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高松地方裁判所 昭和59年(ヨ)209号 決定 1984年12月14日

当事者目録

債権者

社団法人日本音楽著作権協会

右代理人弁護士

柳井義郎

堀井茂

債務者

西川重義

右当事者間の昭和五九年(ヨ)第二〇九号著作権侵害差止仮処分事件について、当裁判所は、債権者の申請を相当と認め、債権者に金五〇〇万円(高松法務局昭和五九年度(金)第九八一号)の保証を立てさせて次のとおり決定する。

主文

左記のとおり

昭和五九年一二月一四日

高松地方裁判所

裁判官 菅浩行

(主文)

一、債務者は、別紙店舗目録記載の債務者の各店舗において、顧客らの第三者をして、それぞれの店内に設置したカセットテープ複製機を操作させ、その店内に所在する別紙音楽テープ目録記載の音楽カセットテープ製品からその複製物を作成させ、または自ら右機器を操作して右複製物を作成してはならない。

二、債務者の別紙機械目録記載のカセットテープ複製機に対する占有を解いて高松地方裁判所執行官にその保管を命ずる。

執行官は、その保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。

以上

店舗目録

(一)高松市南新町一一番地の六

古山ビル二階

旧「クリスタル南新町店」

現店名「コム」

(二)香川県大川郡大内町三本松一二一七番地の一

旧「クリスタル三本松店」

現店名「コム」

複製機目録

(一)設置場所 別紙店舗目録(一)の店舗内

台数 二台

機種 オタリ・DP―4050

二台

(二)設置場所 別紙店舗目録(二)の店舗内

台数

二台

機種 オタリ・DP―4050

一台

ソニー・CCP―13B

一台

仮処分命令申請

〔申請の趣旨〕

一、債務者は、別紙店舗目録記載の債務者の各店舗において、顧客らの第三者をして、それぞれの店内に設置したカセットテープ複製機を操作させ、その店内に所在する別冊音楽テープ目録記載の音楽カセットテープ製品からその複製物を作成させ、または自ら右機器を操作して、右複製物を作成してはならない。

二、債務者の別紙機械目録記載のカセットテープ複製機に対する占有を解いて高松地方裁判所執行官にその保管を命ずる。執行官は、その保管にかかることを公示するため適当な方法をとらなければならない。

〔申請の理由〕

一、債権者は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和一四年法律第六七号)に基づく仲介業務の許可を受けた著作権仲介団体であり、内外の音楽著作物につき、それぞれの著作権者から著作権乃至その支分権(演奏権、録音権等)の移転を受けてこれを管理し、我が国内における放送事業者をはじめ、レコード、映画、出版、興業等の分野の各種音楽使用者に対してその使用を許諾し、著作物の適法な利用を円滑簡易ならしめると共に、右許諾に際して約定した著作物使用料を使用者から収納し、これを内外の著作権者に分配することを主たる業務としている。

二、債務者は、昭和五八年一一月二〇日ころから、別紙店舗目録(一)記載の店舗において、同五九年三月一〇日ころから同目録(二)記載の店舗において、それぞれその営業活動を行つている。

三、債務者の右各店舗内における営業活動の態様は、いずれもその店内に別冊音楽テープ目録記載の音楽カセットテープ(以下単に音楽テープという)及びその他の音楽テープをそれぞれ陳列し、かつ申請の趣旨記載のカセットテープ複製機及び編集機等を設置して、顧客の注文に応じ、陳列された音楽テープの中から顧客の選択したテープに収録された音楽著作物を、顧客が持参し、又は債務者から購入した生テープに、右複製機器を使用して、録音複製し、顧客をして、その複製物を取得せしめ、右音楽テープ及び複製機器の賃貸料名下に顧客から受領する料金をもつて営業の収益となすものである。

四、債務者の右営業によつて必然的に生ずる音楽著作物の複製行為は、複製行為を債務者が自ら行う場合はもとより、複製機器の操作使用が顧客によつてなされるものであるとしても、

(一)複製行為の行われる場所が、債務者の店舗内であること。

(二)複製される音楽著作物の収録された音楽テープ及び複製機器が、債務者の管理下に存在するものであること。

(三)前記(一)及び(二)の状況下における顧客による複製機器の操作使用が、債務者の管理支配下において行われていると解されること。

(四)右複製行為が、債務者の収益を目的とする営業活動の要素として行われていること。

の諸点から、債務者の著作物複製行為と同視すべきものである。

五、債権者は、債務者の前記各店舗に陳列されている別冊音楽テープ目録記載の音楽テープに収録されている音楽著作物(その備考欄に無信託及び消滅と記載されている著作物を除く)の著作権者から録音権の移転を受けてこれを管理し、これら著作物の録音による複製に関し、著作権法第二一条に基づく著作物複製権を専有している。

六、債務者の前記複製行為による債権者が管理する著作物の複製は、債権者の許諾を得ない無断複製として、著作権侵害行為に該当し、債権者は、著作権法第一一二条に基づきその侵害行為の差止を請求する権利を有する。

七、債権者は、現在に至るまで債務者に対し、債権者の有する著作物複製権の侵害行為を中止するよう再三にわたり警告しているが、債務者がこれに応じないので、右侵害行為の差止並びに損害の賠償を求めるため、本訴提起の準備中である。

しかしながら、本案判決をうるまで、右侵害行為が継続されるときは、その目的を達することができないので、申請の趣旨記載の仮処分決定を求めたく、本件申請に及ぶものである。

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