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高松地方裁判所 平成6年(ワ)29号 判決 1997年6月30日

原告

宗教法人金剛禅総本山少林寺

右代表者代表役員

宗由貴

原告

財団法人少林寺拳法連盟

右代表者理事

宗由貴

右原告ら訴訟代理人弁護士

小野昌延

南逸郎

藤本久俊

斎藤方秀

木村修治

被告

福田正治

外一名

右被告ら訴訟代理人弁護士

山中真理子

主文

一  被告らは、原告らに対し、別紙謝罪広告目録記載の内容の謝罪広告を同目録記載の要領で同目録記載の機関紙及び新聞に各一回掲載せよ。

二  被告らは、別紙図書目録記載の書籍を販売または頒布してはならない。

三  被告らは、原告宗教法人金剛禅総本山少林寺に対し、各自五〇万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  被告らは、原告財団法人少林寺拳法連盟に対し、各自五〇万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

五  原告らのその余の請求を棄却する。

六  訴訟費用はこれを二分し、その一を被告らの、その余を原告らの各負担とする。

七  この判決は、第二項ないし第四項及び第六項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  主文第一項及び第二項同旨。

二  被告らは、原告宗教法人金剛禅総本山少林寺に対し、各自一〇〇〇万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告らは、原告財団法人少林寺拳法連盟に対し、各自一〇〇〇万円及びこれに対する平成五年三月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、原告らが、原告らの元幹部である被告らによって、別紙一覧表のとおりの、原告ら代表者に対する誹謗中傷や原告ら内部の金銭的組織的腐敗等に関する記載のある別紙図書目録記載の書籍(以下「本件書籍」という。)を出版、頒布されたことにより、名誉を損なわれ、人格権を侵害されたとして、被告らに対し、人格権に基づき本件書籍の販売または頒布の差し止めを求めるとともに、共同不法行為に基づく名誉回復措置として謝罪広告の掲載並びに各原告につき各自一〇〇〇万円の損害賠償金(慰謝料)及びこれに対する右不法行為の後である平成五年三月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実等)

1  当事者

(一) 原告宗教法人金剛禅総本山少林寺(以下「原告少林寺」という。)は、達磨大師を本尊として禅門の教義を広め、儀式、行事を行い、少林寺拳法を行功して門信徒を教化育成するなどの業務を行うことを目的とする宗教法人である。原告少林寺は、肩書地に本部事務所(通称「総本山」)を置くほか、全国に支部道院(通称「道院」)を置き、代表者(通称「管長」)の下、管長、責任役員及び全国の都道府県少林寺拳法連盟(以下「県連」という。)の理事長等から構成される都道府県連盟・各連盟理事長会議(以下「理事長会議」という。)等の諮問機関により運営される。なお、道院は管長より任命される道院長により運営される(甲二、七五、七六)。

原告財団法人少林寺拳法連盟(以下「原告連盟」という。)は、少林寺拳法の普及、振興を図ること等を目的とする財団法人である。原告連盟は、同様の目的を持つ社団法人日本少林寺拳法連盟(以下「旧連盟」という。)が平成四年一月一七日付で解散したことに伴い、同月一〇日、右連盟から少林寺拳法普及に関する事業等を承継するために設立されたものであり、肩書地に本部事務所を置くほか、全国に高校、大学、自衛隊や実業団等における少林寺拳法クラブや原告少林寺の道院内に組織された一般道場等の支部を設置し、これらの支部や原告少林寺の県連及び支部を構成する個人(通称「門下生」「拳士」)はいずれも原告連盟の会員とされる。なお、支部は原告連盟の代表者(通称「会長」)から任命された支部長によって運営されるが、その業務は原告少林寺における道院長の業務とほぼ同じである(甲三ないし五、七七ないし八〇)。

(二) 被告福田正治(以下「被告福田」という。)は、原告少林寺の大牟田道院及び有明道院の各道院長並びに原告連盟の熊本県連理事長、有明支部及び大牟田支部の各支部長に任命されていた者であるが、平成四年六月五日付で原告少林寺により各道院長解任、各道院の解散、範士号剥奪等の処分を、原告連盟により熊本県連理事長解任、各支部長解任、各支部の解散等の処分を受け、同年一〇月二五日付で原告少林寺による破門処分及び原告連盟による除名処分を受けた(甲一〇ないし一三)。

被告植木新一(以下「被告植木」という。)は、原告少林寺の大分明野道院及び大分向陽道院の各道院長並びに原告連盟の大分県連理事長、大分明野支部及び大分向陽支部の各支部長に任命されていた者であるが、同年三月二二日付で原告少林寺による破門処分及び原告連盟による除名処分を受けた(甲一五、一六)。

中尾泰昭(以下「被告中尾」という。)は、原告少林寺の南福岡道院及び肥前鹿島道院の各道院長並びに原告連盟の南福岡支部及び肥前鹿島支部の各支部長に任命されていた者であるが、平成二年一〇月二六日付で原告少林寺による破門処分及び原告連盟による除名処分を受けた(甲八二の1、2)。

2  本件書籍の出版、頒布等

被告らは、中尾と共同して、平成五年三月、別紙一覧表記載のとおりの記述のある本件書籍(甲一)を、著者被告福田、発行者福田重信(架空名義である。)、発行所応文社として発行した。そして、被告らは、本件書籍、「元幹部が明かす知られざる実態」等の販売文句及び通信販売用に加入者名応文社。郵便振替口座番号等を記入した払込票等を印刷したチラシ並びに本件書籍の内容紹介の体裁をとった「三〇年近くだまされ続けた言葉」、「最高裁判所判決文(少林寺敗訴)」、「八億円の使途不明金」、「公共施設を巧みに利用している宗教法人」、「大学、高校、自衛隊が宗教活動の場」、「宗由貴へ破門状、絶縁状が続出」、「各地方裁判所から本部を告訴」、「公務員のアルバイト問題」、「その他、数々の腐敗をあばく」等との記載のあるパンフレット等を全国の少林寺拳法関係者、大学、高校、公民館等二〇〇名以上に郵送したほか、武道関係の一般月刊誌「空手道」にも本件書籍の広告を数回掲載するなどした。また、被告らは、かつて少林寺拳法の名称使用を巡って旧連盟と訴訟をしていた相手方当事者種川亀六(以下「種川」という。)側の幹部堀越伸司に対し本件書籍九〇冊を販売した。そのほか、被告らは、少林寺拳法学生連盟会長、文部省競技スポーツ課、少林寺拳法クラブのある高校や大学の学校長等の少林寺拳法関係者や、原告ら本部所在地である香川県の県議会議員、県庁職員及び多度津町議会議員ら地元関係者並びに毎日新聞社等マスコミ関係者に対し本件書籍を無償で大量に頒布するとともに、不特定多数の者に対して通信販売した(甲二四、三二、三三、三四の1ないし6、三五、三六、証人船曳浩、被告福田、同植木)。

二  争点

1  本件書籍の記載が原告らの名誉を毀損するか

2  本件摘示事実の公共性、目的の公益性

3  本件摘示事実が真実か、あるいは、被告らにおいて真実と信じたことが相当か

4  差し止め及び謝罪広告の必要性並びに原告らの損害額

三  争点についての当事者の主張

1  争点1(本件書籍の記載が原告らの名誉を毀損するか)

(原告らの主張)

本件書籍には別紙一覧表記載のとおりの記述があり、これらの記述は、要するに、原告ら代表者宗由貴は少林寺拳法の実技のできない「ニセ者」であり、原告らの少林寺拳法は創始者宗道臣や事務長をはじめとして嘘つきばかりであり、代表者の独裁下で非民主的運営がなされ、原告ら内部は巨額の使途不明金が発生するなど金銭的にも腐敗しており、拳士の身体や生命は危険にさらされ、次々に幹部が離反しているなどとするものであり、かかる記述のある本件書籍の出版、頒布により原告らは社会的信用、名誉を著しく毀損され、人格権を侵害された。

2  争点2(本件摘示事実の公共性、目的の公益性)

(被告らの主張)

(一) 原告らは、支部及び道院数約二八〇〇、登録会員数約一四〇万人、その組織及び活動は全国に及ぶとされる団体であり、このような団体に関する事実は、会員はもとより社会一般に対しても少なからぬ影響を与えるものであり、本件書籍に摘示された事実は「公共の利害に関する事実」にあたる。

(二) 被告らはじめ本件書籍出版の賛同者らは、長年にわたり原告らの道院長や支部長等を務めその組織及び活動に深く関与してきた者であるが、宗教団体である原告少林寺が原告連盟の名で公共施設を借用して各種行事を行いその収益を取得して多額の資金を集めながら収支決算を明らかにせず金銭処理が不明朗、不透明であることや、原告ら相互の関係が不明確であり、武道の修得のみを目的とする入門者が原告少林寺に入信したこととされていることに疑念をつのらせ、原告らが研修センター積立金名目で集金した金員(以下「研修センター積立金」という。)の使途が不明であるとの問題を契機に、原告らの組織、運営、特に財政問題についての疑問を世に問う目的で、原告らに対する寄託金返還訴訟の提起や本件書籍の出版に及んだものである。このように、本件書籍は、単なる私怨ではなく、原告らの実態を明らかにすることにより少林寺拳法という虚名と実像を世に問うという公共の利益を目的として出版されたものである。

(原告らの主張)

被告らの本件書籍出版の動機は、もっぱら公益目的にあるのではなく、原告らから重大な背信行為を理由に破門、除名等の処分を受けたことに対する報復にある。被告らは、右処分後、原告らの警告にもかかわらず少林寺拳法の名称を使用して活動したほか、研修センター積立金は拳士から道院長を通じて納付される教費(月謝)の一部で原告少林寺の固有財産であり道院長個人が拳士らから寄託を受けた金員ではないことを知りながら、あえて原告らに対し理由のない寄託金返還請求等の訴訟を各地で提起しており、右報復攻撃の一環として、故意に、少なくとも重大な過失により明確な資料もなしに事実無根の内容を記載した本件書籍を出版したものである。

3  争点3(本件摘示事実の真実性、あるいは、被告らにおいて真実と信じたことの相当性の有無)

(被告らの主張)

本件書籍記載事実は、次のとおり事実無根なものではなく、被告らはこれらを基礎づける資料(乙一の2、二、四、五の1ないし8、六ないし九、一一の1、2、一二、一三、一八の1、2、一九の1、二四)により被告らが真実と信じた事実を記載したものである。

(一) 原告少林寺は、その設立目的において「達磨の遺法正統少林寺拳法」と称しているが、原告連盟の設立目的は「宗道臣が創始した少林寺拳法」とされていて論理的に矛盾すること、宗道臣自身が被告福田に対し、戦後占領下で武道を行うための方便として宗教法人を設立した旨述べていること及び宗道臣の著書「秘伝少林寺拳法」には既に故人となっていたはずの中国少林寺の僧から伝法の印可を受けたとの虚偽の記載があることからすれば、原告少林寺の設立目的は詐称にほかならないというべきである。被告らはこのような事実を指して「ニセ管長」等と表現したものである。

(二) 宗教法人たる原告少林寺は戦後の占領下における武道教示のための隠れ蓑になり、他方、財団法人たる原告連盟は原告少林寺の公共施設の利用及び収益の隠れ蓑になっており、原告少林寺と原告連盟の前身たる旧連盟の役員はほぼ同一であるなど、実質的には一つの組織の表裏の関係にあり、宗教法人と財団法人を巧みに使い分けている。例えば、被告らが長年にわたり貢献してきた原告少林寺の下部組織である道院は憲法の政教分離の理念を逸脱して原告連盟の名の下で公共施設を恒常的に利用して収益を上げているほか、スポーツとしての少林寺拳法の取得を目的とする者を信教の自由にもかかわらず当然に原告少林寺に入門させて入門費や教費等(通称「礼録」)を徴収している。そのため原告らの収支は不明瞭で、原告らの収支決算報告がされたこともないのに民主的な手続をふまずに一方的に教費の値上げ通知がなされ、事後にも明確な説明がなされなかったことから被告らは原告らの経理に疑念を抱いた。さらに、研修センター積立金については、金融機関の残高証明によれば預金者名義が旧連盟や原告少林寺であるなど不統一であり、原告らにおいても右積立金を預り金と称したり、原告らの事務局が一旦はこれを返還する旨答弁しながら返還を否定するなどした。なお、原告少林寺は平成元年二月までに累積総額六億四〇〇〇万円の手形貸付を受けていたにもかかわらず、原告少林寺の責任役員は、前記教費値上げ通知後の理事長会議において借金はない旨答弁した。そこで、被告らは不審をつのらせ、別件寄託金返還訴訟を提起し、原告らの関係や経理への疑念、事務局長への不信等を内容とする本件書籍を出版したのである。

(三) また、本件書籍記載のその他の事実も、いずれも根拠に基づくもので真実である。

4  争点4(本件差し止め及び謝罪広告の必要性並びに原告らの損害額)

(原告らの主張)

本件書籍の出版及び頒布による原告らの社会的信用、名誉の侵害の程度は甚大であり、原告らは宗教ないし武道としての少林寺拳法の普及を目指す公益法人として、将来にわたり回復しがたい打撃を受けた。したがって、その名誉等の回復のためには被告らに謝罪広告をさせる必要があり、また、被告らは本件訴訟提起後も本件書籍の配布を継続しているから、このような状況に鑑みれば、本件書籍の販売または頒布を禁止する必要がある。また、本件における侵害の態様・程度や原告らと被告らとの関係等からすると、右損害を金銭で賠償するには各原告につき一〇〇〇万円をもってするのが相当である。

(被告らの主張)

被告らは、本件書籍を三〇〇〇冊印刷したにとどまり、店頭販売はしておらず、しかも、その大部分は関係者に贈呈されているものであって、また、本件書籍出版後に原告らの評価が低下して脱会者が増えたり入会者が減った事実はないから、本件書籍が原告らの名誉を毀損したとしても法人である原告らにそれぞれ一〇〇〇万円もの損害が発生したとはいえない。

四  証拠

証拠関係は本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

第三  争点に対する判断

一  争点1(本件書籍の記載が原告らの名誉を毀損するか。)について

1  証拠(甲一ないし六、二八、四〇、四一、七五ないし八〇、乙一一の1、一二、一九の1、2、証人鈴木義孝、弁論の全趣旨)によれば、本件書籍は、少林寺拳法の主体は宗教法人である原告少林寺であるが、同原告は表向きは財団法人である原告連盟の名を使用して活動しており、両者は一体の関係にあるとの前提で作成されたものであること、原告らはいずれも少林寺拳法の普及等を目的とする公益法人であること、少林寺拳法の最高指導者は原告連盟の会長を兼務する原告少林寺の管長であること、原告少林寺の道院は原告連盟の支部でもあり道院長と支部長は兼任されていること、原告少林寺への入門者は同時に原告連盟にも入会すること、拳士が納める入門費、教費及び昇格考査受験料等(以下「礼録」という。)は道院長兼支部長が原告らの窓口として一括して預かること、原告らの重要な諮問機関である理事長会議は原告少林寺の管長及び責任役員、原告連盟の理事並びに県連理事長等によって構成され原告らに関する審議等を行うこと、原告らの本部は一括して「本山」ないし「本部」と称されていることが認められるところ、これらの事実からすれば、原告らは法人格は異なるものの、一般人から見れば一つの少林寺拳法組織として評価される関係にあるものと解される。したがって、本件書籍における少林寺拳法の組織についての記述は、特段の事情がない限り、原告ら両名についての記述であるものとして、以下判断する。

2  本件書籍の別紙一覧表記載の各記述(以下、番号1の記述を「本件記述1」などといい、まとめて「本件各記述」という。)のうち、具体的な事実の摘示といえるのは、少林寺拳法創始者の言葉として伝えられてきたものが、実は講道館師範の言葉の盗用であったこと(本件記述4)、原告らが旧連盟と種川間の訴訟の結果につき、原告側の一部勝訴であるにもかかわらず、拳士に対しては全面勝訴等と虚偽の説明をしていたこと(本件記述5及び6)、研修センター積立金八億円が使途不明金となっており背任・横領の疑いがあるほか、以前にも道院長会費やSBS資金という数千万円単位の金が使途不明になったこと(本件記述8、9及び17)、幹部側から原告らへ絶縁状が送付されているのに対し原告らは体面状これを破門処分することとして意に沿わない者を排除していること(本件記述10ないし12)、宗教法人たる原告少林寺が公共施設を違法に利用して布教活動をしていること(本件記述13)、原告ら代表者は何ら修行をしておらず少林寺拳法が全くできないこと(本件記述14)であるが、これらの記述は読者をして原告らに対する印象を悪化させ、ひいては社会的評価を低下させて原告らの名誉を毀損するに足りるものであることが明らかである。

そして、本件各記述のうち、その余の部分は抽象的な内容にすぎないものの、原告らの代表者や事務長に対する誹謗中傷、原告らの内部が腐敗しきっているかのような文言、原告らの組織が利己的独善的な運営を行い門下生がその犠牲になっているかのような文言を含んでおり、これらが原告らの名誉を侵害することは明らかである。

3  なお、証拠(甲一、被告福田、同植木、弁論の全趣旨)によれば、被告らは、原告少林寺が少林寺拳法を詐称しているという趣旨で、二代目管長である原告ら代表者につき「ニセ管長」「ニセ者」と表示し(本件記述2)、さらに、「ニセ」との記載は「二世」が正しい旨の正誤表を添付することにより、右記載を強調したことが認められる。

また、証拠(甲一、一九の4、被告福田)によれば、被告らは、旧連盟と種川との間の「少林寺拳法道院」の名称の使用に関する訴訟における上告人旧連盟の上告事件(最高裁判所昭和五九年(オ)第七七〇号)の判決書と、上告人種川の上告事件(同裁判所同年(オ)第七七一号)の上告理由をいわば合体させて本件書籍に掲載した上で(本件記述6)、原告らは右裁判につき拳士らに対して少林寺側が勝訴した旨説明していたが、実は原告らの言い分は全面却下されており、原告らは都合のいいように虚偽の説明をしていた旨のコメント(本件記述5)をつけていることが認められる。これについて被告らは、本件記述6は被告らが法律知識に乏しいために誤って別件の判決と上告理由を合体させてしまったものであると弁解するが、証拠(甲三一、九〇、証人鈴木義孝、同船曳浩)によれば、右訴訟の結果が少林寺側の一部勝訴であることは原告ら発行の機関紙に掲載されたほか、理事長会議の席上でも原告ら訴訟代理人によって二回にわたり説明されたことが認められるから、これが単なる過失によるものとは解されず、また、必ずしも法律知識を有しない一般読者が本件記述5のコメントに続けて本件記述6を読めば、少林寺側がアンフェアーである旨の種川側の上告理由が認められた結果少林寺側が全面敗訴しているにもかかわらず、原告らは拳士に対しては全面勝訴である旨強弁していたかのような誤解を生ずるおそれがあり、甲第二三号証によれば、本件書籍の読者が現に右のような誤解をしたことが認められる。

4  したがって、本件書籍の記載は原告らの名誉を毀損する。

二  争点2(本件摘示事実の公共性、目的の公益性)及び3(本件摘示事実が真実か、あるいは、真実と誤信したことが相当か)について

ある者が公然と事実を摘示して人の名誉、信用を毀損した場合であっても、当該行為が公共の利害に関する事実にかかり、もっぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実がその主要な点において真実であることが証明されたときはその違法性が阻却され、また、右事実が真実であることが証明されなくても、行為者においてその事実が真実であると誤信し、誤信したことにつき相当の理由があるときには右行為について不法行為責任を負わないものと解すべきであるから、本件書籍の記載が右要件を充足するかどうかにつき、以下検討する。

1  摘示事実の公共性

本件書籍は、前記のとおり、原告らの代表者が不適格者であること、巨額の使途不明金問題があること、幹部指導者からの相次ぐ絶縁状に対し組織の体面を保つため破門処分を乱発して意に沿わない者を組織から排除していること、拳士に対しては組織に都合の良い虚偽の説明をして正当化を図っていること等を摘示したものであるところ、原告らが、支部及び道院数約二八〇〇、会員数約一四〇万人を擁する少林寺拳法の全国的団体であり、その支部は多数の学校、会社等にも浸透していることからすれば、原告らの組織運営及び活動に関するこのような事実は公共の利害に関する事実にあたるといえる。

2  事実摘示の目的の公益性

(一) 被告らの本件書籍発行前後の経緯につき、前記前提事実及び後掲各証拠によれば次の事実が認められる。

(1) 被告ら及び中尾は原告らの組織において道院長兼支部長(なお、被告らについては県連理事長も兼務していた。)として少林寺拳法の指導に当たっていた者であるが、中尾は平成二年一〇月二六日付で、被告植木は同年三月二二日付で、被告福田は平成四年一〇月二五日付でいずれも原告らから破門及び除名処分を受けた。

(2) 道院長ないし支部長は、少林寺拳法の指導者として原告らの規則等を遵守して道院を運営する義務があり(宗教法人金剛禅総本山少林寺規則施行細則〔以下「施行細則」という。〕八条、二八条、財団法人少林寺拳法連盟会員規程〔以下「会員規程」という。〕一二条)、新規入門者ないし新入会員を受け付けた場合はこれを原告ら本部への登録手続をし、入門者から礼録を徴収して本部に報告の上規定の額(通称「本部納入金」)を納めなければならず(施行細則一三条、二一条、二二条、二四条、会員規程三条、八条)、拳士の昇格には考査及び本部への登録手続等が必要とされ(施行細則二〇条、会員規程五八条)、その他施行細則及び会員規程等の内部規則に違反した場合には破門、除名等の処分がなされる(施行細則二八条、二九条、会員規程五九条、六〇条)(甲三七、七五ないし八〇)。

ア 被告福田は、長期にわたり道院の多数に及ぶ拳士の本部登録手続を怠り規定の本部納入金を原告らに納めず、独自の昇格試験を行い本部に無断で資格を付与するなど、原告らの施行細則及び会員規程に違反する行為を行っていたところ、これが発覚したため、右事実を認めて平成四年四月一八日付で始末書及び進退伺いを原告らに提出し、同年六月五日付で県連理事長、道院長及び支部長職解任、範士号剥奪、当分の間謹慎(少林寺拳法の一切の活動禁止)等の処分を受けた。しかし、被告福田は、同月三〇日付で勤務先を退職した後、謹慎期間中であるにもかかわらず、元道院長の植木国好外二名とともに原告らを相手取り、研修センター積立金についての寄託金返還請求訴訟(福岡地方裁判所平成四年(ワ)第一六七六号)を提起した。原告らは、同年七月二二日に右事件の訴状の送達を受けたことから、同年一〇月五日付で被告福田に対し文書でその意図を確認しようとしたが、被告福田から回答がなかったため、同月二五日付で被告福田を破門し、除名した(甲一〇ないし一四、二六、三〇、三八ないし四〇、九〇、証人船曳浩)。

イ 被告植木も、被告福田と同様に多数の拳士の本部登録手続を怠り、拳士から徴収した礼録等を原告らに納入しなかったばかりか、少なくとも平成元年一月ころから原告らに無断で故人である西郷隆秀名義で「国際拳法」の允可状(昇格認定状)を発行していた。原告らは右事実が発覚したことから、平成四年三月二二日付で被告植木を道院長及び支部長職から解任し、破門及び除名処分をおこなった(甲一五ないし一八、七三の1ないし7、八九、乙二四、証人船曳浩)。

ウ 中尾は、原告らの正規な資格ではない階級の合格証書を独自に発行したことや長期の手続不備等を理由に、平成二年一〇月二六日付で原告から破門・除名処分を受けた。(甲八二の1、2、九一、九二、証人船曳浩)。

(3) 本件書籍の出版は主に中尾の企画発案、資金提供によるものであり、発行者である「福田重信」及び発行所である「応文社」はいずれも被告らと中尾が相談の上で創出した架空名義であり、応文社の住所は被告福田が一時的に調達した借家であった(なお、福田重信が架空名義であることは、平成八年七月一五日の本件第八回口頭弁論期日にようやく明らかにされたことが当裁判所に顕著である。)。本件書籍は元幹部によるいわゆる内幕暴露本の体裁をとり、被告ら及び中尾の三名の対談部分以外の内容は主に被告福田が執筆したが、脱稿後、中尾の意向でことさら過激な表現に加筆修正がされた。本件書籍の通信販売用振込口座の開設、本件書籍やチラシの印刷及び一般雑誌への広告掲載等は主に植木が手配した。そして、約三〇〇〇冊印刷された本件書籍の大部分は、中尾及び被告らにより、少林寺拳法関係者や原告らの監督官庁、マスコミ関係者、原告らの本部所在地である香川県内の県ないし町議会議員や県職員ら地元関係者等に無償交付され、一部は通信販売等により販売された(甲一、二二、三二、三三、三四の1ないし6、三五、三六、八八、証人船曳浩、被告福田、同植木)

(4) 被告植木と中尾外一二名は、右各破門・除名処分後、平成五年三月の本件書籍発行までの間に、原告らを相手取り、被告福田と同様の寄託金返還訴訟(大分地方裁判所平成四年(ワ)第二八三号)を提起した。また、被告福田は、本件書籍発行後も原告少林寺に対して仮差押えを申し立て(高松地方裁判所丸亀支部平成五年(ヨ)第四一号)、平成五年一一月四日にはその本案として破門処分無効確認及び損害賠償請求訴訟(熊本地方裁判所平成五年(ワ)第一三七四号)を提起した。なお、右熊本訴訟の提訴については、被告福田が事前に新聞社に情報提供したため、翌朝、多数の新聞に掲載された(甲一四、四二、四六、四八ないし五七、九〇)。

(5) また、被告植木は、前記破門処分等に伴い少林寺拳法と同一もしくは類似する名称の使用を禁じられたにもかかわらず、平成四年四月一二日に大分県少林寺拳法連盟名義で日本少林寺拳法第二四回大分県大会を開催し、その際、もっぱら独自の見解に基づく原告らに対する批判意見やその根拠と考える資料及び同日付の被告植木ほか六名から原告ら代表者宛の破門状が添付されたパンフレットを発行した。さらに、被告植木は、同年五月ころ、原告らの後援者である元国会議員江崎真澄に対し、「喪があけましたので、攻撃を開始します、(中略)少林寺より政治献金を出来るだけ多く取る事が日本の為になります、わけのわからない連中に貢ぐ金です」などと記載した書面に、前記パンフレットと破門状、「最高裁判所判決文」と題した旧連盟の上告事件の判決書部分と種川の上告事件の上告理由を抜粋したものを同封して送付した。また、被告植木は、少林寺拳法指導者として親交のあった八代高専支部長古閑忠夫(以下「古閑」という。)に対し、同年一〇月二二日付で、原告らが被告植木を相手に提起した少林寺拳法の名称使用についての損害賠償請求訴訟(大分地方裁判所平成五年(ワ)第三八号)で提出された写真のコピーとともに、「大分県の大学は全部国際拳法の支配下にいれる。国会議員で原告らのために動く者はいない。」旨の文書を送付し、同月二四日ころには、古閑に対し、電話で「来年四月に実録少林寺拳法という題で自分と福岡の中尾と熊本の福田とで少林寺の内部告発の本を出す。マスコミには同意を得ている。出版に際して学校等で少林寺拳法という隠れ蓑で宗教活動を行っているとして文部省等から指導者に対し調査をするよう手はずしている。大分県内の大学は国際拳法になっているので高専もそうしたらどうか。」などと申し入れた。なお、右送付に使われた封筒には「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを(嘉納治五郎先生述)」と印刷されていた。なお、被告植木は、後日、古閑を相手取り右送付書類や電話の件をねつ造したとして損害賠償請求訴訟(大分地方裁判所平成七年(ワ)第七二八号)を、右送付書類中の写真の撮影に協力した支部長藤田修治(以下「藤田」という。)を相手取り損害賠償請求訴訟(大分地方裁判所平成六年(ワ)第二七〇号)を提起した。また、被告植木は、平成六年五月ころ、藤田が統括する大分府内支部が少林寺拳法教室を開催する予定であった公民館に対し、本件書籍を示して少林寺拳法に公民館を使用させないよう申し入れて「少林寺拳法教室」の名称を「楽しい護身術」に変更させ、また、前記「国際拳法」名の允可状等につき原告らに上申して被告植木の破門を招いた拳士の保護者安藤芳邦らに対しても損害賠償請求訴訟(大分裁判所平成七年(ワ)第六八一号)を提起した(甲一九の1ないし5、二〇の1、2、七一及び七二の各1、2、七三の1ないし6、八三、八五、八七、八九、乙一四の1、証人船曳浩)。

(6) 研修センター積立金については、そもそも、原告少林寺の初代管長宗道臣が昭和五五年に死去したことを契機に、道院等の地方組織の活性化を図る目的で、主要都市における少林寺拳法研修センターや道場の建設を支援するため、拳士から納入される礼録のうち原告少林寺に対する本部納入金月額二〇〇円を三〇〇円としてそのうち一〇〇円を「地方研修センター建設特別会計」として別途積み立てることとしたもので、昭和五六年二月二一日、原告少林寺の機関である責任役員会でその旨決定し、全国支部長道院長講演会で説明の上、同年四月六日付で各道院・支部長に対し同年五月度から右積立制度を実施する旨通達した。研修センター積立金の活用方法については、当初の計画では、原告少林寺が県連に対し研修センター建設に必要な整備資金を貸し付けることとし、被告植木が最初にその利用を申請したが、原告少林寺が宗教法人であることと研修センターの公共性の観点から、旧連盟が原告少林寺の委任を受けてその管理運用を担当し、研修センターを建設しようとする県連が建設資金を銀行から借り入れるにあたって(なお、県連は法人格なき社団であるから借入れは支部長等の個人名義でなされる。)右積立金を担保に供するとともに金利の一部の補助に使用することになった。被告植木はこれを承認し、昭和六一年三月三一日、旧連盟を保証人に研修センター積立金を担保として銀行から三五〇〇万円の融資を受けて大分県少林寺拳法研修センターを建設し、以後、同様にして七件の研修センターが建設された。しかし、平成元年になって研修センター積立金制度に対する見直し論がおこり、同年六月限り右積立ては打ち切りになったが、既存の積立金の活用方法については理事長会議においても県連への返還の是非につき意見がまとまらず、別途設けられた検討委員会で討議の結果、平成四年四月、旧連盟の解散に伴い右積立金(同年三月三一日現在、残高約七億五七〇〇万円)は原告少林寺が管理運用することとし、研修センター積立金制度を利用してなされた借入の担保提供が終了する平成一二年一二月末に抜本的見直しをすることとし、それまでは、新設の積立金事業推進・管理委員会がこれを管理することになった。このような研修センター積立金の処理に関する経緯は、原告らの諮問機関である理事長会議で適宜報告されており、被告らの前記各寄託金返還訴訟が提起された後の平成五年一一月二七日の理事長会議では、研修センター積立金は原告少林寺に帰属するものであって返還を前提とする寄託金ではないこと及び積立金の活用に関するこれまでの議論の経緯等が確認された。なお、被告植木が、破門・除名処分の後である平成四年三月三一日以降、研修センター積立金制度による前記銀行借入金の返済を怠ったので、保証人である原告少林寺(旧連盟の解散に伴い、原告少林寺が研修センター積立金に関する権利義務を承継した。)が代位弁済し、被告植木に対する求償請求訴訟を提起した(高松地方裁判所丸亀支部平成四年(ワ)第二〇一号)(甲二五ないし二八、三一、四一、六九、乙七、証人鈴木義孝、同船曳浩)。

(7) なお、旧連盟と種川との間の少林寺拳法の名称使用に関する訴訟は旧連盟の一部勝訴に終わり、その内容が原告らの機関紙及び理事長会議の席上で説明されたことは前記一3判示のとおりである。

以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

(二)  被告らは、本件書籍記載の各記述はいずれも事実であり、表現に若干の不適切な点があるとしても、被告らは原告らの問題を社会の批判にさらすという公益を図る目的で摘示したものである旨主張し、これに沿った供述をするが、前記のとおり本件書籍の出版に当たって被告らがことさらに過激な表現を選択していることや、原告ら代表者が不適格者であることを強調するような正誤表を用いたり、発行人に架空名義を用いるなど、後日の責任追求を免れるための対策を講じている形跡があることに照らし、その供述はにわかに措信しがたい。そして、他に被告らの右主張を認めるに足りる証拠はなく、むしろ、前記(一)で認定した事実に照らせば、被告らは、自らの規則違反が原因で原告らから破門・除名処分を受けたにもかかわらず、右処分により長年にわたり務めてきた少林寺拳法の指導者の地位を失ったことから原告らに対し強い反感を抱き、同様の立場にあった中尾の誘いを受けて、原告らに対して報復する目的で、前記のとおり原告らを誹謗中傷する内容の本件書籍を大量に出版、頒布したものというべきである。したがって、本件書籍の出版、頒布は、もっぱら公共の利益を目的とするものとはいえず、原告らに対する不法行為を構成するものといわざるを得ない。

3 なお、前記2(一)の各事実に照らせば、本件各記述はいずれも被告らの独自の見解ないし憶測に基づくものにすぎないというべきであり、当該事実の真実性及び右真実であると誤信することに関する相当性を認めるに足りる証拠はない。

三  争点4(本件差し止め及び謝罪広告の必要性並びに原告らの損害額)について

1  故意又は過失により違法に他人の名誉を侵害した者はこれによって生じた損害を賠償すべき義務を負うが、その侵害行為の態様や程度、加害者の意図、被害の程度、妨害排除の必要性等によっては、被害者は、不法行為に基づき謝罪広告等の名誉回復措置を求めることのほか、人格権に基づき侵害行為の差し止めを求めることができると解されるところ、このことは被害者が自然人である場合と法人である場合とで異ならないというべきである。

2  そして、被告らによる本件書籍の出版、頒布が原告らの名誉を毀損するものであること、原告らは約一四〇万人の門下生に対し少林寺拳法の指導、普及活動を行っていること、本件書籍は約三〇〇〇冊印刷され、原告らの関係者や本部所在地の地元議会議員等に対し大量に配布されたこと、被告らの本件書籍出版の動機が破門処分に対する報復にあったことは、いずれも前示のとおりであり、また、証拠(甲二三、三二、乙一六及び一七の各1、2、平成八年一〇月二三日付調査嘱託、証人船曳浩)によれば、現に、本件書籍の読者等から原告らに対する非難や問い合わせが相次ぎ、原告らはその対応に追われたこと、平成六年二月に本件訴状が被告らに送達された後も本件書籍が一部の者に送付されたり、通信販売されたことが認められ、これらの諸事情に鑑みれば、原告らの人格権に対するさらなる侵害による損害の発生を予防するために、本件書籍の販売、頒布を差し止める必要があるというべきである、

3  また、本件書籍の出版、頒布による名誉毀損につき原告らが被った無形の損害は、前記のような侵害態様、被害程度等を総合考慮すれば、原告らにつき各五〇万円とするのが相当であると認められる。

4  そして、本件書籍が少林寺拳法関係者や原告ら本部所在地の地元議会議員等に広範に郵送され、一般雑誌にもその販売広告が掲載されたこと及び被告らの原告らに対する仮差押申立とその本案である損害賠償及び寄託金返還の各訴え提起が全国紙地方版や地方紙に掲載されたこと等、前判示の諸事情に鑑みれば、原告らが本件書籍の出版、頒布により侵害された名誉を回復するためには別紙記載の謝罪広告を掲載する必要があるものと認められる。

四  結論

以上によれば、原告らの本訴請求は、本件書籍の販売または頒布の差し止め、謝罪広告の掲載並びに各五〇万円及びこれに対する不法行為の後である平成五年三月三一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文及び九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官山脇正道 裁判官橋本都月 裁判官廣瀬千恵)

別紙図書目録

「少林寺拳法を告発する」  著者福田正治  発行所 応文社

別紙謝罪広告目録

一 掲載内容

私達は、平成五年三月、「少林寺拳法を告発する」(二三二頁、定価一五〇〇円)なる書籍において、読者に誤解を与えるべく、貴殿ら並びにその管長及び幹部らを誹謗、中傷する虚偽の記載を行い、もって貴殿の名誉を毀損して多大の御迷惑をおかけしました。

ここにつつしんで謝罪申し上げます。

年  月  日

熊本県島崎一丁目三〇番一号

福田正治

大分県大字小池原一五八五―一五

植木新一

香川県仲多度郡多度津町本通三丁目一番四八号

宗教法人金剛禅総本山少林寺 殿

同県同郡同様本通二丁目一番五九号

財団法人少林寺拳法連盟 殿

二 掲載すべき新聞紙等と掲載場所

1 朝日新聞、毎日新聞及び読売新聞の各香川版(社会面広告欄)

2 原告財団法人少林寺拳法連盟の機関紙「少林寺拳法」(一面下段)

三 掲載の要領

1 大きさ 二段抜き

見出し及び原告名 3.4ミリ活字

本文 3.4ミリ活字

2 掲載の回数 一回

別紙

一覧表

番号

頁数

記載内容

(『』内は見出し。〔〕内は記載内容の要約等)

1

表紙

腐敗への挑戦 財団法人・宗教法人少林寺拳法を告発する元幹部が明かす知られざる実態! その腐敗の構造!

2

三、一〇、

一一、五五、

八二、八五

二二九

〔原告少林寺代表者宗由貴を「ニセ管長」「ニセ者」と表記。なお、別添正誤表で右各記載の「ニセ」を「二世」と訂正している〕

3

一六

『正直者ではつとまらない総本山の事務長』この様な者が事務長をしている団体に青少年教育の資格があるだろうか!

4

一八

『三十年近く騙され続けた言葉』

初代宗道臣こと中野道臣氏の言葉として色紙にしたためたもので言わば拳士の心の糧になっていたものだが、「半ばは自己の幸せを、半ばは他人の幸せを」というものがある〔中略〕

ところが最近になりあるテレビ番組で、この言葉が講道館柔道師範の嘉納治五郎先生御自身の言葉ということがわかり、書物を引っ張り出してみてこの確認を得た。少林寺拳法は講道館師範の言葉を盗用していた訳である。

5

二〇

『白が黒になる恐ろしい宗教法人=少林寺拳法』

金剛禅少林寺拳法は、名称問題である類似団体と裁判を行って来た。その結果について殆どの指導者は、少林寺拳法側は裁判に勝ったと教え込まれて来た。我々もこのことを信じきっていた訳であるが、少林寺拳法側の言い分は全面却下されていることが判明した。〔中略〕組織維持の為には、黒でも白にしてしまうのが金剛禅総本山少林寺であるようで、もちろん都合のいい場合、白は白であるが。

二一

『原告金剛禅総少林寺拳法最高裁判所判決文昭和六〇年一一月一四日』

二二ないし二五

〔最高裁判所昭和五九年(オ)第七七〇号判決の主文及び理由〕

二六ないし四二

〔最高裁判所昭和五九年(オ)第七七一号の上告理由〕

7

四三

『民主主義を否定し、文化大革命を信仰する宗一族』

民主集中制と称し、管長職を世襲制(宗由貴は天皇制を否定している)にし、その上に権力は管長一人に集中している。一人独裁で運営している。

弟子には後手必勝と教えているが、自分の悪事がばれそうになると先手必勝とばかりに相手にいいがかりを付け攻撃をかける。

8

四五ないし四七

『八億円の不明金問題の発生』

一億で県知事の首が飛び、五億円で自民党副総理の首が飛ぶ時代に、八億円の金をごまかし、のうのうと青少年教育を口にする。厚顔無恥のこのあつかましさである〔中略〕これは真に、背任横領の臭がする!〔中略〕

多額の八億円不明金問題を抱えるこの組織での責任を誰がどの様にとるのか?

9

四八

『本部の背任行為は告発すべきだ』

次に紹介するのは、信者の全員に対する完全な背任行為の一例です。〔中略〕

法的に告発すべき内容があることは明白です。

10

五五及び五六

『不信だらけの腐敗組織』

ニセ管長に女性が就任した時ささやかれていた言葉がある「これで少林寺拳法は終りだ。」「気に入らない場合は破門乱発では…。」その通りである。今年に入り、九州・関東を中心にかなり多くの破門者を発表している。しかし、本当は、本部に対する絶縁状の突きつけである。それを表向き破門として処理しているに過ぎない。現在の組織内部には、数えきれない程の不信感の材料がある。

八億円の預り金不正問題に端を発し、社会的な経験に乏しいニセ管長が、外部の人間の特別な思想にかぶれ、個人的に崇拝する思想を拳士に押しつけ、意に沿わない指導者を排除する傾向が強まっており、まさに末期的症状を呈している。

11

五八

『つぎつぎに絶縁状が本部へ』

腐敗した少林寺拳法本部に対し、縁を切りたいという内容証明書が連続して送り付けられている。これは将来的に少林寺拳法の組織に対し、夢を託すことが出来ないことに起因している。今回の一連の流れを見てみると、従来の組織問題と違った面が浮かび上がってくる。

一つは、八億円不正問題発生に対して「このままでは、又同じ繰り返しだ。今、やらなければどうする」を問題点として、勇気ある指導者が立ち上がったことで、大いに意義ある事である。二つ目には、腐敗しすぎた体質に対し失望し、外に活躍の場を求めたことであろう。〔中略〕絶縁状を突きつけられたままでは、格好が悪いので、いろいろな理由をつけて、破門処分ということで公表しているが時代遅れのやり方である。

12

六〇及び六一

〔被告植木外六名作成の大分県少林寺拳法連

盟から当時の原告ら代表者である宗道臣に対する平成四年四月一二日付「破門状」を掲載。〕

13

七二

『公共施設を巧みに利用している宗教法人』全国約千四百ヶ所以上の公共施設が、宗教法人金剛禅総本山少林寺の布教活動の場に提供されている事実です。〔中略〕

このような違法行為を平気で行っている少林寺拳法は、青少年育成団体としては不適格であると言わざるを得ません『管長は何の修行もしていない、すなわちニセ者!』

14

八二及び八三

就任時からいろいろな方面でうわさされていた事であるが「少林寺拳法の管長は、技が全く出来ないニセ者だ」「滝に打たれろとは言わないが、何らかの修行をしていれば良いが」「高価な車を乗り廻している」「外国で遊んでばかりいる」このような非難が多いことは事実である。〔中略〕

大体何も経験していない者が、血縁があるからという理由のみで、二代目になったのが土台間違いであり、今後、大きな論議を呼ぶことは必至であろう。

『師弟の絆を簡単に崩す団体』

15

八四及び八五

勿論、本部としては、組織を守る為になんとしても、師弟関係を切らせたいのであるから、どんな方法でもとってくる。〔中略〕

ニセ管長がトップに座っている財団法人の団体が、かけがえのない永い間の信頼関係までも、何故つぶしてしまうのか。こういう宗教組織を絶対許す訳にはいかない。

『人間を使いすてにする少林寺拳法』

八五ないし八七

『元指導者の自殺、早死の怪』

『八億円問題 そのⅡ』

17

九一及び九二

昭和四十年代前半まで、道院長会費というものがあった。会費は年間一万円で、道院長・支部長が拠出していたが、昭和四十六年頃に、四千万円すべてが行き先不明になるという事件があった。その後の不動禅少林寺拳法との組織防衛費としてのSBS資金数千万円も同様な末路となっている。〔中略〕

しかし、今回はあくまで、研修センター建設資金であり、組織の前進のためであるということで、合意に達せずして徴収が始まったのであるが、最悪のケースとなっている。〔中略〕

とっくの昔に、当時の本部長が、「もう、金は無いよ」と言っているのを聞いた者は多い筈である。〔中略〕

とにかく大きな黒い霧がかかっていることは間違いありません。

18

九三ないし一〇五

〔被告ら及び中尾泰昭による自らの破門理由などについての対談記事〕

『元幹部は 少林寺を次のように告発する』福田 いつも本部がやるデッチ上げの破門と云う事ですね

(九八)

(一〇一)

中尾 ようは、実力があり、宗由貴をおびやかすような実力者の排除と考えれば理解できますね。

(一〇四)

植木 宗教法人金剛禅総本山少林寺管長宗由貴は、何の宗教家としての修行もしてなく、宗教法人法による代表の資格がない事をよく表わしている。

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