高松地方裁判所丸亀支部 平成14年(わ)62号 判決 2002年10月16日
主文
被告人を懲役1年に処する。
未決勾留日数中30日をその刑に算入する。
この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は,法定の除外事由がないのに,
第1フリーメール等のサービスを運営するアクセス管理者であるa株式会社が東京都千代田区b町c丁目d番e号のfビル内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバに,電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能にかかるメールサービスの会員であるgを利用権者として付された識別符号であるユーザーID「h」等を入力して不正アクセス行為をしようと企て,
1 平成13年9月29日午後8時17分ころ,香川県さぬき市i町jk番地(当時同県大川郡i町jk番地)の被告人方において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及びそのパスワード「l」を入力してこれを作動させ,
2 同日午後9時31分ころ,同所において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及び被告人が無断で変更したパスワード「m」を入力してこれを作動させ,
3 同月30日午前7時27分ころ,同所において,前同様の方法により,
4 同日午後10時3分ころ,同所において,前同様の方法により,
5 同年10月1日午前7時31分ころ,同所において,前同様の方法により,
いずれも前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ,もって不正アクセス行為をし,
第2前記a株式会社が前記fビル内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバに,電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能にかかるメールサービスの会員であるgを利用権者として付された識別符号であるユーザーID「n」等を入力して不正アクセス行為をしようと企て,
1 同年9月29日午後8時21分ころ,前記被告人方において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及びそのパスワード「o」を入力してこれを作動させ,
2 同日午後8時42分ころ,同所において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及び被告人が無断で変更したパスワード「m」を入力してこれを作動させ,
3 同日午後9時20分ころ,同所において,前同様の方法により,
4 同日午後9時34分ころ,同所において,前同様の方法により,
5 同月30日午前7時13分ころ,同所において,前同様の方法により,
6 同月30日午前7時42分ころ,同所において,前同様の方法により,
7 同月30日午前10時4分ころ,同所において,前同様の方法により,
8 同年10月1日午前7時30分ころ,同所において,前同様の方法により,
いずれも前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ,もって不正アクセス行為をし,
第3前記a株式会社が前記fビル内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバに,電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能にかかるメールサービスの会員であるpを利用権者として付された識別符号であるユーザーID「q」及びパスワード「r」を入力して不正アクセス行為をしようと企て,
1 平成14年4月26日午前5時15分ころ,前記被告人方において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及びパスワードを入力してこれを作動させ,
2 同日午後零時32分ころ,香川県木田郡s町tu番地の有限会社v事務所において,前同様の方法により,
3 同月29日午後3時10分ころ,同所において,前同様の方法により,
4 同年5月5日午後4時42分ころ,同所において,前同様の方法により,
5 同月9日午前11時40分ころ,同所において,前同様の方法により,
6 同月19日午後零時16分ころ,同所において,前同様の方法により,
いずれも前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ,もって不正アクセス行為をし,
第4一般第二種電気通信事業を営む前記a株式会社が前記fビル内に設置したアクセス制御機能を有する特定電子計算機であるサーバに,電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能にかかるメールサービスの会員であるwを利用権者として付された識別符号であるユーザーID「x」及びパスワード「y」を入力して当該特定電子計算機を作動させて不正アクセス行為をした上,同特定電子計算機の認証サーバに保管中の「x」宛の電子メールの内容を知得し,電子通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵そうと企て,
1 同月9日午前11時49分ころ,前記有限会社v事務所において,同所に設置されたパーソナルコンピューターから電気通信回線であるケーブルテレビ回線等を通じ,前記特定電子計算機に前記ユーザーID及びパスワードを入力してこれを作動させ,
2 同月19日午前11時39分ころ,同所において,前同様の方法により,
3 同日午後零時51分ころ,同所において,前同様の方法により,
4 同月24日午後7時ころ,同所において,前同様の方法により,
いずれも前記アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせ,もって不正アクセス行為をした上,
5 前記1の際,前記1と同日午前11時56分ころ,同所において,別紙電子メール一覧表番号1及び2記載の電子メールの内容を知得し,
6 前記3の際,前記3と同日午後零時54分ころ,同所において,同表番号3及び4記載の電子メールの内容を知得し,
もって,電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密を侵したものである。
(証拠の標目)
省略
(法令の適用)
被告人の判示第1ないし第3の各所為,判示第4の所為のうち不正アクセスをした点は,いずれも不正アクセス行為の禁止等に関する法律8条1号,3条1項,同条2項1号に,判示第4の所為のうち電気通信事業者の通信の秘密を侵した点は,電気通信事業法104条1項に,それぞれ該当するが,判示第4の所為のうち不正アクセスをした点と電気通信事業者の通信の秘密を侵した点との間には手段結果の関係があるので,刑法54条1項後段,10条により1罪として,重い電気通信事業法違反の罪の刑で処断することとし,判示各罪についていずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により,最も重い判示第4の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役1年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中30日をその刑に算入し,情状により,同法25条1項を適用して,この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予することとする。
なお,判示第4の不正アクセス行為と電気通信事業者の通信の秘密の侵害行為との関係については,同じ特定電子計算機をめぐる犯罪であること,いずれも情報通信社会の秩序を害するものであること,あたかも他人の住居に侵入して中の財物を窃取するようなもので,罪質上通例に前者が後者の手段と考えられることから,当裁判所は,これを牽連犯と判断した。
(量刑の理由)
本件は,他人の識別符号を利用して行われた不正アクセス行為の禁止等に関する法律違反と,その際他人の電子メールを盗み見た電気通信事業法違反の事犯である。
被告人は,パソコンでインターネットをしていて知り合った被害者gから会おうと誘われたが,内向的性格からこれに応じることができず苛立ちを募らせ,同女を困らせてこれを解消しようと,同女にわいせつなメール等が送信されるよう仕向けたが,その受信状況を確認しようなどと考え,また,その状況について同女に知らせようと同女のIDでメールを送信して判示第1及び第2の各犯行に及び,不正アクセスが成功したことで味をしめ,病み付きになり,もっと性的な情報を得たいと考えて,女子中学生宛のメールを覗き見ようと判示第3の犯行に,また,乱交パーティ参加希望者のメールを覗き見ようと判示第4の犯行に,それぞれ及んだもので,各犯行に至る経緯や犯行動機には倒錯した欲望,好奇心が窺われ,酌量の余地はなく,執拗にパスワードを探索したり,頻繁に不正アクセスしていること,被害者のプライバシーを害するのみならず相当な迷惑をかけていること等からして,犯行態様も悪質である。余罪もかなり窺われる。
他方,判示第3及び第4の犯行は被告人が自発的に申告したものであること,被告人は,本件各犯行を認めて反省していること,被害者gは厳重処罰までは望んでいないこと,これまで前科はなく,妻と幼い子2人を抱えて,仕事はしていたところ,本件により退職を余儀なくされていること,相当期間身柄拘束を受けたことなど,酌量すべき事情もある。
よって,主文のとおり判決する。
(求刑 懲役1年)
(裁判官 福田修久)
別紙電子メール一覧表
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