を支払え。
第2事案
1 概要
本件は,被告との間で,別紙計算書1記載のとおりの金銭の借入・返済を重ねたとする原告が,
この取引を利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しているとして,不当利得返還請求権に基づき,過払金65万7927円及び被告は悪意の受益者であるとして過払金発生のときから支払済みまで年6パーセントの割合による金員,
上記不当利得返還請求権を実現するため弁護士である原告代理人に委任して本件訴訟を提起せざるを得ず,そのための弁護士費用は704条後段の損害にあたるとして,弁護士費用10万円及びこれに対する本訴提起日である平成18年9月12日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員,
原被告間の取引履歴につき,被告が原告に開示しなかったことは不法行為にあたるとして,慰謝料20万円と本訴提起のための弁護士費用5万円及びこれらに対する本訴状送達日の翌日(同年9月20日)から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を請求する事案である。
2 前提事実(争いはない)
(1) 被告は貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 原告は,被告との間で,別紙計算書1の年月日欄記載の日に,同借入金額欄記載の金員を借り入れ,同返済額欄記載の金員をリボルビング方式により返済した。
(3) 上記各返済金のうち,利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生する。
第3争点及びこれに対する当事者の主張並びに当裁判所の判断
結論を導く過程において不必要となる争点については記載を割愛する(民事訴訟法280条)。
1 不当利得返還請求権について
(1) 本件継続的金銭消費貸借契約関係の個数(連続性)について
原被告間の継続的金銭消費貸借契約関係は,平成8年1月25日に一旦終了し(以下,同日終了した連続する取引を「第一取引」という),平成11年7月2日に再開しているが(以下,同日再開し同18年6月27日まで継続する取引を「第二取引」という),第一取引と第二取引は一連一体のものと評価しうるか。
(原告の主張)
被告は,原告に対し,その取引前後に関係なく,同一の会員番号を付与して取引を管理してきた。そうすると,第一取引と第二取引は独立したものではなく,連続した取引と解すべきである。したがって,金銭の授受の都度,残債務があればそれに対して,なければ新たな貸付がなされたときにその債務に対して,当然に充当されると解すべきである。
(被告の主張)
第二取引は,第一取引終了後3年以上(1254日)にわたって中断しており,社会通念上,連続する一つの取引と評価する前提である社会的事実の同一性が欠けている。したがって,第一取引と第二取引は,二つの独立する取引と解すべきである。
(裁判所の判断)
金銭消費貸借契約は要物契約であり,返還合意に基づく金銭授受の度に一個の契約が成立するところ,基本契約において貸付限度額を定め,返済方式としてリボルビング払いを採用する等,数次の貸付,返済を包括的に一連一体のものとする旨の合意がある場合には,その複数の消費貸借関係は単一の消費貸借契約に内包されるものと解する。
原告と被告は,平成5年7月14日,貸付限度額10万円,利率年32.85パーセント,遅延損害金率年36.5パーセント,返済額毎回5000円とする旨の合意(以下この合意を「第一契約」という)をし,この合意に基づき第一取引がなされてきた(前提事実,乙23の1,2)。この第一取引を構成する貸付,返済が,単一の金銭消費貸借関係であることに争いはない。
そして原告は,平成8年1月25日に5万0712円を支払って第一取引を終了させ,3年以上(1254日)が経過した同11年7月2日,被告との間で,貸付限度額14万円,利率年29.2パーセント,遅延損害金率年36.5パーセント,返済方式として,毎月31日に残高スライドリボルビング方式により,借入残高10万円以下の場合は毎月の最低返済額5000円,借入残高10万0001円以上は9000円とする旨の合意(以下この合意を「第二契約」という)をし,この合意に基づき第二取引をしている(前提事実,乙23の3~7)。
してみると,第二取引は,第二契約に基づく融資義務,返済義務の集積に他ならず,第一契約とは全く無縁の契約関係と評価すべきであろう。しかも,第二契約時の帳簿(乙23の3)には契約更新時に要求される残高表示の記載もないのである(貸金業法施行規則13条1項1号カ参照)。
これに対し原告は,第一取引と第二取引につき,被告が同一の会員番号を付与してこれらの取引を管理してきたことを理由として双方の契約が一連一体であると主張する。しかしながら,会員番号を同一としたのは,原告の人的同一性を確保し,その管理を容易にするための手段とも推察され,このことから直ちに契約の単一性までもが導かれるものではない。第二取引は,第一取引とは何ら牽連性のない,全く新たな契約関係と解する。
(2) 消滅時効
(被告の主張)
原告が本件訴えを提起したのは平成18年9月11日であるから,同8年9月11日までに発生した不当利得返還請求権は時効により消滅する。
(原告の主張)
① 同一当事者間の継続的金銭消費貸借取引においては,過払金はその後の借入れに当然充当される。
② あるいは,相互の債権債務は簡易で公平な決済の趣旨に合致するものとして,その発生の都度,当然に反対債権と対当額で相殺により充当されたものとする旨の相殺充当に関する合意があるものと見ることができる。
③ 民法166条1項の権利を行使することができる時とは,単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく,さらに権利の性質上,その権利行使が現実に期待のできるものであることをも必要と解すべきである(最高裁大法廷昭和45年7月15日判決,民集24巻7号771頁)。
また消滅時効は,客観的状況に照らし,そのときからの権利行使が現実に期待できないような特段の事情がある場合には,その権利行使が現実に期待することができるようになった時から進行すると解すべきである(最高裁第一小法廷平成15年12月11日判決,民集57巻11号2196頁)。
一般私人である原告に貸金業法43条のみなし弁済が成立するかどうかの判断を求めることは無理な要求であり,原告の権利行使を現実に期待することができるのは,原告が原告代理人に法律相談をして債務整理を委任した平成18年7月14日である。
(裁判所の判断)
第一取引は,平成8年1月25日,幾ばくかの過払状態で終了したものとしよう。平成18年9月11日,原告は本件不当利得返還請求訴訟を提起した。被告は本件訴訟において同請求権の消滅時効を援用した。以上の事実によれば,原告は,遅くとも第一取引が終了した時点で不当利得返還請求権を行使することが可能だったはずであり,本訴提起日から10年以上前に発生した,第一取引に起因する不当利得返還請求権は,その金額の如何にかかわらず,時効消滅したものと解する。
これに対し原告は,上記①②③のとおり主張する。しかしながら,
① 第一取引と第二取引とは全く別個の契約関係であり,第一取引において発生したという過払金の不当利得返還請求権(弁済ではない)が第二取引時の貸付に当然充当されるとする法律上の根拠はない。最高裁第三小法廷平成19年2月13日判決(最高裁判所ホームページ)も,このような場合の当然充当を否定している。
② 被告は不当利得返還請求権の成立を争っている。そのような被告との間で,不当利得返還請求権と新規の貸金返還請求権を相殺する旨の黙示の合意があると擬制するのは余りに強弁に過ぎよう。
③ 原告にみなし弁済の成否を判断することが困難であったとしても,それは原告の主観的事情に過ぎず,不当利得返還請求権という権利の客観的な性格からして,その権利行使を現実に期待することは充分に可能なはずである。そもそも,不当利得返還請求権の消滅時効の進行につき,法(民法166条)は権利の存在の覚知を要件とはしていない(これに対し,消滅時効の進行につき事実の覚知を要件とするものとして民法426条,724条参照)。原告の主張は法の不知の保護を是認するもので採用できない。また,原告の挙げる2つの事例は本件と権利の性質を異にするもので適切ではない。
(3) 第二取引におけるみなし弁済の成否
第二取引において,原告のした各弁済は貸金業法43条1項の定める各要件を充たすか。
(被告の主張)
貸金業法43条1項により,みなし弁済の抗弁を主張する。
(原告の主張)
原被告間の貸付方法はいわゆるリボルビング方式であるが,被告が融資に当たり作成した基本契約書には返済期間,返済回数及び各回の返済金額の記載はなく,貸金業法17条1項の適用要件を欠くものである。また,被告はいわゆるみなし弁済の適用要件を具体的に立証していない。
(裁判所の判断)
記録を精査するも,貸金業法17条,18条所定の書面が弁済者自身に交付されたことを認めるに足る証拠はない。第二取引においてみなし弁済が成立するとの被告の抗弁は理由がない。
(4) 第一取引において発生した過払金返還請求権が時効消滅したことから,当事者間の取引は別紙計算書2記載のとおりとなるところ,平成13年6月4日の段階で発生した9万5750円の過払金は,その後の借入金とどのような関係となるか。
(被告の主張)
過払金として発生した金額は,その発生の都度,不当利得返還請求権たる債権となるのであり,その後の貸付けに充当されることはない。被告は原告に対し,貸付金残高と過払金返還債務とを対当額で相殺する。
(原告の主張)
同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引においては,相互の債権債務は簡易で公平な決済の趣旨に合致するものとして,その発生の都度,当然に反対債権と対当額で相殺により充当されたものとする旨の相殺充当に関する合意があるものと見ることができる。
(裁判所の判断)
第二取引が,複数の借入と返済から構成される単一の契約関係であること,返済方法として残高リボルビング方式をとり,返済時の,借入額や返済額が渾然一体となった残高に応じて返済額が決定されること,取引途中に生じた過払金は,返済期日前の返済と類似する関係にあること等からすると,取引途中で生じた過払金は,契約の性質上当然に以後の借入金に充当されると解するのが相当である。被告の相殺の主張はその前提を欠き理由がない。
(5) 民法704条の悪意
被告は民法704条の悪意の受益者に該当するか,すなわち,被告は利益を受けるにつき,法律上の原因のないことを知っていたか。
(原告の主張)
被告は,利息制限法所定の利率を超える利息で原告に貸付をしていた。したがって,利息制限法に従って元本充当計算をすると過払いになることを知っていた。被告は悪意の受益者である。
(被告の主張)
被告は,原告に対し,取引の都度,貸金業法17条,18条所定の書面を交付しており,同法43条のみなし弁済の要件を充足していた。仮にこの要件に欠けるところがあっても,被告は同条の適用を受けるため,交付書面の整備を図っており,法律上の原因を欠くものと認識していたわけではない。
(裁判所の判断)
被告は,貸金業法により営業する貸金業者であり,利息制限法所定利率を超過する約定利率により貸付返済を継続していたのであるから,貸金業法43条1項によるみなし弁済が認められない場合には,早晩,過払金が発生することを認識していたはずである。本件において,被告は,貸金業法17条,18条所定の書面を弁済者に交付したことを認めるに足る証拠を提出しておらず,この立証の程度からすれば,利息制限法所定利率を超過する約定利率により取引を継続するにつき,法律上の原因のないことを知っていたものと認められる。
(6) 民法704条の利息
民法704条に定める利息とは年5パーセントか6パーセントか。
(原告の主張)
過払金返還債務は法人である貸金業者の商行為(商法52条)に起因するもので,民法704条の利息は商事法定利率である年6パーセントとすべきである。704条前段の趣旨は,利得者の取得した運用利益を返還させることにあるから,商人である被告が利得物を営業に使用して収益を上げた場合には少なくとも商事法定利率による利息相当額をえたものと扱うべきである。
なお,法定利息の計算にあっては,通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律3条により1円未満の場合も四捨五入すべきである。
(被告の主張)
不当利得返還請求権は,利得者が損失者に対し,法律上の原因なくして保有している利得を,損失者の受けた損失の限度で返還することを内容とするものであり,民法704条の利息請求権も損失者の受けた限度での損害を回復させるためのものである。本件では,被告は商人であるが,原告は商人ではないから,原告が本件利得を運用することによって取得することのできた利益は民事法定利率による。
(裁判所の判断)
商行為である貸付けにかかる債務の弁済金のうち利息の制限額を超えて利息として支払われた部分を元本に充当することにより発生する過払金を不当利得として返還する場合において,悪意の受益者が付すべき民法704条前段所定の利息の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。なぜなら,商法514条の適用又は類推適用されるべき債権は,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものでなければならないところ,上記過払金についての不当利得返還請求権は,高利を制限して借主を保護する目的で設けられた利息制限法の規定によって発生する債権であって,営利性を考慮すべき債権ではないので,商行為によって生じたもの又はこれに準ずるものと解することはできないからである(最高裁第三小法廷平成19年2月13日判決,最高裁判所ホームページ)。原告の主張は採用できない。
なお,法定利息の計算だけに通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律3条を適用するのは当を得ない。
2 民法704条後段の損害賠償請求権について
原告は,被告により,民法704条後段に定める損害をこうむったか。
(原告の主張)
原告は一般市民であり,本件不当利得返還請求訴訟の提起を弁護士である原告代理人に依頼せざるをえず,着手金1万0500円,成功報酬として回収金額の20パーセント相当額を支払うことを約した。この弁護士費用のうち10万円は,民法704条後段にいう損害であり,その要件は不当利得と相当因果関係の範囲内にあれば足りる。そうでないとしても,次の理由により,被告の行為は不法行為に該当するので,原告は被告に対し,その損害の賠償として当該弁護士費用を請求する。①被告は,貸金業法43条の適用を受ける余地はないにもかかわらず,約定利率による残存債務額を18条書面に記載していた。これは虚偽の記載をした18条書面を交付したものであり(貸金業法48条4号),刑罰法規に触れる違法なものである。②被告の原告に対する請求は,利息制限法所定利率に違反する約定利率によるものであり,被告は原告に,法的に有効に存在しない債務額を提示して元利金の請求をしてきた。これはいわゆる架空請求詐欺に該当する。
(被告の主張)
争う
(裁判所の判断)
民法704条後段の責任は,悪意受益者の返還義務を,利得の返還という枠を越えて加重したものであり,不法行為責任ではなく,同条後段に基づく特別の責任と解すべきであろう。したがって,本件不当利得返還請求権を実現するため,訴訟提起を余儀なくされ,これを弁護士である原告代理人に委任した場合には,その弁護士費用は,相当と認められる額の範囲内のものである限り,損害賠償の対象となる。本件にあっては,着手金相当額に対応する1万0500円をそれと認めるのが相当である。
3 取引履歴不開示による損害賠償請求権について
開示義務の存否
(原告の主張)
貸金業者は,債務者又は代理人弁護士から取引履歴の開示を求められた場合,その開示請求が濫用に亘ると認められるなど特段の事情のない限り,貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として,信義則上,業務帳簿等に基づいて取引履歴を開示する義務があり,この義務に違反して取引履歴の開示を拒否したときは,その行為は違法性を有し,不法行為を構成する(最高裁第三小法廷平成17年7月19日判決,民集59巻6号1783頁)。
(被告の主張)
信義則に基づく取引履歴の開示義務の範囲は,保存している業務帳簿に限られる。被告は,訴訟前から順次保存している全ての取引履歴を開示した。被告と旧レイクとの間の取引経過の一部について開示が遅れたに過ぎない。
(裁判所の判断)
証拠及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認めらる。
平成18年7月14日,原告は,原告代理人に多重債務整理を委任し,受任した同代理人は,同日,被告に対し,受任通知とともに,当初からの取引履歴の開示を請求した(甲1)。翌8月4日,被告は,平成5年10月5日から同18年6月27日までの取引履歴を開示した(甲2,3)。原告代理人は,被告に対し,平成18年8月4日,同月21日,翌9月2日の3回にわたり,当初からの取引履歴を開示するよう重ねて請求をしたが,被告はこれを開示しなかった(甲4~6)。そして,開示された取引履歴は,原告の主張する別紙計算書1記載のとおりの内容であった。
以上によれば,被告は,原告の開示要求を受け,直ちに平成5年10月5日から同18年6月27日までの取引履歴を開示したものの,平成5年10月5日以前の部分を開示していないこととなる。
ところで,債務者が取引履歴の開示を求めるのは,弁済計画を立てたり,過払金の返還請求をするためであろうが,原告に開示された平成5年10月5日から同18年6月27日までの取引履歴によれば,第一取引において発生した過払金返還請求権が時効消滅したことは明らかであり,原告においても,さらに平成5年10月5日以前の取引履歴の開示を求め,その過払金額を探索,確定する必要性は毫も存在しない。そのような取引履歴を重ねて請求することは,何ら益のない行為であるばかりではなく,その行使が濫用に亘ると認められるおそれすらあるのではなかろうか。平成5年10月5日以前の取引履歴を開示しなかったからといって,被告に損害賠償責任は生じない。原告の請求は失当である。
第4総括
1 不当利得返還請求権について
原被告間の取引は,第一取引と第二取引に区分され,この両者は全く異なる契約関係である。第一取引によって過払金が発生したとしても,その返還請求権は10年の経過により時効消滅する。したがって,第一取引における過払金額を確定する必要はなく,原告の過払金額の算出方法につき判断する必要はない。
第二取引につきみなし弁済の適用は認められず,別紙計算書2のとおり12万2067円の過払金が発生する。この過払金につき,被告は悪意の受益者であり,過払金発生のときより5パーセントの法定利息を付すべき義務を負うこととなる。そうすると,平成18年6月26日までの法定利息は別紙計算書2記載のとおり949円となる。
2 民法704条後段による損害賠償請求権について
同条による損害賠償として1万0500円を認めるのが相当である。704条の解釈として,悪意の受益者は,同条の損害につき,損害発生時からの遅延損害金の支払義務を負うと解すべきであろう。したがって,損害発生時より後であることが明らかな本訴提起日である平成18年9月12日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員請求を認容する。
3 取引履歴不開示による損害賠償請求権について
本件において,平成5年10月5日以前の取引履歴開示の必要性は認められない。被告は,同日以前の取引履歴を消去したと主張するが,その消去の必要性,合理性,ひいては消去の事実の存否につき判断する必要はない。
4 以上の次第で,主文のとおり判決する。
(裁判官 下村資樹)