高松地方裁判所 平成22年(ワ)487号 判決 2011年3月24日
原告
(旧商号カトキチ高松開発株式会社)
更生会社株式会社チェリーゴルフ屋島管財人 X1
同
X2
同訴訟代理人弁護士
西村國彦
同
泊昌之
同
松村昌人
同
米田圭吾
被告
株式会社百十四銀行
同代表者代表取締役
A
同訴訟代理人弁護士
河村正和
同
柳瀬治夫
同
徳田陽一
同
植松智洋
主文
1 被告は、原告ら各自に対し、680万円及びこれに対する平成22年7月13日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、被告の負担とする。
3 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1請求
主文と同旨(請求の趣旨記載の本訴状送達の日の翌日は、平成22年7月13日である。また、本件訴訟係属後、原告管財人X2が追加選任されたため、原告は2名となり、固有必要的共同訴訟であることから、原告ら各自が、被告に対し全額の金銭給付を求めるものと改められた。)
第2事案の概要等
1 本件は、香川県でゴルフ場を経営する株式会社(旧商号「カトキチ高松開発株式会社」、現商号「株式会社チェリーゴルフ屋島」で、以下単に「更生会社」という。)が会社更生手続開始決定を受け、選任された管財人らが、上記開始決定前に保有する更生会社運営のゴルフ場のゴルフ会員権に基づく預託金返還請求権を預金債権と相殺する旨の意思表示を行った被告銀行に対し、相殺適状が生じておらず無効であるなどと主張し、被告銀行に対し、更生会社の預金680万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日(平成22年7月13日)から商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
2 前提事実
当事者間で争いのない事実、証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実は、以下のとおりである(証拠により認定した事実は、末尾に証拠番号を記載した。)。
(1) 当事者等
ア 更生会社
更生会社は、昭和47年に設立されたゴルフ場の造成及びゴルフ場の経営を目的とする株式会社であり、本店所在地である高松市において、屋島カントリークラブを運営していた。
屋島カントリークラブには会則が存し、少なくとも、平成9年6月28日、平成16年11月1日にそれぞれ改正・改訂を行っている(以下「平成9年改正会則」、「平成16年改訂会則」という。)。平成16年改訂会則は、退会手続を明記し、同会則運営細則は、退会時に提出を要する具体的書類及び手続を定めている(同運営細則7条、甲4)。
イ 被告銀行
(ア) 被告銀行は、大正13年に設立された高松市に本店を置く地方銀行であり、更生会社の法人ゴルフ会員権を、昭和50年8月20日に1口(会員番号<省略>。乙1の1)、平成11年7月8日に2口(同番号<省略>。乙2、3)を購入し保有していた(以下まとめて「本件ゴルフ会員契約」、「本件ゴルフ会員権」という。)。
なお、本件ゴルフ会員権は、いずれも預託金の返還を求めるにあたって必要な据置期間を経過している。
(イ) 更生会社は、平成22年3月8日当時、被告銀行本店において、680万円を上回る預金払戻請求債権元本(普通預金口座番号<省略>)を有していた(甲1)。
(2) 更生会社の更生手続開始決定の申立て
ア 更生会社は、平成22年2月23日、東京地方裁判所において、会社更生手続開始決定の申立てを行い、同裁判所は、同日、保全管理命令を発して本件原告である管財人X1を保全管理人に選任し(甲1)、平成22年3月31日,会社更生手続開始決定を行い、本件原告管財人X1が、管財人に選任された(同庁平成22年(ミ)第7号。以下「保全管理命令」、「更生開始決定」、「保全管理人X1」及び「原告管財人X1」という。)。また、本件訴訟係属後、原告管財人X2も追加選任された。
イ 更生開始決定に伴う更生債権届出期間は、平成22年5月19日までとされた。
(3) 被告銀行の更生開始決定前の相殺の意思表示
ア 被告銀行は、更生開始決定に先立ち平成22年3月8日付け相殺通知書により、保全管理人X1に対し、被告銀行の更生会社に対する本件預託金返還請求権680万円(以下「本件預託金返還請求権」という。)を自働債権、被告銀行の更生会社に対する前記(1)イ(イ)記載の預金払戻債務を受働債権として、対当額にて相殺する旨の意思表示を行った(甲1。以下「本件相殺」という。)。
イ なお、被告銀行は、本件相殺に先立ってはもとより、今日まで、平成16年改訂会則及び運営細則7条1項(甲4)に基づく本件ゴルフ会員権の退会手続を行っていない。
(4) 被告銀行の更生開始決定後の更生債権0円の届出
ア 被告銀行は、平成22年4月7日付けをもって、更生会社に対し、更生債権の届出を行った(乙6)。同書面においては、備考欄に「680万円の預託金返還請求権を有していたが、平成22年3月8日付け相殺通知書により相殺済み。」と記載の上、預託金債権額が「0円」とされていた。
イ 原告管財人X1は、被告銀行の上記届出債権に対し、平成22年7月29日付けで認める旨の認否を行った(乙7)。
(5) 原告管財人X1は、更生債権届出期間が満了した後、平成22年6月3日到達の内容証明郵便にて、被告銀行の本件相殺は相殺適状を欠く無効なものであるとして、本件預金債権680万円の返還を求め(甲2の1、2)、被告銀行がこれに応じなかったことから(甲3)、平成22年7月6日、本件訴えを提起した。
第3争点
1 本件相殺時において、自働債権である本件預託金返済請求権が発生し弁済期が到来していたか。
(1) 屋島カントリークラブの退会手続を定めた平成16年改訂会則は、被告銀行に適用されるか。
(2) 本件預託金返還請求権の行使には、更生会社に対する本件ゴルフ会員契約の退会を要するか。
(3) 本件相殺の意思表示は、本件ゴルフ会員契約の退会の意思表示を含むか。
(4) 被告銀行が、平成16年改訂会則に基づく運営細則7条の手続を行っていないことが、本件相殺の効力に影響するか。
2 仮に、本件相殺が無効であるとして、原告管財人X1は、本件相殺が有効であることを前提として更生債権届出を提出した被告銀行に対し、届出期間内に本件相殺が無効である旨告知しないことは、信義則に反するか。
第4争点に対する当事者の主張
【原告ら】
1 争点1
(1) 平成16年改訂会則及び運営細則における手続の明文化は、退会申請に際して必要書類の提出を求めるものであって、従前の取扱いを明文化したものに過ぎず、会員の基本的権利に重大な変更を及ぼすものではないから、各会員の個別承諾を要することなく、更生会社の理事会の決議により定めることができるものである。
そして、更生会社は、被告銀行に対しても、平成16年改訂会則を含む規約集を郵送するなどして告知しており、平成16年改訂会則は、被告銀行に対しても適用される。
(2) 一般にゴルフ会員契約という継続的契約関係に包含される預託金返還請求権は、退会等の会員契約の終了によって発生もしくは履行期が到来する停止条件付もしくは不確定期限付債権であり、更生会社の平成16年改訂会則によれば、退会して会員契約を終了させて初めて発生するものであるところ(同会則9条、甲4)、被告銀行は、何ら退会の意思表示を行うことなくいきなり本件相殺に及んだのであって、預託金返還請求権は発生していない(同趣旨の規定は、平成9年改正会則にも存する。同会則(乙4)8条)。
本件相殺は、更生開始決定前に保全管理人X1に対しなされたものであるが、更生会社において更生債権者の行う相殺が、民法における相殺と比べて、相殺適状の要件や相殺の意思表示の時期を厳格に規定していることにかんがみると(会社更生法48条1項)、本件相殺の効力の判断も、厳格になされるべきである。
(3) なお、被告銀行は、本件相殺の意思表示が退会の意思表示を含むと主張するが、被告銀行が本件相殺の意思表示を行った相殺通知書(甲1)には、退会する旨の記載は見当たらない。
(4) 仮に本件相殺の意思表示が退会の意思表示を含むとしても、平成16年改訂会則に基づく運営細則7条1項によれば、退会手続のために必要な書類(保証金預り証、承諾書、印鑑証明書、退会届等)を要するところ、被告銀行は、一切提出しておらず、本件預託金返還請求権は、なお発生していない。
(5) また、本件預託金返還請求権が発生したものと認めうるとしても、平成16年改訂会則に基づく運営細則7条4項によれば、「返還金の支払い期日は、別に定める。」とあり、更生会社においては、毎年2月にのみ預託金返還をする扱いであったことから、被告銀行が、平成22年3月8日付けで本件相殺の意思表示を行った時点では、本件預託金返還請求権は、弁済期が到来していない。
2 争点2
本件相殺の有効性に対する原告管財人らの認識が異なっていたとしても、保全管理人X1及び原告管財人X1が、その旨を被告銀行に告知すべき法的義務は存しない。被告銀行は、更生債権届出において、仮に本件相殺が無効であった場合に備えた予備的債権届出もできたはずである。
【被告】
1 争点1
(1) 本件ゴルフ会員契約に基づく預託金返還請求権の行使においては、退会手続を行うことは必ずしも必要ではない。被告銀行は、平成16年改訂会則施行前に本件ゴルフ会員権を2度にわたり合計3口購入しており、2度目の購入である平成11年7月8日(乙2、3)に適用のあった平成9年改正会則では、退会に関する規定として、「預託金の返還をうけた者は、自動的に会員の資格を失うものとする。」(同会則9条)とあるにとどまり(乙4)、預託金返還請求権行使のために退会の意思表示を必要としていない。同趣旨の規定は、平成16年改訂会則10条にも存する。
(2) 被告銀行は、平成16年改訂会則を知らされておらず、承諾していない。平成16年改訂会則及び運営細則に定める退会手続は、会員資格の取得・喪失という権利義務に関わり、しかも、これまで非要式行為だったものを要式行為として会員の義務を重くするものだから、会員の個別承諾を要し、承諾をしていない会員に対しては、改訂の効力を主張できない。
(3) そして、被告銀行の本件ゴルフ会員権は、前記のとおり、いずれも預託後10年の据置期間を経過しており(ちなみに被告銀行が昭和50年に購入したゴルフ会員権については、更生会社が、平成8年に和議認可決定を受けたことにより、平成15年3月31日まで延長された。乙1の2)、いつでも、預託金返還請求権を行使できるのであって、本件預託金返還請求権は、本件相殺時に発生し、かつ、弁済期が到来したものである。
(4) 仮に被告銀行に平成16年改訂会則が適用され、退会の意思表示が必要であるとしても、預託金を納めている事実が会員たる証であろうから、本件相殺の意思表示は退会の意思表示を含むというべきであり、そうである以上、預託金返還請求権は発生しており、弁済期に関する更生会社の内部的な手続規定の履行の有無にかかわらず、本件相殺の意思表示が保全管理人X1に到達した時点をもって、弁済期も到来したものと解すべきである。
2 争点2
退会手続という更生会社内部の手続未了をもって、本件相殺の効力が否定されるのであれば、原告管財人らは、本件相殺が有効であるとして更生債権届出を行った被告銀行に対し、その旨連絡すべきであり、それを行うことなく、本件相殺は無効であるとして本件訴訟を提起することは、信義則に反する。
第5当裁判所の判断
1 前提事実に加え、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) 平成9年改正会則下の退会手続
更生会社の平成9年改正会則では、預託金の返還及び退会に関する規定は、8条において、「預託金は払込完了後10ヶ年据置し、会員が退会する場合は請求により返還する。」、9条において「預託金の返還をうけた者は、自動的に会員の資格を失うものとする。」と定めるのみで、その他の規定が存しなかったが(乙4、弁論の全趣旨)、更生会社は、遅くとも平成15年3月ころには、退会する会員に対しては、退会届に保証金預り証、印鑑証明書、携帯用会員証その他を添付して提出するように求めており、退会を求める会員は、必要な書類を提出していた(甲12)。
(2) 平成16年改訂会則・運営細則(甲4ないし7)
ア 更生会社は、理事会の承認のもと平成16年改訂会則等を定めたが、各会員の個別承諾を得ておらず、被告銀行も個別承諾を行っていない。
イ 平成16年改訂会則は、従前行ってきた前記退会の際の取扱いを一部明文化したもので、以下のとおり定められている。
9条 預託金は払込完了後10ヶ年据置し、会員が退会する場合は会社所定の請求手続きにより返還を受けることができる。但し、天災、地変、その他の不可抗力の事態が発生した場合、またはクラブの運営上もしくは会社の経営上や已むを得ない事由が生じた場合には、会社取締役会の決議により据置期間を延長することができる。預託金には利子及び配当はつけない。
10条 預託金の返還を受けた者は、返還と同時に会員の資格を失うものとする。但し、既納の年会費、その他の納入金は返還しない。また未納金のある場合は預託金と相殺する。
ウ 平成16年改訂会則に基づく運営細則によれば、更生会社は、退会手続について、以下の定めを設け、退会届出用紙自体はもとより(甲5)、退会手続のための説明文書を備え置いていた(甲6、7、16)。
7条 会員が退会し、会員資格保証金(預託金)の返還を受けようとする場合は、下記の必要書類を添えてクラブに提出し、取締役会の承認を得なければならない。
(必要書類)
イ 保証金預り証(裏書・実印) 1通
ロ 承諾書(実印) 1通
ハ 印鑑証明書(3ヶ月以内) 1通
ニ 退会届(2部複写、実印) 1部
ホ ネームプレート(3点セット) 1式
ヘ 会員証 1枚
ト 入会承認証 1枚
4項 返還金の支払い期日は、別に定める。
5項 会員の資格は、預託金の返還を受けた時に失うものとする。
(3)ア 更生会社は、平成16年改訂会則及び運営細則を含む「営業ご案内」文書に、平成16年12月付け案内文書(甲9)、平成17年日程表及び年会費請求書を添え、更生会社において管理する会員データに基づき全会員に送付した(甲10の1ないし3、同13、14の1、2、弁論の全趣旨)。また、更生会社は、直近の会則等を、ホームページにおいても公開していた(甲11、弁論の全趣旨)。
イ 被告銀行は、法人無記名会員として、その後も、屋島カントリークラブを継続的に利用している(甲17、乙1の1、同2、3)。
2 争点1について
(1) 以上によれば、平成16年改訂会則は、更生会社の理事会の承認決議により決定されたものであって会員の個別承諾に基づくものではなく、被告銀行は後日送付を受けたにとどまるが、①更生会社は、平成16年改訂会則施行以前から、会員が退会の手続を行う際には、甲第12号証の退会届出用紙を用意して添付書類の提出を求めており、平成16年改訂会則及び運営細則は、従前からの運用内容を含めて明文化したものであること、②前記1(2)ウ記載の必要書類を添付して退会届を提出すること自体は、既に紛失するなどして提出しようがないものを除けば、会員にとって格別負担になるものとも解されず、会員の権利義務を不当に制約する内容とはいえないことにかんがみると、この部分に関する平成16年改訂会則及び運営細則は、会員の個別承諾がなくても、被告銀行にも適用されるものと解するのが相当である(もっとも、この理は、平成16年改訂会則に基づく運営細則7条が、退会して預託金の返還を受けようとする場合には、必要書類提出の上、取締役会の承認を得なければならないとする、取締役会の承認部分まで、有効とする趣旨ではない。)。
(2) そして、預託金返還請求権は、ゴルフ会員権という継続的契約関係に包含されるもので、据置期間経過後も、会員が、施設利用権を行使している間は潜在的であって、契約関係の終了によって初めて顕在化する(履行期が到来する)請求権といえるから、本件における預託金返還請求権の行使においては、会員の意思を明示的に確認するためにも退会の意思表示が必要である。
ただし、被告銀行が指摘するとおり、本件相殺の意思表示は、代表者名による内容証明郵便で、会員たる被告銀行が、更生会社に対する預託金返還請求権を自働債権として相殺する旨の意思表示を行うものであるから、本件ゴルフ会員契約を退会により終了させる意思を前提とするものと解されるが、相殺の自働債権に供するといったように、預託金返還請求権を具体的に行使するには、少なくとも、平成16年改訂会則及び運営細則に従い、会員である被告銀行側で、退会届と共に準備が容易な必要書類の提出等を行って初めて退会の意思表示を明確にしたものといえると解されるところ、被告銀行は、これら必要書類の提出といった手続を本件相殺の意思表示前はもとより、その後、本件口頭弁論終結に至るまで何ら行っていない。
(3) そもそも、会社更生法48条1項が、破産法67条による相殺と異なり、更生債権届出期間の満了前に相殺適状であった場合で、かつ、当該更生債権届出期間内に限り更生手続外の相殺を認めているのは、会社更生法が、会社財産の清算ではなく、債務を合理的に整理して計画に則って株式会社を再建する手続であり、会社再建に必要な財産の散逸を防止し保全確保すべき目的も有するからであることにかんがみると、本件のような更生開始決定前の保全管理命令下に保全管理人X1に対しなされた相殺の意思表示であっても、更生開始決定後の相殺に準じて、厳格に解釈されてしかるべきである。
そうすると、本件相殺の意思表示は、当該意思表示を受けた保全管理人X1の権限から推察すれば(会社更生法32条)、意思表示の相手方としては適切なものと解されるが、前記のとおり、形式的不備とみうる側面があるとはいえ、本件相殺前に退会手続に必要な書類等の提出が一切なされていないことはもとより、更生債権届出期間終了までに追完されたわけでもないことにかんがみると、当該不備のままで本件預託金返還請求権の弁済期が到来したものと評価することはできない。
したがって、相殺適状の要件を欠くこととなり、本件相殺の効力を認めることはできない。
3 争点2について
このように解すれば、前記のとおり、更生債権届出に際して、預託金返還債権額を0円と届け出た被告銀行は、一方的に不利益を受けるやに見え、これ故、被告銀行は、保全管理人X1もくしは原告管財人X1に対し、本件相殺が無効である旨主張するのであれば、更生債権届出期間内に連絡してしかるべきであり、それを行わず、届出期間満了後に本件相殺を無効とする通知書(甲2の1、2)を送付するのは信義則に反する旨主張するところである。
しかしながら、原告管財人らが指摘するように、いかに、更生会社に対する保全管理命令が発令され、あわただしい中であり、被告銀行が預託金返還債権の回収を速やかに行いたいという思いがあったにせよ、平成16年改訂会則及び運営細則に定める退会手続を全く行うことなく相殺の意思表示を行う以上は、万一相殺の効力が否定された場合に備え、予備的債権届出ができるのであって、それを行わなかった以上は、被告銀行に不利益があることもやむを得ず(もっとも、被告銀行が、正式の退会手続を行っていないとして本件相殺の効力を否定すると、被告銀行が、本件預託金返還請求権を更生債権として届け出なかっただけで、屋島カントリークラブのゴルフ会員契約自体は存続しているものと解しうる余地もある。)、保全管理人X1もしくは原告管財人X1が、更生債権届出期間内にその旨連絡しなかったからといって、信義則に反するとまではいえない。
4 よって、原告らの請求は理由があるので認めることとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 江尻禎)