高岡簡易裁判所 平成2年(ハ)25号 判決 1990年11月19日
主文
一 本訴について
平成元年一一月一五日午後一一時三〇分頃射水郡大島町八塚三六三番地先路上で発生した原告運転の普通乗用自動車(富五六め九五八八号)と被告運転の普通乗用自動車(富山三三に二五三七号)との衝突事故に基づく原告の被告に対する損害賠償債務は金一五万四、〇〇〇円を超えて存在しないことを確認する。
原告のその余の請求を棄却する。
二 反訴について、
反訴被告は反訴原告に対し、金一五万四、〇〇〇円及びこれに対する平成元年一一月一五日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
反訴原告のその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、本訴、反訴を通じこれを二分し、それぞれを各自の負担とする。
四 この判決は第二項について、仮に執行することができる。
事実
(イ) 本訴
一 請求の趣旨
1 平成元年一一月一五日午後一一時三〇分頃射水郡大島町八塚三六三番地先路上で発生した原告運転の普通乗用自動車(富五六め九五八八号)と被告運転の普通乗用自動車(富山三三に二五三七号)との衝突事故につき、原告は被告に対し損害賠償義務のないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求原因の要旨
1 平成元年一一月一五日午後一一時三〇分頃射水郡大島町八塚三六三番地先路上で原告運転の普通乗用自動車(富五六め九五八八号)の左側面と被告運転の普通乗用自動車の右側面とが衝突した。
2 右事故により被告運転の右車両は二八〇、四〇〇円の修理代を要する破損をしたとして、被告より原告へ右修理代の請求がなされている。
3 しかしながら右事故は被告の過失により生じたものであり、原告には被告の車の損害を賠償する義務がないので、これの確認を求めたく、本訴におよんだ次第である。
(ロ) 反訴
一 請求の趣旨
1 反訴被告(原告)は反訴原告(被告)に対し、金二八万円及びこれに対する平成元年一一月一五日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は反訴被告(原告)の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求原因の要旨
1 事故の発生
(一) 日時 平成元年一一月一五日午後一一時三〇分ころ
(二) 場所 射水郡大島町八塚三六三番地先道路上
(三) 加害車両 普通乗用自動車(富五六め九五八八)
(四) 右運転車 反訴被告
(五) 被害車両 普通乗用自動車(富山三三に二五三七)
(六) 右運転者 反訴原告
(七) 事故態様 反訴原告が被害車両を運転して本件道路を直進中、先行の右折のため停止していた車両の直後に停止していた加害車両が、その停止車両の左方から追い越そうとして本件道路左側に進路変更しようとした際、被害車両の右角部分と加害車両の左側面が衝突した。
2 責任原因
本件事故は、反訴被告が加害車両を運転して本件道路の左側に出ようとした際、後方の確認を怠りまた方向指示機も出さず、漫然と本件道路左側に出た過失により発生したものである。
3 損害
本件事故により被害車両は破損し、その修理に二八万円を要したので、同額の損害を被つた。
4 よつて、反訴原告は反訴被告に対し金二八万円及びこれに対する本件事故の日である平成元年一一月一五日から支払いずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
理由
一 本訴請求原因事実3を除き、その余の事実については、当事者間に争いがない。
反訴請求原因事実1、(三)(五)(七)、2、4を除きその余の事実については当事者間に争いがない。
二 本件は、要するに本訴、反訴を通じて、本件事故の態様、責任原因についての争いであるから、以下この点について考察する。
なお、以下、原告および反訴被告を原告と、被告および反訴原告を被告と、呼称する。
本件(本訴、反訴)証拠および弁論の全趣旨を総合するとつぎの事実が認められる。
(一) 本件事故現場は、市街地にあつて、本件道路の両側に歩道と車線外側線がある。本件道路の最高速度は時速四〇キロメートルに指定されていて、路面は平坦でアスフアルト舗装となつている。
本件現場はほぼ直線であつて、左右の見通し関係は良好である。
(二) 原告は自車を富山県射水郡大島町八塚三六三番地先路上を運転中、前車が突然一時停止したので、これを追い越すべく、右折の合図を出したところ、前車が右折の合図をしたので、原告は先に出していた右折の合図を取り消し、自車の進行する道路の左側の車道外側線から前車を追い越すべく、左折の合図も出さず、かつ左後方の安全を確認することもなく、自車のハンドルを左に切り、斜め方向に、時速一〇キロメートル位で進行した瞬間、自車の左後方から進行して来た被告車の前部右端部分が自車左側面中央部付近に接触したものである。
他方、被告は自車を運転中、先行車が二台だと思つて、自車を運転していたが、一番先の先行車が、やや右斜めの形で停車して右折の合図をしていることを認め、被告は車道外側線を運転して、先行車を追い越すべく決意をし、ハンドルを左に切り、車道外側線の白実線を自車の左右の車輪にはさんだ形で、時速四〇ないし五〇キロメートル位で右前方の先行車の動静に対する注意が不十分の儘進行し、前車を追い越した頃、右前方より斜め方向に自車の進路上に出て来る原告車を認め、被告はただちに急ブレーキをかけ、同時にハンドルを左に切つたが間に合わず、自車前部右端付近が原告車左側面の中央部に接触した。被告が、右原告車を認めたとき、はじめて、被告の前にいた先行車が三台であることが判つた。
以上の事実が認められる。
そこで前記認定事実によると、原告は前車の左側方を通過して追い越しをかけ、その車両の前方に出ようと走行中に本件事故になつたものであり、他方、被告も先行車の左側方の車道外側線の白実線を自車の左右の車輪にはさんだ儘追越し運転中に本件事故となつたものである。
追越しは、道交法上、前車の右側方を通過して行うことになつている。
原告、被告の本件追越し方法は、道交法を無視したものであつて、これが、本件事故発生の誘因をなしていると認められる。
そこで過失割合について検討するに、原告は前車の追越しをするに際し、左折の合図をしなかつたこと、左後方に対する安全確認義務を怠つたこと、他方、被告は、前にいる先行車を追い越すに際し、先行車の動静に対する注視が不十分の儘、先行車を追越し運転中、本件事故になつたこと、以上の過失が認められる。
そして、この両者の過失を比較し、その他、諸般の事情を斟酌して、過失割合は、原告五五パーセント、被告四五パーセントとするのが相当である。
三 そうだとすれば、本訴については、原告の請求は主文第一項の限度において、反訴については、反訴原告の請求は主文第二項の限度において、それぞれ理由がある。
(裁判官 村田義弘)