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高松高等裁判所 平成10年(行コ)9号 判決 1999年4月26日

徳島市飯谷町西分三一の一

控訴人

富銅勉

右訴訟代理人弁護士

林伸豪

川真田正憲

徳島市幸町三丁目五四番地

被控訴人

徳島税務署長 中村隆保

右指定代理人

前田幸子

薬師神和夫

山科由美子

改田典裕

宇野秋則

和泉康夫

加藤公一

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  被控訴人が控訴人に対し、平成五年三月二日付けでした次の各処分(ただし、原判決別表1記載の「審査請求」欄の金額を超える部分。)を取り消す。

1  控訴人の平成元年ないし平成三年分の所得税の各更正及びこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定(ただし、平成三年分については、審査裁決により一部取り消された後のもの。)

2  昭和六四年一月一日から平成元年一二月三一日までの課税期間(以下「平成元年期分」という。)の消費税の更正

3  平成二年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間(以下「平成二年期分」という。)及び平成三年一月一日から同年一二月三一日までの課税期間(以下「平成三年期分」という。)の消費税の各更正並びにこれに伴う過少申告加算税の各賦課決定(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの。)

第二事案の概要

以下のとおり、付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二八頁四行目の「争う。」の次に「軽油引取税相当額は税金であって、譲渡資産の課税対象とはならないというべきであり、そのことは特約店であるか販売店であるかによって差異のあるべきものではないから、税金の二重取りにならないように、」を加える。

二  原判決三三頁一行目の「争う。」の次に「消費税法三〇条七項にいう仕入税額控除の要件としての『帳簿等の保存』は文字通り『保存』しておけばよいのであって、保存書類の提出の機会は税務調査における場合だけでなく、国税不服審判所における審査請求や裁判所における取消訴訟の審理の過程でも可能であり、そこで控除すべき額の確認がなされれば足りるのであって、帳簿等を保存していても税務調査に対しその提出ないし開示を拒否する場合も同条項にいう『保存しない』場合に該当するとの被控訴人主張は、恣意的な拡大解釈というべきである。」を加える。

第三当裁判所の判断

一  当裁判所も控訴人の請求は理由がないものと判断する。

そして、その理由は、以下のとおり、訂正・付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の「第三 争点に対する判断」に説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三三頁五行目の「これに反する」から六行目末尾までを「原審及び当審における控訴人の供述は、他の証拠に照らして採用できず、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。」に、同頁七行目の「本件係争年分」を「本件係争各年分」にそれぞれ改め、同行の「所得税及び」の次に「本件係争各年期分の」を加える。

2  原判決三四頁一行目の「右」を「同月」に改める。

3  原判決四〇頁八行目から九行目にかけての「るから、被告は、やむを得ず」を「、被控訴人は、このような状況の下では、控訴人の所得金額を実額をもって把握することは不可能であったため、やむを得ず、」に改める。

4  原判決四一頁二行目の「行ったというべきである」を「行ったというべきであって、これについての必要性が優にあったということができる」に改める。

5  原判決五二頁五行目から同五三頁四行目までを次のとおりに改める。

「1 消費税法三〇条一項は事業者の仕入れに係る消費税額の控除を規定しているが、同条七項は、大量反復性を有する消費税の申告及び課税処分において、課税仕入れに係る消費税額の迅速適正な把握のために、当該課税期間の課税仕入れに係る法定帳簿又は法定請求書等を保存しない場合には、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除き、当該保存がない課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については同条一項の規定を適用しないものとしている。そして、消費税法施行令五〇条一項によれば、同法三〇条一項の適用を受けようとする事業者は、同条七項に規定する帳簿等を整理し、帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日から、請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から、それぞれ二月を経過した日より七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならないこととされているのである。

2 これらの法令を按ずるに、商法における帳簿等の保存年限が一〇年であるのに、消費税法では税務当局において課税権限を行使しうる最長年限である七年とされていることや保存場所を納税地等に限定して、その整理を要求していることからすれば、右法令の趣旨は、第一義的には、課税仕入れに係る消費税額の調査・確認を行うための資料として右帳簿等の保存を義務づけ、その保存を欠く課税仕入れ等に係る消費税額については仕入税額を控除しないこととしたものと解される。

したがって、かかる法令の趣旨に照らせば、消費税法三〇条七項に規定する保存というのは、右帳簿等が事業者の支配下に存在しているということだけではなく、法令の規定する期間を通じて、法令所定の場所において、適法な税務職員の税務調査によりその内容を確認することができる状態での保存を継続していることを意味すると解するのが相当というべきであり、適法な税務調査に際し、税務職員からその提示・閲覧を求められたときは、ただちに提示できる状態で保存しておく必要があることになる。そして、この意味での保存の有無は、課税処分の段階のみならず、不服審査または訴訟の段階においても主張・立証を拒否すべき理由はないけれども、右法令の趣旨からして、最終的に課税処分が確定するまでのいずれかの段階において右帳簿等の存在が確認ができさえすれば常に仕入れ税額の控除を認めるべきであるとの趣旨に思われる控訴人の主張は採用しがたいということになる。

3 これを、本件においてみるのに、前示認定事実によれば、本件においては、坂口調査官が控訴人に対して、再三再四、本件仕入税額控除に係る帳簿書類等の提示を求めたにもかかわらず、控訴人が何ら正当な理由なくその提示を拒否し、そのために、右税務職員においてその内容を確認することができなかったという事情が認められるので、その当時において、控訴人が、法定の要件を充たした状態での法定帳簿、法定請求書等を保存してなかったことが推認できる。

もっとも、控訴人は、当審において、法定請求書等に該当するものとして書証(甲一〇ないし一二号証)を提出し(弁論の全趣旨により、当該書証以外に法定帳簿、法定請求書等として検討すべきものはないようである。)、右坂口調査官による税務調査の際には保存していたし、以降も保存していた旨供述するが、他の証拠並びに弁論の全趣旨に照らし、右供述はこれをにわかに措信しがたいというべく、他に右推認を左右するに足りる証拠はない。

4 右によれば、本件は、消費税法三〇条七項所定の帳簿書類等を『保存しない場合』に該当するというべきであるから、同条一項による仕入税額控除を適用することができず、この点に関する控訴人の主張は採用できない。」

二  よって、控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 山脇正道 裁判官 村上亮二 裁判官髙橋正は、転勤のため、署名押印することができない。裁判長裁判官 山脇正道)

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