高松高等裁判所 平成16年(行コ)16号 判決 2004年12月16日
控訴人 甲
被控訴人 高松税務署長
水口金男
同指定代理人 横山和可子
同 倉本幸芳
同 和田哲治
同 中川義信
同 栗岡和男
同 岡田知美
同 吉岡義仁
同 本田隆
同 浜渕一男
同 礒野務
主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は、課税処分を取り消し、不動産差押処分を取り消せ。
( 控訴人の控訴状記載の控訴の趣旨第2項は、上記のとおりであるが、正確には、原判決「事実及び理由」第1の1及び2記載のとおりの判決を求めるものと解される。)
3 訴訟費用は、第1、第2審とも被控訴人の負担とする。
第2 事案の概要等
1 事案の概要
原判決「事実及び理由」第2の冒頭部分(2頁8行目から23行目まで)記載のとおりであるから、これを引用する。
2 前提事実、争点及び争点についての当事者の主張
次のとおり補正し、後記3のとおり当審における当事者双方の補充主張を付加するほか、原判決「事実及び理由」第2の1及び2記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決4頁9行目の「行った」の次に「(以下『本件異議決定』という。)」を加え、12行目の「棄却した。」を「棄却する決定をした。」に、14行目から15行目及び17行目から18行目の各「国税不服審判長」をいずれも「国税不服審判所長」に各改め、21行目の「につき、」の次に「国税通則法104条1項の規定により併合審理した上、」を加え、25行目から末行の「別紙1物件目録記載の土地田」を「別紙1物件目録記載の田(ただし、被控訴人は現況畑としているところ、この点は、控訴人も特に争ってはいない。)」に改める。
(2) 同5頁1行目から3行目の括弧内を「以下『Fの土地』といい、上記現況宅地部分92.59平方メートルを含むFの土地555平方メートルの全体を指すときは『Fの全体土地』という。」に改め、4行目の「裁決を行った」の次に「(以下『本件裁決』という。)」を加え、8行目及び18行目から19行目の各「国税不服審判長」をいずれも「国税不服審判所長」に、11行目の「土地(本件各土地)」を「Dの土地、Eの土地及びFの土地(以下『本件各土地』という。)を含む土地」に、18行目の「それぞれ変更する旨の異議決定」を「とする旨の本件異議決定」に、21行目の「変更した」を「とする旨の本件裁決をした」に各改める。
(3) 同6頁5行目冒頭から7行目までを次のとおり改める。
「なお、控訴人、丙及び丁が本件相続により取得した財産の内容及び評価額は、本件各土地の評価額を除き、控訴人と被控訴人との間に争いがない。」
(4) 同16行目の「本件各土地のうちの水田」を「本件各土地」に、21行目の「本件各土地のうちFの土地」を「Fの全体土地」に各改める。
(5) 同8頁10行目の「されることとされている」を「することとされている」に改める。
(6) 同9頁8行目の「本件土地」を「本件各土地」に、19行目の「公示価額、精通者意見価額等」を「公示価格、精通者意見価格等」に、22行目の「次にような手順」を「次のような手順」に各改める。
(7) 同11頁1行目の「その具体的相続税評価額は、相当額は」を「その具体的な相続税評価額は、」に、7行目の「価額に基づいて」を「価額(最低売却価格3950万円を同土地の実測数量567.96平方メートルで除して得られた1平方メートル当たり6万9547円)に基づいて」に、22行目から23行目の「価格算定に№104の土地」を「価格を算定するに当たり№104の土地の価格」に各改める。
(8) 同12頁5行目の「面しているぎないから」を「面しているにすぎないから」に改め、15行目の「下落しているから、」の次に「上記固定資産評価額をもって」を加え、17行目の「被告」から18行目の「評価額である旨」までを「被控訴人の評価は水田として営利不可能な評価によっている旨」に改める。
(9) 同13頁20行目の「本件各土地のうちの水田についての」を削る。
(10) 同15頁7行目から8行目の「被告の本件裁決」を「本件裁決」に、17行目の「別紙1物件目録記載の土地」を「Fの全体土地」に各改める。
(11) 同16頁4行目の「本件各土地のうち水田についての」及び15行目の「本件各土地のうち水田については」を各削り、24行目の「完納しなければならない」を「完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押さえなければならない」に改める。
(12) 同17頁2行目の「本件課税処分」から3行目の「送付したが」までを「督促状を送付して、本件課税処分により控訴人が納付すべき国税を納付するよう督促したが」に、11行目の「取り消されるべきだから」を「取り消されるべきであるから」に、14行目の「目的とし」を「目的とするのに対し」に、23行目の「Fの土地全部」を「Fの全体土地全部」に各改める。
(13) 同18頁1行目の「Fの土地」から2行目の「なされた」までを「Fの全体土地の控訴人の持分3分の1についてなされた」に改め、13行目から18行目までを次のとおり改める。
「 本件において、被控訴人は、乙の相続財産のうち、滞納税額を満足させるに足りるものの中から、複数の財産ではなく、Fの全体土地の控訴人の持分3分の1を選択して差し押さえたのであり、同土地は1筆の土地で不可分であるから、その評価額が控訴人の滞納税額を超過していたとしても、本件滞納処分が違法ということはできず、控訴人の上記主張は失当である。」
(14) 同19行目の「Fの土地」を「Fの全体土地」に改める。
(15) 同19頁4行目冒頭から7行目の「計算した」までを「Fの全体土地を差し押さえるにしても、それは、本件裁決によって変更された控訴人、丙及び丁の相続税額である2324万4000円を、同土地の路線価(13万5000円)に換算率80分の100を乗じて得られた16万8750円で除した」に改める。
(16) 同43頁(別紙7の2)及び同44頁(別紙7の3)の各土盛費欄の「立法メートル」をいずれも「立方メートル」に改める。
3 当審における当事者双方の補充主張
(1) 本件各土地の評価方法及び評価額について(争点(1))
ア 控訴人の主張
以下の点からして、本件課税処分は違法である。
(ア) 控訴人が相続した相続財産は、従来、水稲栽培を継続している水田であり、被相続人死亡後も控訴人が水田として耕作し、維持している。
ところで、高松市L事業における区画整理地区の減歩率は平均して15.58パーセントであった(もっとも、現在のところ、本件各土地につき区画整理の計画はない。)。
したがって、本件各土地の評価に当たっては、上記減歩率を控除すべきである。
(イ) 本件各土地は、市街化区域に位置し、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であるとしても、L事業の対象から外れた土地である上、近接の市街化調整区域に位置する土地でも、建築確認申請等は不可能でなく、許認可事項において本件各土地の場合とほとんど差がないのである。まして、市街地中心部においてさえ、空き店舗、空きビル、空き家等が多数存在する現状で、市街化が果たして必要なのか疑問であり、市街化区域として水田を耕作することを不可能に誘導し、宅地化する理由はないといわざるを得ない。
そもそも、路線価における基準地は、即建築が可能な優良最多販売帯宅地であって、水田とは品質において比較にならないものである。また、水田を宅地造成するのであれば、近隣のH公社が売り出しているI団地又はJ団地並みのものにしなければ、期待する価格で販売できるはずがなく、被控訴人が評価した宅地と水田との価格差は僅少にすぎるものである。
したがって、これらの事情を考慮することなく本件各土地を宅地比準方式によって評価したのは不当である。
(ウ) 控訴人は、本件各土地につき耕作権を有しているところ、控訴人のような低所得者の老後の不安は著しく、耕作を継続する意思は固く、将来に向かって絶対に離農しないのであるから、被控訴人が評価に当たって控訴人の耕作権の額を控除しなかったのは不当である。
(エ) 被控訴人は、控訴人が購入したGの土地につき、その取引年月日である平成13年9月20日と本件相続(平成10年8月26日)との間に3年の期間があり、大幅に価格の下落があったかの主張をするが、Gの土地の固定資産税額は、平成10年度は11万2400円であったのが、平成13年度は14万4800円、平成15年度は16万5800円と増税になっており、税率に変更がない限り、価格の上昇なくして増税はあり得ないから、価格が下落したという主張は筋が通らない。そして、Gの土地は、本件各土地と同町、同字に位置し、Fの全体土地とは水路、里道を挟んで隣接しているから、これらの事情を考慮すべきである。
イ 被控訴人の主張
控訴人の上記主張はいずれも争う。
(ア) 本件各土地の評価に当たってL事業における平均減歩率15.58パーセントを控除すべきであるとする控訴人の主張の趣旨及び根拠は、必ずしも明らかではないが、控訴人自身、「もっとも、現在のところ、本件各土地につき区画整理の計画はない。」と自認しているとおり、本件各土地は区画整理事業の対象の土地ではないから、平均減歩率に相当する額を本件各土地の評価額から控除する理由はない。
(イ) そもそも農地の評価額を算定するに当たっては、評価通達及び評価基準に基づき、当該土地の形状、道路との関係等を考慮して補正を行うほか、宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額を控除して評価額を算定するのであって、本件各土地とその形状、位置等が異なるI団地、J団地と同等の造成工事費相当額を控除することは相当ではない。
(ウ) 控訴人が主張する耕作権とは、農地の賃借権を意味するところ、単に土地を耕作しているだけでは耕作権が発生するものではないし、控訴人が本件各土地につき賃借権である耕作権を有していることを窺わせる事情は見い出せない。
(エ) 本件各土地に係る固定資産税算定の基礎とされた各土地の価格は、次第に下落していることが明らかである(控訴人の控訴理由書9頁の「高松市固定資産税課税推移表」の「価格」欄参照)。価格の下落に反して本件各土地の固定資産税額が上昇しているのは、税負担の調整措置が図られ、課税標準額が上昇したことによるものであり、土地の価格の上昇によるものではない。
(2) 本件差押処分の適法性(争点(2))
ア 控訴人の主張
被控訴人は、本件差押処分をするに当たり、国税滞納額の総額のみを示した督促状を控訴人に予告なく送付し、控訴人の具体的な内容についての問合せに対し、機密であるから開示できないとしてこれを拒絶した。したがって、控訴人としては、滞納しているという国税の内容が不明である上、控訴人の生活の現状からして、破格の高額の納税資金を調達できる状況にはなかった。
ところが、被控訴人は、控訴人の知らないうちにFの全体土地の総面積すべてを差し押さえた後、控訴人に対してその旨の通知をした。また、被控訴人は、控訴人に対し、他の相続人の相続税納税義務につき、控訴人は他の相続人とともに連帯責務を負っているとして支払うよう命じ、相続税総額2021万5500円(ただし、本件裁決による一部取消後の額)を徴収するため、被控訴人が自ら5741万6542円と評価したFの全体土地を差し押さえたのである。
したがって、本件差押処分は不当である。
イ 被控訴人の主張
控訴人の上記主張は争う。
第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も、控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は、次のとおり補正し、後記2のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を付加するほか、原判決「事実及び理由」第3の1及び2記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 原判決19頁20行目の「評価価額」を「評価額」に、23行目の「評価基本通達」を「評価通達」に各改める。
(2) 同20頁5行目の「また」から7行目の「規定される」までを「また、相続税法の趣旨や評価通達及び評価基準の趣旨に反するような結果を招く特段の事情のない限り、評価通達及び評価基準に基づいて」に改める。
(3) 同21頁11行目の「評価通達11」の次に「の(1)」を加え、16行目の「上記被告主張のような手順」を「被控訴人が上記第2の2(1)ア(イ)③で主張する手順」に、18行目の「相続税法」から19行目の「並びに」までを「相続税法における土地の価額は、土地の評価の適正化、均衡化の要請のほか、」に各改める。
(4) 同22頁13行目の「Eの土地の土地」を「Eの土地」に改める。
(5) 同23頁9行目及び12行目の各「本件採決」をいずれも「本件裁決」に、13行目の「認められる。」を「認められ、各規定を適用する前提となる事実の認定に誤りがあるとは認められない。」に各改め、16行目の「本件各土地の」を削る。
(6) 同24頁21行目の「雑種地」から24行目の「調整区域」までを、「地目が雑種地とされているのに対し、本件各土地の地目は田ないし畑であって地目が異なる上、同証拠によれば、№104の土地は市街化調整区域」に改める。
(7) 同25頁末行の「Gの土地」を「Gの土地」に改める。
(8) 同26頁23行目の「本件各土地のうち水田についての」を削る。
(9) 同27頁3行目の「相続税法」から4行目末尾までを「相続税法の趣旨や評価通達及び評価基準の趣旨に反するような結果を招く特段の事情があると認めるに足りる証拠はない。」に改め、10行目から11行目までを次のとおり改める。
「 以上のとおり、控訴人が取消しを求める本件課税処分(ただし、本件異議決定によって取り消された部分及び本件裁決によって取り消された部分を除く。)は適法である。」
(10) 同17行目の「Fの土地」から18行目の「差押え(本件差押処分)を行った」までを「Fの全体土地の控訴人の持分3分の1を差し押さえた(本件差押処分)」に、25行目の「基づいたなされた」を「基づいてなされた」に各改める。
(11) 同28頁7行目の「本件課税処分」の次に「(ただし、本件異議決定によって取り消された部分及び本件裁決によって取り消された部分を除く。)」を加え、10行目の「本件裁決における」を「本件裁決によって変更された」に、11行目の「換算率」から12行目の「計算した」までを「換算率80分の100を乗じて得られた16万8750円で除した」に、24行目の「Fの土地」を「Fの全体土地」に各改める。
2 当審における控訴人の補充主張に対する判断
(1) 本件各土地の評価方法及び評価額について(争点(1))
ア 控訴人は、高松市L事業における区画整理地区の減歩率は平均して15.58パーセントであったから(もっとも、現在のところ、本件各土地につき区画整理の計画はない。)、本件各土地の評価に当たっては、上記減歩率を控除すべきである旨主張する。
しかしながら、現在のところ、本件各土地が区画整理事業の対象となっていないことは、控訴人が自認するところであるから、控訴人の上記主張はその前提を欠いているというほかない。
イ 控訴人は、本件各土地は、市街化区域に位置し、概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域であるとしても、L事業の対象から外れた土地である上、近接の市街化調整区域に位置する土地でも、建築確認申請等は不可能でなく、許認可事項において本件各土地の場合とほとんど差がなく、まして、市街地中心部においてさえ、空き店舗、空きビル、空き家等が多数存在する現状で、市街化が果たして必要なのか疑問であり、市街化区域として水田を耕作することを不可能に誘導し、宅地化する理由はないといわざるを得ないところ、そもそも、路線価における基準地は、即建築が可能な優良最多販売帯宅地であって、水田とは品質において比較にならないものであり、また、水田を宅地造成するのであれば、近隣のH公社が売り出しているI団地又はJ団地並みのものにしなければ、期待する価格で販売できるはずがなく、被控訴人が評価した宅地と水田との価格差は僅少にすぎるものであるから、これらの事情を考慮することなく本件各土地を宅地比準方式によって評価したのは不当である旨主張する。
しかしながら、補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1の(1)及び(2)アに説示したように、農地の評価額を算定するに当たっては、評価通達及び評価基準に基づき、当該土地の形状、道路との関係等を考慮して補正を行うほか、宅地に転用する場合に通常必要と認められる造成費に相当する金額として、整地、土盛り又は土止めに要する費用の額がおおむね同一と認められる地域ごとに国税局長の定める金額を控除して評価額を算定するとされており、かかる算定方法は合理性があると認められるから、本件各土地とその形状、位置等が異なるI団地、J団地の場合と同等の造成工事費相当額を控除することは相当ではないというべきである。
ウ 控訴人は、本件各土地につき耕作権を有しているところ、控訴人のような低所得者の老後の不安は著しく、耕作を継続する意思は固く、将来に向かって絶対に離農しないのであるから、被控訴人が評価に当たって、控訴人の耕作権の額を控除しなかったのは不当である旨主張する。
しかしながら、控訴人が主張する耕作権がいかなる法的性質を有するものであるかは必ずしも明らかでないが、仮に上記耕作権が農地の賃借権を意味するものであるとすれば、控訴人は、本件各土地の所有者(共有者)であって、本件各土地の賃借人とは認められないし、控訴人が単に本件各土地を耕作している事実を捉えて耕作権と呼称するものであるとすれば、農地の評価に当たり、かかる事実を権利として評価して控除すべき法的根拠はないから、失当というほかない。
エ 控訴人は、控訴人が購入したGの土地の固定資産税額は、平成10年度は11万2400円であったのが、平成13年度は14万4800円、平成15年度は16万5800円と増税になっており、税率に変更がない限り、価格の上昇なくして増税はあり得ないから、価格が下落したという被控訴人の主張は筋が通らないというべきであり、Gの土地は、本件各土地と同町、同字に位置し、Fの土地とは水路、里道を挟んで隣接地にあるから、これらの事情を考慮することなく本件各土地を評価し、評価額を算定した本件課税処分は不当である旨主張する。
しかしながら、本件各土地に係る固定資産税算定の基礎とされた各土地の価格は、次第に下落していることが明らかである(控訴人の控訴理由書9頁の「高松市固定資産税課税推移表」の「価格」欄参照)。また、補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の1(2)イ(イ)b説示のとおり、相続税と固定資産税は、もともと税の徴収目的及び内容が異なる上、固定資産評価額が客観的な交換価値を示すものであるとは認められないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
(2) 本件差押処分の適法性(争点(2))
ア 控訴人は、被控訴人は、本件差押処分をするに当たり、国税滞納額の総額のみを示した督促状を控訴人に予告なく送付し、控訴人の具体的な内容についての問合せに対し、機密であるから開示できないとしてこれを拒絶したのであり、控訴人としては、滞納しているという国税の内容が不明である上、控訴人の生活の現状からして、破格の高額の納税資金を調達できる状況にはなかったところ、被控訴人は、控訴人の知らないうちにFの全体土地の総面積すべてを差し押さえた後、控訴人に対してその旨の通知をし、また、控訴人に対し、他の相続人の相続税納税義務につき、控訴人は他の相続人とともに連帯責務を負っているとして支払うよう命じ、相続税総額2021万5500円(ただし、本件裁決による一部取消後の額)を徴収するため、被控訴人が自ら5741万6542円と評価したFの全体土地を差し押さえたのであり、本件差押処分は不当である旨主張する。
イ しかしながら、補正の上引用した原判決「事実及び理由」第3の2説示のとおり、本件差押処分は、国税徴収法の各規定に基づいてなされた適法なものと認められ、いわゆる超過差押え又は無益な差押え(同法48条)に該当するような事情は認められないから、控訴人の上記主張は採用することができない。
3 以上によれば、控訴人の請求を棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 水野武 裁判官 熱田康明 裁判官 島岡大雄)