高松地方裁判所 昭和41年(行ウ)5号 判決 1973年6月28日
原告 福田豊重
被告 高松税務署長
主文
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1、被告が原告に対して昭和四一年三月三日付でなした
(1) 昭和三五年分所得税に関し、総所得金額を三二四万六、九二九円、所得税額を九六万四、〇六〇円とする再更正処分のうち総所得金額三四万一、三七五円をこえる部分および無申告加算税一九万三、五〇〇円の賦課処分、
(2) 昭和三六年分所得税に関し、総所得金額を一、二七四万四、四三二円、所得税額を五六二万八、六三〇円とする再更正処分のうち総所得金額五二万〇、八〇五円をこえる部分および無申告加算税七四万六、〇〇〇円の賦課処分、
(3) 昭和三七年分所得税に関し、総所得金額を一六七万四、九二五円、所得税額を三〇万〇、〇二〇円とする再更正処分のうち総所得金額六四万二、八〇〇円をこえる部分および無申告加算税一万六、七〇〇円の賦課処分、
をいずれも取り消す。
2、被告が原告に対して昭和四〇年七月二〇日付で原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分の各所得税に関してなした各無申告加算税の賦課処分(昭和三五年分四万七、五〇〇円、昭和三六年分六六万〇、七五〇円、昭和三七年分一万三、二〇〇円)をいずれも取り消す。
3、訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨。
第二当事者の主張
一 請求原因
1、被告は、原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分の各所得税に関し、昭和四〇年七月二〇日付で、別表一第一次処分欄記載のとおり各総所得金額および各所得税額を決定し、各無申告加算税を賦課し、同月二一日、原告に通知した。
2、原告は、昭和四〇年八月五日、右第一次処分について被告に対して異議申立をしたが、やがて、右異議申立は高松国税局長に対する審査請求とみなされ、同国税局長は、昭和四一年二月二六日付で右審査請求を棄却し、同月二七日、原告に通知した。
3、次いで、被告は、昭和四一年三月三日付で別表一第二次処分欄記載のとおり第一次決定を更正し、および第一次決定による所得税額と第二次再更正処分(以下本件再更正処分ともいう。)による所得税額との差額につき同欄記載のとおり無申告加算税を賦課し、同月四日、原告に通知した。
4、原告は昭和四一年三月二二日、右第二次処分について、被告に異議申立をしたが、被告は、同年六月一〇日付で異議棄却決定をしたので、原告は、同年七月五日、高松国税局長に対して審査請求をしたが、同国税局長は、昭和四二年一月一一日付で請求棄却の裁決をし、同月一七日、原告に通知した。
5、しかし、原告には、別表一第一次、第二次各処分欄記載の各譲渡所得はなく、且、各年の給与所得および配当所得に対する税額は納付済みであるから、請求の趣旨記載のとおり右第一次処分中の無申告加算税賦課処分および第二次処分の各取り消しを求める。
二 請求原因に対する認否
原告に譲渡所得がなかつたとの事実は否認するが、その余の事実は認める。
三 被告の主張
1、原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分の各総所得金額およびその内訳は、別表一第二次処分欄記載のとおりであるが、そのうち、各譲渡所得の構成内容は別表二記載のとおりである。
2、原告の譲渡所得発生の原因は次のとおりである。
(一) 訴外香川県総合開発株式会社(以下、総合開発と略称する。)が、昭和三一年ごろから高松市福岡町所在の塩田等を買収等により取得し宅地に造成のうえ売却する事業を実施するにあたり、原告は、地元の実力者として、塩田の買収に大いに協力、貢献したので、昭和三五、六年中に総合開発から造成宅地の一部である別表三(1)ないし(3)(以下別表三という。)の「所在地および地積」欄記載の各土地(所在地は高松市福岡町字新浜である。以下本件各土地ともいう。)を同社が一般に売出す価額より低額な同別表の「取得価額」欄記載の金額で一括して譲受けることができた。そこで、原告は、昭和三五年から昭和三七年までの間、右土地の一部を自ら、その余を不動産業者(以下単に仲介人という。)に依頼して、同別表の「譲受人」欄記載の者(以下末端の買主という。)に「譲渡年月日」欄記載の日に「譲渡価額」欄記載の価格をもつて譲渡した。
(二) 譲渡所得金額の計算関係は次のとおりである。
(1) 総収入金額
総収入金額は、別表三記載の譲渡価額を各年ごとに合算したものであつて、(但し、同表中番号16ないし20、67ないし71は取得価額と譲渡価額が同一であつて、譲渡所得の対象とならないのでこれを除外した。)その額は別表二の総収入金額欄記載のとおりである。
(2) 取得費
別表三記載の取得価額を各年ごとに合算したものであつて(但し、同表中番号16ないし20、67ないし71は前同様理由で除外した。)その額は別表二取得費欄記載のとおりである。
(3) 譲渡に要した費用
原告は本件各土地の大部分を仲介人を使用して売却したものであるからこれに支払つた仲介手数料を経費として控除すべきものである。ところで、原告は、被告の再三の申入れにもかかわらず、本件各土地の売却による収入がないことを理由に、譲渡費用について何らの回答もせず、また、原告に使用された仲介人も、ごく一部の者を除いて、原告から受領した手数料の内容を明らかにしない。よつて被告は、やむなく次の方法で譲渡費用を認定した。
(イ) 別表三の番号27、28、29、35、36、37については、有限会社ひまわり不動産の使用人が仲介したが、同人らは原告より一件一万円宛の謝礼を受取つているので、これを譲渡費用と認めた。
(ロ) 右以外のもののうち、末端の買主が仲介人に報酬を支払つたものについては、原則として、原告も譲渡価額の三%を報酬として仲介人に支払つたものとした。その理由は、仲介人は、契約を成立させた場合、売主、買主双方からほぼ同額の報酬を受けるのが通例であるところ、その額は売買金額一、〇〇〇万円まではその三%以内と定められており(本件取引当時施行の宅地建物取引業法一七条、同法施行細則<昭和二七年香川県規則第六二号>)、且、右法律は罰則を以つて所定率以上の報酬を受けることを禁止しているので、末端の買主が売買価額の三%を支払つた場合は原告の支払つた額も三%とし、末端の買主がこれをこえる金額を支払つた場合も原告が支払つた額は三%とみなすべきであり、その反面、末端の買主の支払つた金額が三%未満の場合も、上限を三%とみなしたこととの均衡をはかり、且、原告に有利に譲渡費用を認める趣旨で、やはり三%とするのが相当だからである。但し、別表三の番号48、50については、末端の買主の支払つたと同率の二%によつた。
(ハ) 以上の方法で被告が算出した譲渡費用の明細は、別表四記載のとおりである。
(4) 譲渡所得金額
譲渡所得金額は、その年中の総収入金額からその資産の取得費、設備費、改良費および譲渡に関する経費(但し、本件では設備費、改良費は存しない。)を控除した金額であり、総所得金額に算入される額は、譲渡所得金額から一五万円を控除した残額の一〇分の五に相当する金額であるから(昭和二二年法律第二七号所得税法<以下旧所得税法という。>九条一項八号)、各年分の課税標準たる総所得金額に算入される譲渡所得金額は別表二の「法定控除後の譲渡所得金額」欄記載のとおりとなる。
3、仮に前記取引における原告の行為が総合開発と末端の買主との間の売買の仲介に当るとしても、原告は、末端の買主から前記の譲渡価額を受け取り、その中から前記の取得価額を同社に交付し、その差額を仲介手数料として利得したものであるから、右利得は事業所得ないし雑所得にあたると解される。そして、旧所得税法九条一項によると、事業所得も雑所得も、総所得金額に算入される額はその年中の総収入金額から必要経費を控除した金額とされているので、その額は左記のとおりとなる。
年分
区分
昭和三五年分
昭和三六年分
昭和三七年分
別表三の譲渡価額欄の合計(円)
二〇、八六〇、四三〇
八〇、六九三、一一七
五、二九四、一二〇
別表三の取得価額欄の合計(円)
一四、七六〇、〇六〇
五四、七六九、九一〇
三、〇〇二、九二〇
必要経費(円)
一三九、二六一
一、三二五、九五三
七六、九五〇
事業所得又は雑所得(円)
五、九六一、一〇九
二四、五九七、二五四
二、二一四、二五〇
これに前記各年分の配当所得および給与所得を合算して、原告の総所得金額を計算し、これと本件各土地の売却による原告の所得を譲渡所得とみた場合の総所得金額とを比較すると、次のとおりとなる。
区分
総所得金額
譲渡所得としたときの総所得金額(円)
配当所得(円)
給与所得(円)
事業所得又は雑所得
(円)
合計(円)
昭和三五年分
三四一、三七五
五、九六一、一〇九
六、三〇二、四八四
三、二四六、九二九
昭和三六年分
五、二二七
五一五、五七八
二四、五九七、二五四
二五、一一八、〇五九
一二、七四四、四三二
昭和三七年分
一一一、〇七五
五三一、七二五
二、二一四、二五〇
二、八五七、〇五〇
一、六七四、九二五
以上の如く、右取引による原告の所得を譲渡所得とみた場合よりも事業所得又は雑所得とみた場合の方が、原告の各年分の総所得金額ははるかに高額となる。したがつて、仮に、原告の行為が売買の仲介であるとしても、それに基づく課税標準および税額は本件第二次処分のそれを下廻ることはないから、右認定の誤りは本件課税処分の取消事由とはならない。
4、無申告加算税について
原告は前記各年分の所得について、確定申告書を提出すべき事務があるにもかかわらず、一切その提出をしなかつた。そのため、昭和三五年分、同三六年分の各所得についての確定申告書の提出期限(各翌年三月一五日)の翌日から第一次決定処分および第二次再更正処分の各通知がなされた日までの間に三カ月をこえる期間がいずれも経過した。そこで、被告は、第一次決定処分及び第二次再更正処分に際し、昭和三五年分、同三六年分に関しては国税通則法附則九条、昭和三七年法律第六七号による改正前の所得税法五六条三項の規定により、昭和三七年分に関しては国税通則法六六条一項一、二号の規定により、何れも加算税の基礎となる税額(その算出の根拠は別表五(1)ないし(3)の通り)に昭和三五年分、同三六年分については、一〇〇分の二五の割合を、同三七年分については一〇〇分の一〇の割合を乗じて無申告加算税額を算出の上、これを賦課したものである。
5、以上のとおり、被告の本件課税処分は適法であつて、取り消されるべき違法の事由は何ら存在しない。
四 被告の主張に対する原告の認否および主張
1、被告主張1、の金額のうち、昭和三五年分の給与所得、昭和三六、三七年分の各配当所得および各給与所得の額は認めるが、その余の金額はすべて争う。
2、被告の主張2、について
(一) 被告の主張2、(一)のうち、原告が総合開発から本件各土地を譲り受け、これを自ら他に売却・譲渡して譲渡所得を得たとの事実は否認する。すなわち、原告は同社の依頼を受けて、同社と末端の買主間の売買のあつせんをしたにすぎない。
右の意味においてならば、原告が、一部は自ら、その余は仲介人を使用して本件土地を被告主張の通り(但し、別表三中番号31、32、46、47、59、60、62、68ないし70の各譲渡価額の点を除く。)譲渡し、同別表記載の取得価額相当の金額を総合開発に支払つたことは認める。
なお、右取得価額相当金額と譲渡価額との差額は、すべて、原告が売却のあつせんに使用した仲介人らの所得に帰したものであつて、原告は全然利得していない。
右除外した事例の各譲渡価額に関し、先になした原告の自白は真実に反し、かつ、錯誤に出たものであるから、これを撤回する。
すなわち、番号31、32、46、47については、各その譲渡価額は別表三記載の各該当物件の取得価額と同額である。
番号59、66、62については、買主である株式会社槇田鉄工所が政治資金捻出のために、故意に同社の取得価額を高くしているだけであつて、原告の収入に帰すべき差益はない。
番号68ないし70については、同番号14の譲受人柏野ヒサと番号68ないし70の譲受人柏野栄次郎とが母子の関係にあるため、右栄次郎の要請により、右ヒサに売却した際生じた取得価額と譲渡価額の差額分四二万八、七〇〇円だけ右栄次郎に対して値引きした売却しているので、番号68ないし70の譲渡価額の合計額から右金額を控除する必要がある。
(二) 同(二)について
(1) 総収入金額に関する原告の答弁は、前記(一)のとおりであつて、別表三記載の各取引のうち、番号31、32、46、47、59、60、62、68ないし70の各譲渡価額を否認する。その余の譲渡価額はすべて認める。
(2) 取得費に関する原告の答弁は前記(一)のとおりであつて、別表三記載の各取得価額はすべて認める。
(3) 譲渡費用に関する被告の主張は争う。すなわち、(一)でも言及したように、取得価額相当金額と譲渡価額との差額はすべて譲渡費用として仲介人らの収入に帰したものである。
3、被告の主張3、については、原告が総合開発と末端の買主との間の売買の仲介をしたこと、被告主張の取得価額相当の金額を同会社に支払つたことならびに各年分の配当所得および給与所得の額はいずれも認めるが、譲渡価額、必要経費および事業所得又は雑所得ならびに総所得の各金額はいずれも争う。これらに関する原告の答弁および反対主張の詳細は、前記譲渡所得に関する被告の主張に対する原告の反論と同様である。
そして、仮に、別表三記載の各取引によつて原告に所得が発生しているとしても、被告は、それが譲渡所得にあたるものとして本件再更正処分をしたのであるから、右所得が譲渡所得に当らないとすれば、租税法律主義の原則から右再更正処分は違法なものとして直ちに取り消されるべきである。
4、被告の主張4、中、原告が、各年分の所得について、確定申告書を提出しなかつたこと、そのため、昭和三五年分および昭和三六年分の各所得についての確定申告書の提出期限から第一次決定処分および第二次再更正処分の各通知がなされるまでの間に、各三カ月をこえる期間の経過があつたことは認める。
別表五(1)ないし(3)については、各総所得金額中給与所得および配当所得の各額、各所得控除額、各税額控除額、各源泉徴収税額は認めるが、その余の各金額は争う。
第三証拠関係<省略>
理由
一、原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分中各所得税に関する課税の経過(請求原因1ないし4)は当事者間に争いがない。
二、本件再更正処分の所得金額中、昭和三五年分の給与所得の金額、昭和三六、三七年分の配当所得および給与所得の各金額はいずれも原告の認めて争わないところである。
三、譲渡所得の主張について
1、訴外総合開発が昭和三一年頃高松市福岡町所在の塩田等約九万坪を買収し、これを宅地に造成して昭和三五年頃から分譲を始めたことは弁論の全趣旨から当事者間に争いのないところと認められ、原告が右分譲地の内本件各土地を右総合開発から一括譲渡を受け自己の資産として分譲したか或いは総合開発と末端買主との間の売買の仲介としてしたかの点は暫く措き、昭和三五年から同三七年の間に別表三の記載の通り(但し別表三の内番号31、32、46、47、59、60、62、68ないし70の各譲渡価額の点は除く。)渕崎興業株式会社外七二名の末端買主らにそれぞれ売却したことは当事者間に争いはなく、右売却によつて原告が所得を得たことは後記認定の通りである。
2、被告は、原告は昭和三五、三六年中に本件各土地を総合開発から一括譲受けて分譲したと主張するのに対し、原告は、総合開発と買主との間の売買をあつせんしただけであると争うので、この点について判断する。
(一) 証人田中松太郎(第一回)、同藤原稔の各証言によれば、高松国税局調査官田中松太郎らが、昭和三八年一〇月四日、総合開発の法人税の調査をした際、同社々長大久保鉄夫、同社総務部長佐藤和大らは、本件各土地は同社より原告へ売却したものであると答えたこと、その後昭和四〇年一二月一〇日、同国税局協議官藤原稔が原告の所得税に関し、右大久保鉄夫、佐藤和大に質問調査をした際も、同人らは右と同趣旨を述べていたことが認められ、又右田中の証言によつて真正に成立したと認められる乙第七号証の一、成立に争いのない乙第一二三号証にも右と同趣旨の記載がある。しかし後記(三)の冒頭に記載した各証拠に照らすと、右大久保、佐藤らが前記国税局職員らに供述した内容は真実を述べたものとはたやすく認め難く、又右田中、藤原の各証言によれば、右乙第七号証の一は田中調査官による右調査の際の大久保らの応答の趣旨を書面に作成したものであり、右乙第一二三号証も藤原協議官の調査の際大久保の供述内容を録取したものであることが認められるから、右各乙号証の記載内容も右各証言中の大久保らの供述についてと同様の理由によつて措信し難い。したがつて、以上の証拠によつては未だ原告が総合開発より本件各土地を一括して譲受けたものと認めることはできない。
(二) 又、成立に争いのない乙第二七、第二九、第三七号証の各二、同第五二号証の三、四、同第一二六号証、次の括弧内の各証拠により何れも真正に成立したと認められる甲第一二号証(証人池田貞市、同新谷末吉、同守谷保則の各証言および原告本人第一、二回尋問の結果。以下単に証人名のみを記載する。)、乙第九号証の八、同第一二五号証(以上池田貞市)、同第一七号証(新谷末吉)、同第一九号証(守谷保則、原告本人第一回)、同第九号証の三ないし七、同号証の九ないし一四(以上田中松太郎第一、二回)、乙第一一号証、同第一三号証、同第二六号証、同第二七、第三七号証の各一、二(以上香川竹二郎)、同第一四号証、同第三〇号証(以上佐竹正行)、同第一六号証、同第二九号証の一、同第三一号証、同第五三号証(以上高畑武弐)、同第一八号証の一、同第二八号証、同第三五号証、同第四三号証、同第五〇号証(以上岡本多賀麿)、同第二〇号証(山口登視男)、同第二五号証、同第五二号証の一(以上徳永陽三)、同第三九号証(国方和義)、同第三六号証の一、二、同第四四号証(以上守谷保則)、同第三二号証、同第三八号証、同第四八号証、同第四九号証、同第一二四号証(以上小方守第二回)、および証人佐藤和大(第一、二回)、同新谷末吉、同東原薫の各証言ならびに原告本人尋問の結果(第一、二回)によると、原告は仲介人を使用して本件各土地を売却したが(但しごく一部は自ら売却した)、これらの売却に当り自ら売主となり、買主の選択、売買代金額の決定等も総て原告の責任においてなし、売買代金を受領すると、すべてこれを原告の預金口座に預金し、仲介人に支払う手数料も原告の責任において支払つていたもので、総合開発に対しては売買成立の都度、売却物件、売却年月日、買主名等を報告するが、売却価格は報告していないこと、一方総合開発は右報告があるとその旨の記帳をするが、売却価格は一坪当りの基準価格(後記(三)に認定)に売却物件の坪数を乗じた金額を記載していたのであつて、同社が直接個々の買主について売却物件、売買価格等を調査確認することは一切していなかつたし、仲介人への手数料の支払等も一切していなかつたこと、原告が受領した売却代金は前記の如く一旦原告の預金口座に預金し、その後原告は適宜の時期に適宜の金額を総合開発へ納入し、同社もこれをそれまでに原告が売却した物件の買主のうち適宜の者の代金として入金記帳していたこと、以上の事実が認められる(証人池田貞市の証言中右認定に反する部分はたやすく信用出来ない。)。しかし、後記(三)冒頭掲記の各証拠に照らすと、以上の各事実も未だ被告主張の如く原告が本件各土地を総合開発より一括譲受けた上、各末端の買主に売却したものと推認するに充分ではない。そして他に右被告主張の事実を確認するに足る証拠は存しない。
(三) かえつて、成立に争いのない甲第三ないし第一一号証、証人佐藤和大(第一、二回)、同大久保雅彦、同小磯治芳、同新谷末吉、同溝淵為典、同佐々木行徳の各証言ならびに原告本人尋問の結果(第一、二回)に前記(二)の冒頭掲記の各証拠を総合すると、総合開発のなす前記塩田の買収は当初難行したのであるが、地元福岡町に在住し当時(昭和三一年頃)市議会議員の地位にあり、又総合開発の顧問の如き立場にあつた原告の尽力によつて右買収が成功したものであること、そして総合開発は右土地の造成完了後これをいくつかの区画(一区画は十数筆ないし二十余筆からなる。)に分つて分譲することとなつたが、当時同社の代表取締役であつた大久保雅彦、常務取締役であつた小磯治芳らは原告と極めて親密な間柄であつたし、又塩田の買収に協力貢献した原告に多少報いたいところもあり、併せて造成地の分譲を促進したいところから、市議会議員の地位にあつて顔も広く買手を探し易い立場にある原告に右造成地の一部の売却を依頼することとなり、原告に対し右造成地のうち区画番号四三九、四四〇、四四一、四四八、四四九について、区画毎に一坪当り概ね一万五、〇〇〇円ないし一万九、〇〇〇円とする基準価格(この価格は総合開発が一般に分譲する価格より若干安いものである。)を定めて売却方を依頼し、原告も右大久保らの意図を充分了知してこれを承諾したこと、その際明示の合意はなかつたけれども、右土地の売却は原告に一任するものであり、区画内の各筆の売却価格は原告において自由に決定してもよいが、全体の売却代金額は右基準価格に売却坪数を乗じた額を下廻ることのないようにすると共に、それ以上の価格で売却できた場合はその差額を原告の利益とすることを、双方間で暗黙のうちに了解していたものであり、したがつて、右売却依頼に伴う総合開発から原告に対する謝礼については別段の合意はなされなかつたこと、斯くして原告は自己の責任において売却することとなつたので、気心の知れた仲介人を使用して買主を求め、自ら売主となり、売却条件の一切を原告の責任において決定し、一方総合開発も原告を信頼してこれに売却を一任したので、個々の売買については全く干渉しなかつたのであつて、その結果前記(二)に認定の如き処理がなされるに至つたものであること、ところが昭和三八年一〇月に至り、前記(一)に認定の、田中調査官による総合開発の法人税の調査が行なわれた際、同社の総務部長である佐藤和大らは右田中調査官より、本件各土地を総合開発より原告へ一括譲渡したものでないのならば、同社の収入金額として末端の買主との売買価格を記帳すべきである旨指摘せられ、斯くては右価格を同社の収入金額として法人税を課せられる虞れがあるので、この事態を避ける為やむなく前記(一)に認定の如き供述を右調査官になし、併せて同調査官の要請により前記乙第七号証の一の書面を作成提出するに至つたものであり、その後昭和四〇年一二月に前記(一)認定の藤原協議官による原告の所得調査の際も、右佐藤は既に田中調査官に右の如く述べ且乙第七号証の一の書面も提出しているところから、やむなく同旨の説明を右協議官になしたものであること、以上の通り認められる。証人小磯治芳の証言中右認定に反する部分はたやすく信用することは出来ない。そして以上の事実によると、原告は総合開発の依頼によつて同社所有の本件各土地を売却処分したものであつて、総合開発より一旦右土地の譲渡を受けた上自己の資産としてこれを売却したものでないことは明らかである。
3、ところで譲渡所得税は、資産の所有者がその値上りによつて得た増加益に対し、当該資産の譲渡の際に課せられるものであるから、原告が、右の如く総合開発所有の土地を同社の依頼によつて売却し、これによつて利益を得ても、右利益をもつて譲渡所得といえないことは明らかである。したがつて、昭和三五年ないし同三七年中に、原告に譲渡所得があつたとする被告の主張は採用することは出来ない。
四、事業所得ないしは雑所得の主張について
1、先づ原告は、本件再更正処分は、原告が本件土地の売却に関与して得た所得を譲渡所得であるとしてなされたものであるから、それが譲渡所得に当らないとすれば、この点において既に右再更正処分は違法であり、取消されるべきであると主張するが、課税処分取消訴訟の審理の対象は、課税庁の決定した所得金額の存否そのものであり、原告の主張する具体的違法事由ではないと解すべきであるから、課税庁は訴訟の過程において再更正処分当時考慮されなかつた新たな事実でも、右処分を正当とする理由として主張することは可能であると解される(最高裁判所昭和四二年九月一二日第三小法廷判決参照)。まして本件においては、再更正処分当時考慮されなかつた所得を新たに主張するものではなく、右処分当時考慮されたと同一の所得について、右処分当時これを譲渡所得と評価していたのを、訴訟において事業所得ないし雑所得と評価して主張するに過ぎないのであるから、右主張はもとより許されるものというべきであり、又、課税処分取消訴訟において斯る主張を許すことは何ら租税法律主義に反するものではないというべきである。そうすると、再更正処分当時の課税庁による所得の認定ないしは判断に誤りがあつたとしても、これをもつて直ちに右処分を違法として取消すべきものではないから、原告の右主張は採用出来ない。
2、そして、前記三の2の(三)に認定したところによると、原告は総合開発所有の土地をその依頼によつて末端の各買主に売却したものであり、これによつて原告は、前記認定の基準価格と後記認定の現実の売却価格との差額を利益として取得したものであるが、右利益は総合開発の委任によつて本件各土地の売却事務を処理したことに対する同社からの報酬としての実質を有するものとみるべきものである。したがつて右利益の所得税法(昭和三五年ないし同三七年当時施行のもの)上の所得類型は雑所得ないし事業所得に該当するものと考えられる。
3、そこで原告の得た右利益が雑所得と事業所得との何れに該当するかについて更に検討する。
(一) 原告が本件各土地の売却事務を処理するに当り利益を得る目的を有したことは、前記三の2の(三)に認定の如き総合開発との間の暗黙の合意の存したことおよび原告本人尋問の結果(第一、二回)によつて認められる、原告が本件各土地の売却に当り極く一部の土地を除き、大部分は総合開発から示された基準価格より高額に売却することを意図し、自己の使用した仲介人らにその旨を指示している事実によつて明らかである。そして原告は右事務の処理として昭和三五年七月頃から同三七年末までの間の二年半に亘り継続して合計七六筆、総面積約五、二〇〇坪におよぶ本件各土地を、渕崎興業株式会社外七二名の者にそれぞれ売却したものであつて、その取引回数は約七〇回におよんでいるのであり、後記認定の通り右取引による売却代金額は、昭和三五年度において二、八六二万二、三三〇円、同三六年度において八、六四四万二、五三七円、同三七年度において五二九万四、一二〇円、以上合計一億二、〇三五万八、九八七円に達し、又原告本人尋問の結果(第一回)によると、原告は右取引に約三〇名の仲介人を使用し、これに支払つた手数料総額は後記認定の通り五四八万〇、一九九円に達している。
(二) ところで、所得税法上、事業所得とは、経済的利益の取得を伴う事業活動によつて得られた所得をいうのであり、そして右の事業とは、営利を目的とする継続的行為であつて、社会通念上事業と認められるもの一切を指称し、もつぱら利潤追求を目的とするもののみに限られず、更にこれを職業として行なうことも、また、そのための特別の人的物的設備を具備することも必要ではないと解されるところ、右(一)に認定の如き本件取引の回数、筆数、面積、売却代金額、使用した仲介人の数および継続期間等からすると、原告の右行為は旧所得税法九条一項四号、同法施行規則七条の三、五号、所定の不動産業に該当するものと解するのが相当である。原告本人尋問の結果(第一、二回)によれば、原告は、これまで個人で不動産業を営んだことはなく、又本件各土地の売却に当り事務所を開きあるいは電話を架設する等の特別の物的設備を整備したことはなく、従業員を雇つたこともないことが認められるが、これらの事実が右事業認定の妨げとはならないことは先に説示したとおりである。
五、事業所得金額の計算関係
1、総収入金額
(一) 原告が別表三記載の各年月日に同表記載の土地を同表記載の各譲受人に売却したこと、その売却価格は番号31、32、46、47、59、60、62、68ないし70を除いて同表の各「譲渡価格」欄記載の金額どおりであることは当事者間に争いがない。
(二) 右に除外した各場合について、原告は当初被告主張の売却金額を認めたが、後に右自白を撤回し、右自白は真実に反しかつ錯誤に出たものであると主張するので、この点について判断する。
(1) 番号31、32の場合
証人佐竹正行の証言によれば、これらの取引については、取引当事者の協力が得られず、当事者に対する質問調査によつては取引内容を明らかにすることができなかつたので、やむなく、譲渡価額は推定によつたことが認められるが、同証言によれば、この推定した価額には確たる根拠があるわけではないことがうかがわれる反面、証人溝淵為典の証言および原告本人尋問の結果(第一回)によれば、これらの取引は実際には原告と溝淵為典の母ヒサヱとの間でなされたものであるが、両者は古くからの知り合いである関係から、原告は同表記載の取得価額で売却した事実を認めることができる。そして、自白が真実に反するものであることからすると、右自白は錯誤に出たものと推認するのが相当である。したがつて、自白の撤回が許されるべきであり、収入金額は別表三記載の取得価額と同額ということになる。
(2) 番号46、47の場合
証人佐々木行徳の証言および原告本人尋問の結果(第一回)によれば、原告は、買主である株式会社佐々木商店の常務取締役佐々木行徳と従前から面識があつたため、同表記載の取得価額で売却したことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。そして、自白が真実に反するものであることからすると、右自白は錯誤に出たものと認めるのが相当である。したがつて、自白の撤回が許されるべきであり、収入金額は別表三記載の取得価額と同額ということになる。
(3) 番号59、60、62の場合
原告本人尋問の結果(第一回)中には、原告は被告主張の金額を株式会社槇田鉄工所から一応受領したが、取得価額との差額四〇〇万円は、同社社長槇田久の当初からの依頼に従い、同社の建設用地確保等のための運動資金として国会議員河野一郎に献金した旨の供述があるが、原告の右供述中、右槇田との取引には裏があるという部分は、これを裏付ける証拠が全然ないこと等に照らすと、にわかに信用できない。したがつて、これらの取引に関する自白の撤回は許されず、被告主張の譲渡価額をもつて収入金額となすべきである。
(4) 番号68ないし70の場合
原告本人尋問の結果(第一回)中には、右取引について原告の主張どおりの供述があるが、(3)の場合と同様の理由により信用できない。したがつて、自白の撤回は許されず、被告主張の譲渡価額をもつて収入金額となすべきである。
(三) 以上(一)、(二)によると、原告が売却した代金の各年分毎の総額は昭和三五年分が二、八六二万二、三三〇円、昭和三六年分が八、六四四万二、五三七円、昭和三七年分が五二九万四、一二〇円となる。そして、原告はこのうち右別表三の「取得価額」欄記載の金額を総合開発へ納入したことは当事者間に争いはなく、その昭和三五年分の総額は二、二五二万一、九六〇円、同三六年分は六、一七八万四、三八〇円、同三七年分は三〇〇万二、九二〇円であるから、原告の本件各土地の処分による報酬として得た収入の総額は、昭和三五年度においては二、四六五万八、一五七円、同三七年度においては二二九万一、二〇〇円となる。
2、必要経費
前認定のとおり原告は、本件土地のうち大部分は仲介人を使用して売却し、その余は原告自ら売却したのであつて、右売却の為に特別の人的、物的設備をなしたものではないから、右仲介人らに支払つた手数料は本件所得を得る為の必要経費と認められるが、それ以外に経費を要したことを認めるにたりる証拠はない。そこで右手数料の額について検討する。
(一) 原告本人尋問の結果(第一回)によれば、番号14、31、32、42、46、47、59、60、62、68ないし70の各取引については、原告は仲介人を使用せず自ら売却に当つたことが認められるからこれらについて手数料の支出は考えられない。
また前記乙第一三号証によれば、藤田君子の仲介した番号3および5の取引については、同女は原告からは仲介手数料を受領していないことが認められる。
次に、取得価額と譲渡価額とが同額の番号16ないし20、67、71の取引については、原告は全然差益を得なかつたわけであるから、このような場合にまで仲介人に報酬を支払つたとは考えがたい。
そこで、これらの場合については、原告は仲介業者に対する報酬は支出していないものと認めることができる。
(二) 前記乙第一一号証、乙第一八号証の一、乙第四八、第四九号証、乙第一二号証、証人小方守の証言(第一回)によつて真正に成立したものと認められる乙第二一号証、証人新谷末吉および同東原薫の各証言によれば、番号11、12、15、45、63、64の各取引を仲介した新谷末吉、東原薫らは、原告の承認の上各売却代金のうち一坪あたり概ね二万〇、五〇〇円をこえる部分を新谷らの取り分としたことが認められるから、原告は、二万〇、五〇〇円をこえる価額で売却された番号11、12、45、63、64の各取引については、超過部分を仲介人に対する報酬として支払い(その額は別表六の該当番号欄記載のとおり)、番号15の取引については、仲介手数料を支払つていないものと認められる。一部右認定に反する原告本人尋問の結果(第一、二回)は信用できない。
ところで、本件各取引当時施行されていた宅地建物取引業法一七条および同法施行細則(昭和二七年香川県規則第六〇号)によれば、宅地建物取引業者が宅地等の取引について一方の当事者を代理した場合に受けることのできる報酬額の限度は、取引金額一、〇〇〇万円まで(本件取引は総て一、〇〇〇万円未満である。)は取引金額の六%とされているので、原告は右各取引において、法規の許容する限度を上廻る報酬額を支払つたことになる。
この点について、被告は、法規の許容する限度を上廻る部分については、必要経費として原告の収入金額から控除すべきでないとの趣旨の主張をしているが、右法律(これに基づく細則を含む。以下この項において同じ。)の規定の趣旨は、不動産仲介業者が不動産取引における代理ないしは仲介行為によつて不当の利益を収めることを禁止するところにあると解され、したがつて、右法律に違反する報酬契約の私法上の効力いかんは問題であるとしても、現実に右法律所定の報酬額以上のものが支払われた場合には、所得税法上は右現実に支払われた全額を経費(右報酬の支払いを受けた不動産仲介業者については所得)として認定すべきものである。
(三) 右(一)、(二)以外の取引について
原告本人尋問の結果(第一、二回)によると、右(一)、(二)以外の取引はいずれも前記新谷、東原以外の仲介人を使用してなされたものであること、原告はこれらの仲介人らに対しても右新谷らの場合と同様各物件について売却価額を指値し、原告の代理人として末端の買主との間に売買契約を締結せしめ、右指値金額をこえる価額で売却できた場合は、その差額を仲介人らが報酬として取得することを承認していたことが認められるから、原告はこれらの取引についても仲介人らに相当の報酬を支払つたものと推認されるか(被告は、これらの取引のうち末端の買主が仲介人に手数料を支払つたと認められない取引について原告は手数料を支出していないものと推定しているが、左様に推定すべき合理的な理由はない。)、その実額を認めるべき証拠はない(原告本人の第一、二回尋問の結果中には、原告は前記(二)の取引を含め、すべての指値は別表三取得価額欄記載の金額に一、〇〇〇円を加えた額とした旨の供述があるが、この供述は、前記証人新谷末吉、同東原薫の各証言ならびに乙第一三号証に照らして到底信用できない。なお、被告は、別表三記載の番号27ないし29および番号35ないし37の各取引については、有限会社ひまわり不動産が仲介し、原告は同社に対して成約一件について一万円程度の報酬を支払つただけであると主張するが、右事実を認めるにたりる証拠はない。)。この点に関し(但し末端の買主が仲介人に手数料を支払つたと認められる場合につき)、被告は、一般に仲介人は売主、買主双方から同額の手数料を徴するのが通常であることを根拠に、末端の買主が仲介人に支払つた手数料の額を基準とし、前記宅地建物取引業法および同法施行細則に定める、売買代金の三%と推定すべきであると主張するが、右細則所定の三%は仲介人が仲介行為をした場合の報酬であつて本件の如く代理行為をした場合のものではないし、又先に認定した原告と仲介人との間の報酬についての合意内容およびこれと同旨の報酬を約した前記新谷、東原についてはその報酬額が売買代金の約一〇%に達している事実を考え併せると、原告が右新谷ら以外の仲介人に支払つた報酬も三%をこえるものと推定されるから、被告の右主張は採用し難い。ところで原告は前認定のとおり右仲介人らを自己の代理人として使用していたのであり、そして前記宅地建物取引業法および同法施行細則によれば、仲介人が取引当事者の一方を代理した場合に受けられる報酬の上限は取引金額一、〇〇〇万円まではその金額の六%とされているから、原告は譲渡価額の六%を仲介人に対する報酬として支払つたものと推定するのが相当である。なぜなら、法の許容する限度をこえる仲介手数料支払いの事実のごときについては、その不存在について事実上の推定が働くというべきであるし、もし、そのような特別の経費を要しているのであれば、その存在を立証することは納税義務者の方が容易であり、かつ有利なのであるから、納税義務者の側においてその額を主張立証するべきだからである。
(四) 以上の方法によつて、原告が本件各取引に関して要した仲介手数料の額を算出すると、別表六記載のとおりであり、その各年毎の合計は、昭和三五年が一一九万三、九二一円、昭和三六年が三九六万八、六三一円、昭和三七年が三一万七、六四七円となる。
3、事業所得金額
事業所得金額は、その年中の総収入金額から必要経費を控除した金額であるから、原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分の事業所得金額およびその内訳は別表七記載のとおりである。
六、総所得金額および無申告加算税について
以上によると、原告の昭和三五年分ないし昭和三七年分の各総所得金額およびその内訳は次のとおりである。
総所得金額およびその内訳
年分
区分
昭和三五年分
昭和三六年分
昭和三七年分
配当所得(円)
〇
五、二二七
一一一、〇七五
給与所得(円)
三四一、三七五
五一五、五七八
五三一、七二五
事業所得(円)
四、九〇六、四四九
二〇、六八九、五二六
一、九七三、五五三
総所得金額(円)
五、二四七、八二四
二一、二一〇、三三一
二、六一六、三五三
しかるに、原告が右各年分の所得について確定申告書を提出しなかつたこと、昭和三五年分および昭和三六年分の各所得について確定申告書を提出すべき期限の翌日から第一次決定処分又は第二次再更正処分の各通知がなされた日までの間に三カ月をこえる期間が経過したことはいずれも当事者間に争いがない。
しかして、右各年分の総所得金額がいずれも別表一第二次処分欄記載の各年分の総所得金額を下らないことは明らかである。そして、各年分の所得控除額、税額控除額、源泉徴収税額については当事者間に争いがない。
そうすると、原告は、関係法規に照らし(別表五(1)ないし(3)参照)、昭和三五年分ないし同三七年分の各所得税の無申告について昭和四〇年七月二〇日付および昭和四一年三月三日付をもつて賦課された無申告加算税額を下らない同税を賦課されるべきであることが明らかである。
七、結論
以上の次第で、被告のなした本件各再更正処分および各無申告加算税賦課処分はいずれも適法であるから、原告の本訴請求をいずれも失当として棄却し、訴訟費用の負担について民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 林義一 磯部有宏 浜井一夫)
(別表省略)