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高松高等裁判所 平成15年(ネ)287号 判決 2004年1月30日

控訴人 A株式会社

上記代表者代表取締役 甲

控訴人 B株式会社

上記代表者代表取締役 乙

控訴人 甲

控訴人 乙

上記4名訴訟代理人弁護士 松本恒雄

同 高田義之

同 東俊一

同 中川創太

被控訴人 国

上記代表者法務大臣 野沢太三

上記指定代理人 横山和可子

同 小松一利

同 富﨑能史

同 中川義信

同 鈴木久市

同 友澤哲郎

同 倉本幸芳

主文

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1  請求

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は控訴人らに対し、それぞれ100万円を支払え。

3  仮執行宣言

第2  事案の概要

1  事案の概要は、以下のとおり附加訂正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」、「第3 前提事実」及び「第4 争点」各記載のとおりであるから、これを引用する。

なお、略語は、原判決の使用するものを使用する。

2  附加訂正部分

(1)  原判決7頁16行目「認めることになり」の次に「、課税行政手続の法律関係において国民(納税者)の財産権、私生活の平穏などプライバシー権、自己負罪拒否特権が不当に侵害されたといえるのであって」を加える。

(2)  同13頁16行目「利益である。」の次に「本件において、今治税務署が税務調査を行う必要性が高かったことは、控訴人らの権利侵害性を否定する理由たり得ない。そして、法人税法156条に違反したこと自体により、国家賠償法1条にいう違法性を十分具備するというべきである。控訴人らが、税務署員の質問検査に応じた際、法人税法ほ脱の罪を免れられるかもしれないとの思惑を抱いていたか否かは、違法性の程度の認定には無関係である(そもそも、控訴人らは、上記のような考えを抱いてはいなかった。)。」を加える。

第3  当裁判所の判断

1  争点1について

(1)  認定事実

先に引用した前提事実及び証拠(甲5の1、5の2、14ないし16、21、22、25ないし38、55ないし60、72、乙3の1、3の2、4ないし12、14ないし16、18の1~3、控訴人乙本人、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

ア 控訴人ら2社の売上除外金を定期預金にするなどして管理してきた控訴人乙は、脱税について新聞報道等があるたびに不安になっていたところ、平成6年2月ころ、上記定期預金のうち、P銀行今治支店に同控訴人の姪Q名義でしていた定期預金が満期となったことから、名義書換えのために同支店に赴いたところ、同支店職員から、高松国税局が来ているので、今は名義書換えなどはしない方がよいと言われた。

控訴人甲らは、控訴人ら2社が高松国税局の調査対象になっているかも知れないと不安になり、同年3月ころ、R銀行波止浜支店にも問い合わせたところ、控訴人ら2社が対象ではないと思うが調査はあった旨の回答を得た。さらに、同年4月6日、高松国税局の査察が控訴人Bともう1社を調べている旨の匿名の手紙を受け取ったことから、同月7日、控訴人甲らは丁税理士に相談した。控訴人甲は、丁税理士に、自首する方法はないかを尋ねたところ、同人から修正申告をする方法があると聞いたため、修正申告をすれば、重加算税の賦課を免れることができるかもしれないし、法人税のほ脱についても、罪が軽くなるか、罪を問われなくなるかもしれないなどと考えて、修正申告をすることにし、同月9日、丁税理士にその旨を依頼した。

これを受けて、丁税理士は、同月11日午前11時30分ころ、今治税務署の戊副署長を訪ね、一事業年度約5000万円の売上除外をしている会社があること、その会社から修正申告をしたいとの相談を受けていること、その会社は控訴人ら2社であることを告げた。

イ 戊副署長は、同月12日午前9時ころ、C統括官及びD統括官と対応を協議し、事実の確認などのために税務調査を実施し、今治税務署職員を控訴人ら2社の本店事務所に行かせることにして、同日昼ころ、C統括官とD統括官は、E調査官らに控訴人ら2社に対する税務調査を指示した。

そして、丁税理士立会いの下で本件税務調査が実施された。E調査官らは、控訴人甲らに対して、修正申告を申し出た事業年度についての売上除外の方法や金額、売上除外の動機、修正申告を決意するに至った動機等について質問するなどした。

その際、E調査官らは控訴人甲らに対して供述や書類の提出を執拗に求めたことはなく、控訴人甲らは、E調査官らの質問に対して率直に答え、隠すことなく説明し、帳簿類等についても提出を拒んだりはしなかった。その際、E調査官らは、本件資料のうち、①ないし④はいずれも原本を預かったことから預かり証を作成し、⑤ないし⑦については、いずれも原本の写し(コピー)をもらい受けたため、預かり証には記載しなかった。

E調査官らは、同日午後3時30分ころ調査を終了し、午後4時過ぎころ、本件資料を今治税務署に持ち帰り、C統括官及びD統括官に復命し、本件資料を渡した。

C統括官は、同復命を聞いた上で、査察による調査が必要な案件であると判断し、その後、G総括主査に電話し、控訴人ら2社が過少申告している事実がある旨伝え、本件資料のうち⑤ないし⑦についてファクシミリで送信した。

ウ 一方、調査査察部では、平成6年2月ころから、控訴人ら2社を対象として、P銀行今治支店ほか、今治市内所在の金融機関をはじめとして相当数の金融機関の調査を行っていたが、同年3月22日には、控訴人ら2社に対する内てい立件決議をした。そして、その後も内偵調査により資料を収集し、同年4月8日までには、広島国税局調査査察部長及び東京国税局査察部長に対し、H及びI株式会社の課税事績の収集(回報希望日平成6年4月11日)、J有限会社の直近4年分の確定申告書外の徴求(同平成6年4月11日)、並びに、控訴人甲らの娘及びその配偶者の住民票及び課税事績の収集等(同平成6年4月8日)を嘱託して、その回報を受けていた。

さらに、同年4月11日から12日にかけて、調査査察部は、M査察官を今治市方面に派遣し、同月12日付けで控訴人甲及び丙の住民票等を入手して、持ち帰った。

そして、調査査察部は、上記イのとおり、同月12日午後4時過ぎ以降、本件資料のうちの⑤ないし⑦について今治税務署からファクシミリで送信を受けた。

調査査察部は、上記のとおり、控訴人らが調査査察部の動きを察知して修正申告しようと考えていることを知り、罪証隠滅のおそれがあると判断し、早急に令状請求をするための作業を進め、同月13日、控訴人Bを嫌疑者として、本件許可状請求をなし、同日、同許可状の交付を受けた。その際、上記M査察官の持ち帰った控訴人甲及び丙の住民票等が疎明資料として使用され、同時に、本件資料のうち⑥預金メモ5枚のうちの1枚が、N農業協同組合を臨検場所とすることの疎明資料として使用された。

なお、調査査察部は、本件資料のうち、①ないし④について、今治税務署が預かっていることは聞いたが、これらの内容については検討する機会はなく、本件許可状請求の資料とすることもなかった。

(2)  上記認定事実についての補足説明

ア 控訴人らは、平成6年3月22日付け内てい立件決議書は後日作成されたものであり、同日の内てい立件決議はなかった、そして、同年4月11日ないし12日の段階では、調査査察部は控訴人ら2社を嫌疑者とする臨検・捜索・差押に必要な資料は全く収集できておらず、本件税務調査により今治税務署に持ち帰られた本件資料のうち、①ないし⑦全てについて、調査査察部が内容を検討し、当該資料及びこれらに基づいて急遽金融機関等から取り寄せられた資料が主な疎明資料とされて、本件許可状請求が行われた旨主張する。

しかし、まず、高松国税局調査査察部長の作成に係る調査嘱託書及びこれに対する広島国税局調査査察部長等の作成に係る調査回報書(乙10ないし12)の各日付に照らすと、平成6年3月22日には、内てい立件決議があったことが認められる。

また、同年2月ころから3月ころにかけて、P銀行今治支店、R銀行波止浜支店から、控訴人甲らが査察が動いているとの情報を得ていることや、同内容の匿名の手紙が控訴人甲らに対して送付されていることなどからしても、同年2月ころから控訴人ら2社を嫌疑者として調査査察部による内偵調査が行われていたことは明らかである。

本件許可状請求における嫌疑事実は、隠ぺい所得額・ほ脱税額ともに大きく、複数事業年度にわたるものであり、また、臨検場所も少なくとも10か所以上に及んでいることが明らかであるから、その嫌疑事実や臨検場所の特定等には相当の時間が必要であり、請求に必要な疎明資料も相当の分量になるものと推測される。しかるに、本件税務調査の結果、E調査官らにより今治税務署に本件資料が持ち帰られたのが平成6年4月12日午後4時過ぎころであり、翌13日には本件許可状請求がなされていることからすると、控訴人ら主張のように、調査査察部が本件資料の①ないし④の内容を検討し、急遽、金融機関等から疎明に必要な資料を取り寄せて嫌疑事実を構成した上でその疎明資料を作成できたものとは時間的にみて考え難く、すでに入手していた資料に基づいて本件許可状請求をしたものと推認するのが相当である。

そして、今治税務署に持ち帰られた本件資料のうち①ないし④については、上記のとおり検討する時間的な余裕が乏しいと認められること、本件資料は売掛金発生時を基準にして記載されたものである(甲14、21、22、控訴人乙本人)のに対し、本件許可状請求における嫌疑事実の隠ぺい所得額は、実際に売上除外分の手形等が換金され現金化された時点を捉えて認定した額で算定したものであること(甲21、弁論の全趣旨)などに照らすと、これらの資料を調査査察部において検討する機会はもたれなかったものと認めるのが相当である。

上記のとおり、調査査察部は、内偵調査の段階において、各種金融機関に対する調査を行っていたものと認められ、控訴人Bあるいは関係者名義の普通預金元帳等を入手していたことが認められるから、これに基づいてその入金額を精査し、本件許可状請求における嫌疑事実の概要を把握することは十分に可能であったというべきである。

控訴人らは、P銀行今治支店の控訴人B名義及び控訴人乙名義の各普通預金口座への手形による入金の中には、集中取立手形入金の方法が用いられたため振出人が不明で、入金者が特定できないものが多数あり、しかも隠ぺい所得の疎明に当たり現金入金分と利息を特に除外していることに照らすと、控訴人らが今治税務署に提出した本件資料すべてを疎明資料として利用することなしに本件許可状請求ができたとは考えられないと主張する。しかし、これらはいずれも売上除外金を入金するための簿外の預金口座であり(控訴人乙本人、弁論の全趣旨)、さらに、手形による入金である以上、一応は控訴人Bの取引関係に基づく入金であると考えることができるから、本件許可状請求の段階では、当該入金者を厳密に特定できなくとも差し支えはないものというべきである。また、控訴人ら提出の資料をすべて利用しても、本件許可状請求における隠ぺい所得金額を計算できるとは直ちに認め難い。

さらに、本件資料のうち⑤ないし⑦について、⑥の預金メモのうちの5枚目を、N農業協同組合を臨検場所とすることの疎明に用いたことは、被控訴人も認めるところであって、上記認定事実のとおり認められるが、その他の資料については、これを本件許可状請求の疎明資料として使用したと認めるに足りる証拠はない。

本件許可状請求の内、S農業協同組合に対する臨検・捜索・差押許可状についても、甲13号証の記載によれば、同金融機関については、控訴人Aの平成5年1月期分の確定申告書添付の預貯金等の内訳書に記載されたものであって、調査査察部においては、本件資料なしに、控訴人ら2社の売上除外金の管理先として十分把握できる金融機関であったこと、及び、同金融機関に対する預金者名義であるTについては、その氏名からして、甲15号証中の控訴人Aの商業登記簿謄本によれば、平成4年3月28日から少なくとも平成6年4月12日まで同社の取締役であったWの親族であると推測されること、上記のとおり、調査査察部は、内偵調査の段階において、今治市内の各種金融機関の内の相当数の調査を行っていたのであって、これらの事実によれば、調査査察部が、S農業協同組合波止浜支所の営業所及び同附属建物を臨検すべき場所として臨検、捜索及び差押えを請求するにつき、本件資料を使用したと認めることはできないというべきである。

イ また、今治税務署から、調査査察部に対して、控訴人ら2社につき巨額の脱税の可能性があることについて連絡がされたのは、平成6年4月12日午後4時過ぎに、C統括官がE調査官らから本件税務調査の復命を受け、本件資料を受け取った後に、G総括主査に対して連絡がされたころであると認めるのが相当である。

この点につき、上記(1)のとおり、M査察官が、平成6年4月12日、今治市役所等に直接赴いて、控訴人甲の住民票等を入手したことや、その前日である同月11日に、今治税務署に丁税理士が修正申告の相談をしていること、控訴人甲の住民票等は、いずれも送付嘱託によることなく、窓口での交付請求により取得されていることや、M査察官が入手した住民票等が、翌13日の本件許可状請求に疎明資料として用いられている事実は認められる。

しかしながら、上記アのとおり、本件許可状請求の疎明資料は、本件資料⑥の預金メモのうち1枚を除いて、本件税務調査以外で入手ないし作成した資料であったこと、乙9、12号証及び弁論の全趣旨によれば、調査査察部において、嫌疑者等の住民票等を取得する場合には、送付嘱託の方法はとらずに交付請求の方法によることとされており、当該国税局管外に住民票等が存する場合には、住民票等所在地の国税局査察部長宛に徴求を嘱託する取扱がなされていること、平成6年4月11、12日は、乙7ないし9号証により、調査査察部が、広島国税局査察部長及び東京国税局査察部長宛にした調査嘱託の回報希望日(平成6年4月8日ないし同月11日)とも概ね一致していることからして、調査査察部が、そのころを調査資料収集の一応の目処としていたと認められることに加えて、甲5号証の1及び2、29、30、32号証、乙5、16号証によれば、M査察官は、同月8日にG総括主査の指示を受けた上で、同月11日、12日に今治市内に出張し、控訴人甲の住民票等を取得したものと認めるのが相当である。

したがって、上記事実によって、今治税務署から、調査査察部に対して、控訴人ら2社につき巨額の脱税の可能性があることについて連絡がされたのが、平成6年4月12日午後4時過ぎより以前であると認めることはできない。

そして、甲5号証の1及び2、29、30、32号証、乙5、16号証によれば、上記のとおり認定するのが相当である。

(3)  違法性について

上記事実を前提として、違法性について判断する。

ア 犯則調査手続は、形式的には税務行政上の手続ではあるが、犯則事件の証憑を収集して、犯則事実の有無や犯則者を確定するために認められた、いわば刑事手続に準ずる手続である。

これに対し、税務署職員が法人税に関する調査のために行う質問検査権(法人税法153条ないし155条)の行使を中心とする税務調査は、租税の公平かつ確実な賦課徴収という行政目的をもって、課税要件事実を認定し、課税処分を行うために認められた純然たる行政手続である。

このように、両者はその目的、機能を異にしており、しかも上記質問検査権については、これに応じない者に対して、罰則の適用を伴うものであるから(同法162条2号)、かかる行政目的を逸脱して、同法所定の調査の場合とその目的、機能を異にする犯則調査又は犯罪捜査のための手段として上記質問検査権を行使し、税務調査に藉口して証拠資料を収集することは、憲法35条、38条の法意に照らし、許されないものといわなければならない。法人税法156条は、この法理を明確化したものと解される。

もっとも、法人税法156条の趣旨がこのようなものであるならば、税務調査中に犯則事件が探知された場合に、これが端緒となって収税官吏による犯則事件としての調査に移行することをも禁ずる趣旨のものとは解されない(最高裁昭和51年7月9日判決・裁判集刑事201号137頁参照)。また、税務調査によって得られた資料あるいは情報を、犯則調査のために用いること自体は禁止されていないというべきである。

イ そこで、本件税務調査が法人税法156条に違反するものであったか否かにつき検討する。

上記(1)のとおり、今治税務署から調査査察部に対し、控訴人ら2社に関する修正申告の相談があった旨の連絡がされたのは、本件税務調査が終了した後である平成6年4月12日午後4時過ぎ以降であり、その際、C統括官は、調査査察部のG総括主査に対し、本件税務調査で得た資料の一部と情報を提供し、調査査察部は、その資料の一部を本件許可状請求の疎明資料として利用したことが認められる。

すなわち、そもそも、上記認定事実のとおり、本件税務調査には、戊副署長が丁税理士から相談を受けた内容からして、税務調査の必要性が認められるところ、本件税務調査を行うことは、事前に丁税理士に連絡されている上、E調査官らによる質問検査権の行使も、丁税理士の立会いの上で行われ、調査方法に問題があったとは認められないし、帳簿類等についても、控訴人らから、拒否されることなく提出されたものであって、本件資料⑤ないし⑦についても、E調査官らがその交付を執拗に求めた事情はうかがえないこと、E調査官らにおいて、本件税務調査時に、控訴人ら2社について、調査査察部の調査の対象となっていると認識していたと認められる証拠はないこと、本件許可状請求の際の疎明資料は、本件資料⑥の預金メモの内1枚以外は、本件税務調査以外の方法により調査査察部が入手ないし作成したものであって、C統括官からG総括主査に対してなされた情報提供及び資料の送付は、本件許可状請求にはほとんど役立っていないと推認されること等を総合すると、本件税務調査について、質問検査権を、犯則調査の手段として行使し、又は、税務調査に藉口して犯則事件の証拠資料を収集した事実は存在したとは認められない。

調査査察部が、本件許可状請求を、平成6年4月13日に行ったのは、その前日、今治税務署から、控訴人ら2社が修正申告を行う意思があり、本件税務調査を行ったとの連絡を受け、控訴人ら2社に罪証隠滅の恐れがあると判断した結果であると認めるのが相当である。

控訴人らは、C統括官が、E調査官らに本件税務調査の実施を指示した時点において、その調査結果次第では調査内容や入手資料を査察の犯則調査のために提供する可能性があったことを認めていることや、同人が、E調査官らから復命を受けた直後に、G総括主査に対して、控訴人ら2社についての情報を提供していること、C統括官が、E調査官らに対して、控訴人ら2社に対する継続調査の予定を指示していないし、本件税務調査で入手した本件資料につき、C統括官は目を通していないこと自体が、今治税務署が、調査査察部の行う犯則事件の調査に協力する目的が存したことの証左であると主張する。

しかしながら、税務調査中に犯則事実が明らかになった場合、これを査察担当部門に通報することなどにより、税務調査が犯則調査の端緒となるという事態が許容されることは上記のとおりであるから、C統括官が、丁税理士からの相談内容から、税務調査により、控訴人ら2社の過少申告の程度や態様の詳細が明らかになった段階で、査察に対する通報を行う可能性を考えていたことや、本件税務調査によって、過少申告の程度の大きさを把握して調査査察部に通報したことは、合理的な行動であると評価できる。また、継続調査の指示については、担当調査官が本件税務調査の内容を検討するなどした上でなされるものとしても不自然ではなく、本件において、C統括官から継続調査の指示がなかったことや、同人自身が本件資料の検討をしていないことをもって、今治税務署において、税務調査を犯則事件の資料収集に利用する目的を有していたことの証左とはならない。そして、上記のとおり、調査査察部が、本件許可状請求に際し、本件税務調査で得られた資料の一部を疎明資料として使用したことについては、特段問題はないというべきである。

以上のとおりであって、本件税務調査について、違法性があるとは認められない。

2  その他の争点について

以上のとおりであって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人らの請求は理由がない。

第4  結論

よって、原判決は、結論において相当であるから、本件控訴をいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松本信弘 裁判官 吉田肇 裁判官 種村好子)

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