高松高等裁判所 平成17年(ネ)276号 判決 2005年12月16日
大阪府岸和田市●●●
控訴人
株式会社マルフク
同代表者代表取締役
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愛媛県四国中央市●●●
被控訴人
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同訴訟代理人弁護士
菅陽一
主文
1 原判決を次のとおり変更する。
(1) 控訴人は,被控訴人に対し,95万4053円及び内金75万3859円に対する平成17年4月12日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人は,被控訴人に対し,13万円及びこれに対する平成17年3月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 被控訴人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟費用は,第1,2審ともに,これを3分し,その2を被控訴人の負担とし,その余を控訴人の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨
1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
2 同部分の被控訴人の請求を棄却する。
第2事案の概要
事案の概要は,争点として次のとおり付加するほかは,原判決「事実及び理由」中,「第2 事案の概要」記載のとおりであるから,これを引用する。
(控訴人の主張)
控訴人は,平成4年12月29日に,被控訴人に対し,16万円を貸し付けたが,その際,控訴人は,被控訴人の電話加入権に質権を設定した。この契約の弁済は,平成8年3月7日の被控訴人の弁済により終了し,上記質権も消滅の手続がなされた。その後同月29日に,再び被控訴人に対し39万円を貸し付けているが,これは平成4年12月29日の貸付けとは別の取引であり,前者の貸付けにおける過払金は,後者の貸付けに充当されない。
(被控訴人の主張)
控訴人が,被控訴人に対し,平成4年12月29日及び平成8年3月29日にそれぞれ貸し付けていることは認めるが,これらが別個の貸付けであるとの主張は争う。
第3当裁判所の判断
次のとおり補正するほかは,原判決「事実及び理由」中,「第3 当裁判所の判断」(ただし,第8項を除く。)記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決6頁13行目末尾の次に,次のとおり加える。
「控訴人は,前記昭和39年及び同43年最高裁判決に拘束されるべきでないと主張するが,独自の主張に過ぎず,採用しない。」
2 原判決8頁14行目冒頭から21行目末尾までを,次のとおり改める。
「6 ところで,控訴人は,被控訴人の電話加入権の質権設定を消滅させているとして,平成4年12月29日の貸付けと平成8年3月29日の貸付けとは,別個の貸付けであると主張する。しかしながら,前記認定によれば,前者の貸付けについては,平成5年5月17日に残額を一括弁済を受けた上で同日付けでさらに27万円を貸し付け,平成8年3月7日に残額27万5630円の一括弁済を受け,そのわずか22日後の同月29日に39万円の貸付けがなされている。そして,証拠(甲1,9の2)及び弁論の全趣旨によれば,その貸付けの約定利息はいずれも年約40パーセントであり,口座番号,担当した営業所も同一であり,同月29日の貸付けの取引区分は「新規」ではなく「復活」とされている。以上の諸事情からすれば,前者の貸付けと後者の貸付けは一体であり,一つの貸付けであるとして,過払金の充当についても一連計算すべきと考えるのが相当である。
以上の検討を前提として,被控訴人の取引内容を利息制限法の制限利率に基づいて過払金を計算すると,原判決別紙計算書のとおり,平成17年4月11日の時点において,過払金残元金が75万3859円,過払金に対する利息合計が20万0194円となると認められるので,被控訴人の過払金請求は,上記金員に加えて過払金残元金75万3859円に対する同月12日から商事法定利率6分の割合による利息を請求する限度で理由がある。
なお,被控訴人は,上記に加えて,上記残元金に対する訴状送達の日の翌日から年5分の遅延利息をも請求しているが,上記の商事法定利率による利息のほかに,年5分の遅延利息を請求できる根拠はなく,かかる請求は失当である。」
第4結論
したがって,上記と異なる原判決を主文のとおり変更する。なお,仮執行宣言は民訴法260条1項による。
(裁判長裁判官 馬渕勉 裁判官 吉田肇 裁判官 平出喜一)