高松高等裁判所 平成13年(行コ)15号 判決 2002年2月15日
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が,控訴人に対して平成12年12月28日付け××議収第×××号の×「情報公開請求却下通知書」でなした情報公開請求却下決定処分を取り消す。
第2事案の概要
下記のとおり,付加するほか,原判決1頁18行目ないし同4頁3行目記載のとおりであるから,これを引用する。
1 前提となる事実等の補足(文末に特記事項のある以外は争いがない。)
本件テープは,被控訴人の事務局の職員が,被控訴人の議長の職務命令を受けて,地方自治法123条所定の会議録を作成するため,作成(録音)した。本件テープは,地方自治法239条1項所定の「物品」であり,職員の私物ではない。本件テープのような前記会議録作成のための録音に使用した磁気テープは,通常は,会議録作成後に消去され,再利用される(弁論の全趣旨)。
2 当審での新たな争点
本件処分には,処分理由を付さない違法があるか。
(1) 控訴人の主張
控訴人が公開請求した「情報」は,磁気テープであるのに,本件処分を記載した通知書には,「この場合の公文書とは会議録を意味する」とあり,本件テープの公開請求の内容についての判断が示されてない。
(2) 被控訴人の主張
控訴人の前記主張は争う。前記通知書には,処分理由として,本件テープが公文書に当たらない旨を記載している。
第3当裁判所の判断
1 本件テープと本件公開条例2条2号の「情報」
当裁判所も,本件テープは,本件公開条例2条2号所定の「情報」に該当しないと判断する。その理由は,次のとおり補足するほか,原判決4頁5行目ないし16行目の説示と同一であるから,これを引用する。
(補足判断)
(1) 土庄町議会事務局処務規程(昭和54年7月17日議会訓令第1号)には,「決裁」及び「閲覧」について定めた規定はないが,その6条は,同処務規程に定めるもののほか,事務処理については町の例に準ずるとしており(乙3),土庄町処務規則(昭和42年2月1日規則第1号)10条1号は,「決裁」について,町長等の決裁権者が,「その権限に属する事務の処理につき,最終的に意思決定を行うことをいう。」旨定義している(乙4)。土庄町処務規則にも,「閲覧」を定義する規定はないが(乙4),一般には,閲覧とは,当該文書等に係る事務を所掌する上位の職員等が,その内容を確認することをいうものと解される(乙1)。
本件テープについて,上記の意味での「決裁」又は「閲覧」手続が終了したことを認めるべき証拠はない。控訴人は,権限を有する者(決裁権限者)の指示によって収録されたものである以上,決裁の手続を経たものといえると主張するが,議会事務局の職員が,議長の職務命令に基づき本件テープの録音をしたというだけでは,本件テープについて上記の意味での議長の決裁がなされたということはできないから,控訴人の前記主張は採用できない。
したがって,本件テープは,本件公開条例2項2号所定の公開の対象となる「決裁又は閲覧の手続が終了し」た「磁気テープ」に該当しない。
(2) 前記引用の原判示のとおり,本件テープのような町議会の会議録を作成するために議事内容を録音した磁気テープは,その性質上,そもそも,決裁又は閲覧手続を経ることが予定されておらず,実際にもこのような手続がなされることは想定し難い。したがって,前記のような磁気テープについては,決裁又は閲覧手続が終了して公開の対象となることは,通常,あり得ないことになるが,本件公開条例2条2号は,その文言からも,「決裁又は閲覧の手続が終了し」た情報のほかに,「決裁又は閲覧手続の対象とならない又はこれらの手続を要しない情報」をも公開の対象とする趣旨とは解されないから,前記のようにいわざるを得ない。
2 処分理由の付記
本件公開条例7条1項,3項は,同条例に基づく情報の公開請求に対し,実施機関が公開しない旨の決定をしたときは,請求者に対し,その理由を付記した書面で通知することを定めている(甲1)。本件についてこれを見ると,前記引用の原判決記載のとおり,被控訴人が,控訴人に対して本件処分を通知した書面(12議収第193号の2)には,「本件テープは情報公開の対象となる公文書には当たらない」旨の記載がある。ここで「公文書」としたのは,本件公開条例2条2号にいう「情報」の意味であることは,前後の文脈から明らかである(甲2)。以上によれば,前記通知は,処分理由を付記したものといえる。
したがって,本件処分(の通知)には,処分理由の付記を欠く違法はない。
3 結論
以上の次第で,本件処分は適法と認められるから,控訴人の本訴請求は,理由がないものとして棄却すべきである。
よって,これと同旨の原判決は相当で,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井土正明 裁判官 杉江佳治 裁判官 佐藤明)