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高松高等裁判所 平成12年(う)211号 判決 2001年4月12日

主文

本件各控訴を棄却する。

理由

本件各控訴の趣意は、弁護人友澤宗城(主任)及び同高田義之共同作成の控訴趣意書に記載のとおりであり、これに対する答弁は検察官井越登茂子作成の答弁書に記載のとおりであるから、これらを引用する。

各論旨は、要するに、原判決は、被告人株式会社Y1(組織変更前の商号「有限会社a」。以下「被告会社」という。)は、愛媛県知事から建設廃材等の産業廃棄物の収集、運搬及び中間処分(焼却及び破砕)について許可を受け、産業廃棄物の処理等を業として営んでいた者、被告人Y2(以下「被告人Y2」という。)は、本件当時被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していた者であるが、被告人Y2は、同社の従業員2名と共謀の上、同社の業務に関し、同県知事による事業範囲変更の許可を受けないで、平成8年8月23日ころから同年9月5日ころまでの間、前後24回にわたり、同社の産業廃棄物処理施設内において、業者から処分委託を受けた産業廃棄物合計91・1トンを処分代金合計18万2000円で受け入れた上、この産業廃棄物の埋立処分をし、もって、許可を受けないで事業の範囲を変更して産業廃棄物の最終処分の事業を行ったものである旨認定したが、原判決が埋立処分と認定した被告人Y2らの行為は、中間処分業者に許された産業廃棄物の保管に過ぎないから、これを埋立処分と認定して被告人両名を有罪とした原判決には、埋立処分がないのにこれがあるものとした事実誤認又は産業廃棄物の埋立処分に関する解釈を誤った法令適用の誤りがあり、これらは判決に影響を及ぼすことが明らかである、というのである。

そこで、記録を調査し、当審における事実取調べの結果をも参酌して検討するに、被告人Y2らの行為の内容やこれによって生じた本件現場の状態等については、原判決がその「補足説明」の二項及び三項において詳細に認定するとおりであって、そこで認定された事実関係によると、被告人Y2らの行為は、本件産業廃棄物を環境中に排出したものとして最終処分である埋立処分に当たることはこれを優に肯認することができる。当審における事実取調べの結果によっても、この判断は動かない。被告人の原審及び当審における各供述中、前記認定・判断に抵触する部分は原判決摘示の関係証拠と対比して信用することができない。

以下、所論にかんがみ、更に説明を補足する。

所論は、産業廃棄物の最終処分である埋立処分と中間処分業者が処分のために行う産業廃棄物の保管とを区別すべきであるとし、<1>本件は産業廃棄物を暫定的に一定の場所に置いたに過ぎないから、最終処分ではなく保管に当たる。<2>本件は、本件処理施設の設備や人員が産業廃棄物の搬入量の急増に対応しきれなくなったため、設備や人員が整うまで産業廃棄物を置いていたに過ぎないのであって、将来、設備や人員が整えば、中間処分する予定であったから、このように中間処分の可能性があり、中間処分の予定がある場合には、最終処分ではなく保管に当たる、<3>本件で埋立処分したとされる産業廃棄物約91・1トンは、わずか大型トラック10台分程度にすぎないのであって、量的見地からして保管というに何ら妨げはなく、この程度の量が保管と認められないなら中間処分業は成り立たないなどと主張する。

しかしながら、<1>については、前記した被告人Y2らの行為によって生じた本件現場の状態は、所論がいうように産業廃棄物を中間処分のため暫定的に一定の場所に置いたという程度に到底とどまるものではなく、これが最終処分である埋立処分に当たることは明白であるし、<2>についても、仮に被告人Y2らに将来、設備や人員が整えば処分する予定があったとしても、本件当時、本件処理施設に現実にこれらの産業廃棄物を中間処分できる処理能力がなく、また、適正な処分又は再生を行うのにやむを得ない期間内に中間処分ができるような具体的な処分計画等ができていたわけでもないことからすると、所論がいう予定というのは、将来設備や人員が整った段階に至れば処分するという不確定なものに過ぎないのであって、所論指摘の点が量刑において考慮されることは格別、これによって埋立処分であるという前記認定・判断はいささかも揺るがない。<3>についても、本件現場の状況や本件処理施設の処理能力に照らすと、これまた前記認定・判断を左右するものではない。そうすると、被告人Y2らの行った行為を中間処分業者に認められた産業廃棄物の保管であるとみることはできないのであって、所論はいずれも採用することができない。

その他、所論にかんがみ検討しても、原判決には所論の事実誤認や法令適用の誤りはない。各論旨は理由がない。

おって、原判決はその「法令の適用」の項において、被告人Y2の裁判時における罰条について刑法60条の適用を遺脱しているが、判文に照らしこれを適用しているものとみられるから、右遺脱は判決に影響を及ぼさない。

よって、刑訴法第396条により本件各控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

(編注) 第1審判決は縦書きであるが、編集の都合上横書きにした。

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