高松高等裁判所 平成19年(ネ)114号 判決 2007年11月29日
平成19年(ネ)第114号,同第193号 不当利得返還本訴,貸金反訴請求控訴,同附帯控訴事件
(原審・松山地方裁判所西条支部平成18年(ワ)第232号,同第270号)
東京都中央区日本橋3丁目8番14号
控訴人・附帯被控訴人(1審本訴被告・反訴原告)
新洋信販株式会社
同代表者代表取締役
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同訴訟代理人弁護士
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同
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同
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同
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同
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愛媛県新居浜市●●●
被控訴人・附帯控訴人(1審本訴原告・反訴被告)
●●●
同訴訟代理人弁護士
菅陽一
主文
1 控訴人の控訴(被控訴人の本訴請求を一部認容した部分に関するもの)に基づき,原判決主文第1項を取り消す。
2 上記取消部分に係る被控訴人の本訴請求を棄却する。
3 控訴人のその余の控訴(控訴人の反訴請求を棄却した部分に関するもの)及び被控訴人の附帯控訴(当審拡張請求)をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,第1審における訴訟費用を控訴人の負担とし,当審における訴訟費用を各自の負担とする。
事実及び理由
第1控訴の趣旨及び附帯控訴の趣旨
1 控訴の趣旨
(1) 原判決中,控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 同部分に係る被控訴人の本訴請求を棄却する。
(3) 被控訴人は,控訴人に対し,45万6250円及びこれに対する平成18年2月7日から支払済みまで年21.9%の割合による金員を支払え。
(4) 訴訟費用は,第1,第2審とも被控訴人の負担とする。
2 附帯控訴の趣旨(当審拡張請求)
(1) 原判決主文第1項及び第2項を次のとおり変更する。
(2) 控訴人は,被控訴人に対し,23万8312円及びうち23万5563円に対する平成19年6月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(3) 訴訟費用は,第1,第2審とも控訴人の負担とする。
第2事案の概要
1 原審における請求の骨子
本訴事件は,平成12年12月26日に控訴人から250万円を借り入れた被控訴人が,控訴人に支払った弁済金365万4630円につき,利息制限法1条1項所定の制限利率(以下,単に「制限利率」という。)に引き直して計算すると,原判決別紙計算書1「法定金利計算書(過払利息6%)」記載のとおり,平成18年9月1日時点で,過払金18万1579円及び過払利息7079円(商事法定利率年6分の割合で計算)の合計18万8658円が発生している旨主張して,控訴人に対し,不当利得返還請求として,18万8658円及びうち18万1579円に対する同月2日から支払済みまで年6分の割合による利息の支払を求めた事件である(なお,本訴事件は,当初,新居浜簡易裁判所に提起されたが〔平成18年(ハ)第131号事件〕,同裁判所が被控訴人の移送申立てを認容する決定をしたため,原審裁判所に移送された。)。
反訴事件は,控訴人が,上記借入金につき,被控訴人が約定支払日に約定金の支払を怠って期限の利益を喪失したため,上記弁済金365万4630円を制限利率(期限の利益喪失後は同法4条1項所定の年21.9%)に引き直して計算すると,原判決別紙計算書2「法定利息計算書」記載のとおり,平成18年2月6日時点で元本45万6250円が未払である旨主張して,被控訴人に対し,貸金返還請求として,45万6250円及びこれに対する同月7日から支払済みまで年21.9%の割合による遅延損害金の支払を求めた事件である。
2 訴訟の経過
原審は,被控訴人の本訴請求を18万7478円(平成18年9月1日時点で過払金18万1579円及び民法所定の年5分の割合による過払利息5899円の合計額)及びうち18万1579円に対する同月2日から支払済みまで年5分の割合による利息の支払を求める限度で認容し(原判決主文第1項),その余を棄却し(同第2項),控訴人の反訴請求を棄却した(同第3項)。
これに対し,控訴人が,原判決中,控訴人敗訴部分を不服として控訴し,被控訴人が,信用保証会社に支払った保証料11万2500円を利息制限法3条本文所定のみなし利息として弁済金に加え,過払金に付する利息の利率を年6分から年5分に改め,原判決後の平成19年3月29日に控訴人から支払を受けた20万2747円を過払金及び過払利息に対する弁済に充当して計算すると,本判決別紙「法定金利計算書(過払利息5%)」(以下「控訴審原告側計算書」という。)記載のとおり,同年6月8日時点で過払金23万5563円及び過払利息2749円の合計23万8312円が発生している旨主張して,本訴請求拡張のため附帯控訴した(年6分の割合による利息請求は,年5分の割合による利息請求に減縮したものと解される。)。
3 前提事実
以下の事実は,当事者間に争いがないか,括弧内に掲記した証拠又は弁論の全趣旨により容易に認めることのできる事実である。
(1) 控訴人
控訴人は,金銭貸付業務等を目的とする株式会社である。
(2) 控訴人の貸付け
控訴人は,平成12年12月25日,被控訴人との間で,次の約定の基本契約を締結し(以下「本件基本契約」という。乙1),同月26日,被控訴人に対し,250万円を貸し付けた(以下「本件貸付け」又は「本件借入れ」といい,上記金員を「本件貸付金」又は「本件借入金」という。)。
ア 借入限度額 300万円
イ 返済方法 残高スライド方式・リボルビング(なお,支払金一覧表〔乙8〕によれば,借入金額が250万円の場合,毎月の返済額は7万円である。)
ウ 支払日 毎月5日(支払日が控訴人の休業日及び銀行休業日の場合は,その翌日の控訴人の営業日及び銀行の営業日)
エ 支払場所,方法 控訴人の各営業店店頭又は控訴人指定の銀行口座に振り込む方法による支払,若しくは被控訴人指定の金融機関口座から自動振替による支払
オ 利息 年28.0%(年365日の日割計算)
キ 期限の利益喪失 約定支払日より1日でも支払を遅滞したときは,控訴人から何らの通知催告を要せず,被控訴人は,控訴人に対する債務について期限の利益を喪失する(以下,この特約を「本件期限の利益喪失特約」という。)。
カ 遅延損害金 残債務元本に対する支払遅滞日又は期限の利益喪失日の翌日から支払済みまで年29.2%
(3) 信用保証委託契約の締結と保証料の支払
控訴人は,平成12年7月3日,綜合ファイナンシャルサポート株式会社(以下「本件保証会社」という。)との間で,控訴人の行う貸付業務に係る債務者の債務の信用保証契約(以下「本件信用保証契約」という。)を締結している(乙17)ところ,被控訴人は,本件借入れに際し,本件保証会社との間で,本件借入金債務につき信用保証委託契約(以下「本件保証委託契約」という。)を締結し(甲9),同年12月27日,保証料11万2500円(本件借入金の4.5%。以下「本件保証料」という。)を本件保証会社に支払った(甲32)。
(4) 本件借入金の弁済
被控訴人は,本件借入金の弁済として,平成13年2月5日から平成18年2月6日まで,控訴審原告側計算書の「年月日」欄記載の各年月日に「弁済額」欄記載の各金員を支払った(以下,これらの各支払を「本件各弁済」という。)。
(5) 民事再生手続の開始,再生計画案の認可
被控訴人は,平成18年,松山地方裁判所西条支部に対し,民事再生手続開始の申立て(小規模個人再生を行うことを求める旨の申述)をし(平成18年(再イ)第38号事件),同裁判所は,小規模個人再生による民事再生手続開始の決定をした。そして,同裁判所は,平成19年2月8日,被控訴人の提出した再生計画案(甲34)について,再生計画認可の決定をし(甲30),同年3月9日,同決定が確定した(甲31)。
(6) 原判決後の控訴人の支払
控訴人は,原判決後の平成19年3月29日,被控訴人に対し,原判決主文第1項の金員(18万7478円及びうち18万1579円に対する平成18年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員)を上回る20万2747円を支払った(控訴審原告側計算書の番号67。弁論の全趣旨)。
第3争点及び当事者の主張
1 本件保証料のみなし利息該当性(本訴請求及び反訴請求関係-当審での新争点)。
(1) 被控訴人の主張
ア 利息制限法3条本文は,「何らの名義」にかかわらず,「債権者の受ける」金銭であれば利息とみなす旨規定しているところ,本件保証料は,次に述べる理由から,みなし利息に当たるというべきである。
イ そもそも,同条本文の趣旨は,貸主が種々の方策を用いれば容易に制限利率を潜脱しうることを前提に,このような潜脱行為によって借主が総額として制限利率以上の出捐を強いられる事態を防ぎ,借主保積という同法の趣旨を実質的に担保する点にある。したがって,同条本文の「債権者の受ける」金銭を形式的に解釈して,本件でいえば,被控訴人から金銭を受領したのが控訴人ではなく本件保証会社であるから,本件保証料が「債権者の受ける」金銭に当たらないと解釈するのではなく,同法の潜脱を許さないよう実質的に考えるべきであって,貸主に最終的な利益が発生するように仕組まれた金銭の流れが存在すれば,貸主が金銭を「受けた」と評価でき,かつ,それで足りると解すべきである。
本件では,控訴人は,被控訴人が本件保証会社との間で信用保証委託契約を締結することを被控訴人に対する融資の条件とし,しかも,本件信用保証契約に係る信用保証約定書(以下「本件信用保証約定書」という。乙17)によれば,控訴人が,被控訴人と本件保証会社との間の信用保証委託契約の締結を代行し(5条),本件保証会社による代位弁済(8条)によって約定利息と共に貸付金を回収できる立場にある。したがって,本件信用保証契約上,貸主たる控訴人に利益が発生するように仕組まれた金銭の流れが存在するといえる。
加えて,控訴人と本件保証会社との間で取り交わされた覚書(以下「本件覚書」という。乙18)では,保証料率を顧客の借入額の5%としているのに,本件保証料は,本件借入金に4.5%を乗じた金額である。本来,保証料率は,顧客である被控訴人と本件保証会社とが協議して決定すべきであるのに,関係のない控訴人が本件保証会社と協議して決定しており,本件信用保証契約自体,控訴人に利益が発生するようにする仕組みであると推認すべき事情であるといえる。
ウ 判例(最高裁平成13年(受)第1032号,第1033号平成15年7月18日第二小法廷判決・民集57巻7号895頁。以下「平成15年判例」という。)も,「(利息制限)法1条1項及び2条の規定は,金銭消費貸借上の貸主には,借主が実際に利用することが可能な貸付額とその利用期間とを基礎とする法所定の制限内の利息の取得のみを認め」る旨判示し,実際に債務者が利用できる金額を利息の算定基礎とすることを確認している。利息制限法1条1項の内容は,元来,実際に債務者が利用できる金額を基礎とするものであり,その趣旨を徹底したのが同法3条本文なのであるから,同条本文の解釈に当たっても,債務者が利用できない金銭は利息とみなすと解して,同法1条1項の内容と整合的なものにしなければならない。したがって,貸主を通さないで保証会社に直接支払った保証料でも,債務者たる借主が利用できない金銭である以上,同法3条本文の利息とみなされるのである。
さらに,判例(最高裁昭和46年(オ)第188号昭和46年6月10日第一小法廷判決・裁判集民事103号111頁)は,同法3条本文の適用につき,仮に契約締結の費用と弁済の費用であったとしても,債権者が現実に支出したものに限りみなし利息には当たらない(同条ただし書)としているように,借主が利用できない金銭は,すべて利息とみなすと考えている。
エ また,本件保証料が利息制限法3条本文のみなし利息に当たるか否かを判断するに当たり,利益が控訴人に還流されていることを要件とする必要はないと解すべきである。
裁判例(広島高裁平成18年2月16日判決。甲42)も,「貸主以外の第三者に保証料が支払われた場合であっても,貸主と第三者に(利息制限)法の制限を潜脱する共同意思があったときには,支払われた保証料はみなし利息に該当すると解すべきである。そして,みなし利息が認められるためには,上記共同意思が認められれば足りるのであって,貸主と第三者が一体であるために利益の還元が予定されている場合に限定されないと解するのが相当である。何故なら,貸主と第三者が一体で利益還元の関係にある場合は,上記共同意思を認定させる典型的な場合であるが,同条の趣旨からすると,かかる場合に限定される理由はなく,上記共同意思が認められる範囲まで含まれないと同条の趣旨を没却させることとなるからである。」旨判示しているように,利益の還流をみなし利息該当性の要件とはしていない。
オ 仮に,利息制限法3条本文の債権者の「受ける」金銭の意味につき,債権者に利得がある場合を含むと解する見解に立つ,あるいは,みなし利息に当たるか否かの判断に当たり,利益が控訴人に還流されていることを要件とする見解に立つとしても,① 控訴人は,本件保証会社が借主から受け取った保証料名目の金員の中から一定の代位弁済を受けるから,控訴人が代位弁済を受けた場合には控訴人に利得があるといえるし,代位弁済を受けていないとしても,本件保証会社に対し保証債務履行請求権という債権を有しているので,控訴人に利得があるといえる,② 控訴人が貸倒れによるリスクを回避するのであれば,自ら保証料名目の金員を負担して本件保証会社との間で信用保証契約を締結すべきであるが,控訴人は,保証料名目の金員(本件保証料)を被控訴人に負担させ,自ら負担すべき保証料の負担を免れているのであって,上記の負担を免れたという意味において利得があったといえる,③ 貸金業者が借主から徴収した保証料を保証会社に支払ったとしても,貸金業者が借主の不当利得を受け,保証料を支払うことが法律上の原因を欠いていたことが事後に判明した場合,貸金業者と保証会社との間の契約上の義務として,貸金業者は保証会社に保証料の返還を請求できるというべきであるから,貸金業者は,なお契約上の保証会社に対する返還請求権の価値に相当する利益を有しているといえる(小林簡裁平成18年3月14日判決〔甲39〕),④ 金銭の交付によって生じた不当利得の利益が存在しないことについては,不当利得返還請求権の消滅を主張する者が立証すべきであり,かつ,不当利得をした者が法律上の原因がないことを認識した後の利益の消滅は,返還義務の範囲を減少させない(最高裁昭和62年(オ)第888号平成3年11月19日第三小法廷判決・民集45巻8号1209頁。以下「平成3年判例」という。)から,控訴人が被控訴人による本件保証料の交付により利得を得ていないと主張するのであれば,その立証責任を負う(宮崎地裁都城支部平成19年2月16日判決〔甲45〕),ことからすると,本件保証料は,同法3条本文の「債権者の受ける」金銭と評価できるし,利益が控訴人に還流していると評価できるから,みなし利息に該当する。
(2) 控訴人の主張
ア 利息制限法3条本文でみなし利息とみなされる金銭は,条文の文言から明らかなとおり,債権者の受けるものでなければならず,したがって,債務者の交付する金員のうち契約の締結及び債務の弁済費用以外は,交付の相手方の如何を問わず,すべてみなし利息に該当するわけではなく,利益帰属の実質に従って理解されなければならない。平成15年判例以後の裁判例をみても,上記の理解に基づき,信用保証会社の法人格が否認されなくても,同法3条を潜脱し,債権者に保証料等を還流させる意図がある場合には,同条本文のみなし利息に当たるとしている。
イ ところで,平成15年判例及びその直後の判例(最高裁平成14年(受)第622号平成15年9月16日第三小法廷判決・裁判集民事210号729頁)の判断内容に照らすと,利息制限法3条を潜脱し,債権者に保証料等を還流させる意図があったかといえる決定的に重要な事実は,保証料等の割合,業務の実態及び内容よりも,信用保証会社と債権者の資本関係(設立の経緯),組織の体制であるということができる。なぜなら,保証料等の割合,業務の実態及び内容がどのようなものであったとしても,現実に利益が還流する仕組みが全く採られていなければ,保証料を還流させる意図があったとはいえないからである。
したがって,債務者が信用保証会社に支払った保証料が同条本文のみなし利息に該当するといえるためには,信用保証会社の設立の経緯,保証料等の割合,業務内容及び実態並びにその組織の体制等からみて,保証料等の利益を還流させる意図があったといえる場合であり,保証料等の利益を還流させる意図があったといえるためには,少なくとも保証料が還流していることが明白でなければならない。
しかしながら,本件では,本件保証料が本件保証会社から控訴人に還流していることが明らかとはいえない。
ウ 被控訴人が引用する広島高裁平成18年2月16日判決(甲42)は,現実に保証料等の利益の還流がない場合であるにもかかわらず,利息制限法3条本文のみなし利息に該当する点において,利息の潜脱を防止するという同条の趣旨を逸脱するし,同条本文の「債権者の受ける」という文言にも反し妥当でない。現実の保証料等の利益の還流がない場合には,債権者に民法703条の「利得」がなく,還流させる意図すら否定されるのがほとんどであり,そうであるからこそ,平成15年判例等は,信用保証会社の設立の経緯,組織の体制を重視せざるを得なかったのである。
また,上記広島高裁判決は,貸主と第三者に利息制限法の制限を潜脱する共同意思があったことを推認させる事実として,信用保証委託契約が形骸化していること,貸付けと信用保証委託契約の一体性及び貸付けの利息と保証料の合計額が高利であることを挙げて,信用保証会社が事実上貸主と一体である場合に近い認定をしていることからすると,同判決は,あくまで貸主と第三者が一体である場合に限定されない旨判示しているにすぎず,共同意思の認定根拠として利益の還流の有無を問わないと判示しているものではない。
エ 被控訴人が上記(1)イで述べた事情や,同オの①及び②で述べた事情は,いずれも本件保証料がみなし利息に当たることの間接事実とはなりえないものか,過度に債務者保護を強調した議論であって,妥当でない。
2 本件期限の利益喪失特約の適否等(本訴請求,反訴請求関係)
(1) 控訴人の主張
ア 期限の利益喪失事由の該当性
被控訴人は,控訴人に対し,平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき約定金(7万円)の支払を怠ったところ,これは,本件期限の利益喪失特約で定める期限の利益喪失事由に該当する。
イ 被控訴人主張の後記(2)アの本件期限の利益喪失特約の不適用その1(ボトルキープ論)に対する反論
被控訴人が引用する判例(最高裁平成16年(受)第1518号平成18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1頁。以下「平成18年判例」という。)は,支払期日に約定の元本及び利息の制限額を支払ってさえすれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である旨判示しているのであって,支払期日に支払を一切しなかった場合には,当然に期限の利益を喪失するといわざるを得ない。
ウ 被控訴人主張の後記(2)イの本件期限の利益喪失特約の不適用その2(催告及び解除手続の不履行)に対する反論
上記イのとおり,支払期日に支払を一切しなかった場合には,当然に期限の利益を喪失するといわざるを得ないのであって,被控訴人の期限の利益を喪失させるため,控訴人が改めて催告又は解除の手続を講じなければならないものではない。
(2) 被控訴人の主張
ア 本件期限の利益喪失特約の不適用その1(いわゆる「ボトルキープ論」)
(ア) そもそも,期限の利益喪失特約により期限の利益を喪失した場合の利息制限法4条の適用に当たっては,次の事情を考慮する必要がある。
すなわち,① 弱者保護の強行法規である同法の趣旨を考慮する必要がある,② 期限の利益喪失特約は,制限利率を潜脱する手段として利用される余地がある(例えば,多少の支払遅滞を容認しながら長期間高金利を取り続け,いざ支払がされなくなると,期限の利益喪失特約の形式的適用により,遡って制限利率の1.46倍〔同法4条1項〕の遅延損害金を取得する旨主張すること),③ 判例も,期限の利益喪失特約については,形式的ではなく,諸般の事情を斟酌して,当事者の意思を解釈して決すべきである旨判示しており(大審院昭和3年(オ)第1267号昭和4年3月21日判決・大審院裁判例3巻民法52頁),また,必ずしも1回の懈怠によって残額全部について当然に弁済期が到来するとは限らない旨判示している(大審院昭和14年(オ)第625号昭和15年3月13日判決・民集19巻7号544頁),④ 学説上も,事故の形式を採って高利を合法化しようとする仕組みを断罪し,期限の利益喪失約款の制限解釈の必要性を説いている(小野秀誠一橋大学教授「利息制限法理の新たな展開(下)―借換,一連の取引,期限の利益喪失約款―」判例時報1779号168頁〔甲3〕など),⑤ 制限利息は,利用金額,利用期間,制限利率という3要素によって算出されるものである(平成15年判例)から,期限の利益喪失特約についても,利息の量的側面(制限利息以上のものを混入させてはならない。),利息の時的側面(遅滞とはいえないものを混入させてはならない。),制限利率の適用場面的側面(事故的要素以外の利息的要素が混入することを排除しなければならない。)によって厳格に制限されるべきである,⑥ 支払義務を負わない制限超過部分の支払強制が行われないよう,支払期日に約定の元本と利息の制限額を支払っていれば,制限超過部分の支払を怠ったとしても,期限の利益が喪失しないとする平成18年判例がある,ことなどを考慮する必要がある。
したがって,期限の利益喪失特約については,弱者保護という同法の趣旨や上記各判例等に照らし,厳格に解釈し,適用する必要があるのであって,ある弁済期日だけを捉えて,当該期日に約定の支払を怠ったとして直ちに期限の利益喪失特約を適用し,期限の利益を喪失したものと解すべきではなく,債務者のした一連の弁済の中で,約定の元本と制限利率に基づいて計算した利息の合計額が当該期日までに支払われている場合には,期限の利益喪失特約は適用されない(いわゆる「ボトルキープ論」)と解すべきである。
(イ) これを被控訴人についてみるに,仮に,本件保証料が利息制限法3条本文のみなし利息に当たらないとしても,平成13年9月5日の約定支払日に被控訴人が支払うべき金額は,原判決別紙計算書4記載のとおり,元本8万9834円及び利息25万6479円の合計34万6313円であるのに対し,被控訴人が平成13年8月6日までに弁済した額は,これを上回る合計49万8630円である。
このように,被控訴人は,平成13年9月5日の約定支払日において,法律上支払うべき元本及び利息以上の金額を支払っているから,本件期限の利益喪失特約は被控訴人に適用されないというべきである。
イ 本件期限の利益喪失特約の不適用その2(催告及び解除手続の不履行)
(ア) 仮に,貸主と借主との間で,貸主による何らの通知催告を要しない期限の利益喪失特約が合意されたとしても,前記ア(ア)で述べたように,利息制限法の趣旨や同法の制限解釈の必要性,事故の形式を採って制限利率を潜脱する高利を貸主が取得する危険性が高いことなどからすると,催告及び解除の意思表示の手続がなされて初めて期限の利益喪失特約が適用されると解すべきである。
(イ) 本件では,被控訴人が平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき約定金の支払を怠った後,控訴人は,被控訴人に対し,何らの催告及び解除の意思表示の手続を執っていないのであるから,本件期限の利益喪失特約は被控訴人に適用されないというべきである。
3 期限の利益喪失の宥恕又は期限の延長合意の有無(本訴請求,反訴請求関係)
(1) 被控訴人の主張
ア 仮に,借主が約定支払日に約定金の支払を1回怠ったことにより,形式的には期限の利益喪失事由に該当するとしても,その後,貸主が借主に対し,一括弁済を求めることなく分割弁済を求め,借主がこれに従って分割弁済を継続していた場合には,貸主は,借主に対し期限の利益喪失を宥恕し,あるいは,借主との間で,期限の利益を再度付与する(期限を延長する)黙示の合意をしたと解すべきである。そのように判断した裁判例も多数存在する(東京高裁平成19年3月8日判決〔甲27〕,東京地裁平成19年1月29日判決〔甲25〕など)。
イ 本件では,控訴人は,被控訴人が約定支払日に支払うべき約定金の支払をしなかった平成13年9月5日以降も,被控訴人から弁済を受ける都度,「領収書兼利用明細書」ないし「領収書兼ご利用明細書」(以下,「領収書兼ご利用明細書」に統一して呼称する。乙2の8~64)を交付していたところ,同明細書には,従前と同様,「次回お支払日」欄に約定支払日が明記され,「次回ご請求額」欄に約定の分割弁済金7万円が明記されるなど,控訴人は,平成18年2月6日まで,被控訴人に対し,一括弁済を求めることなく従前と同様の分割弁済を求め,被控訴人もこれに従って分割弁済を継続してきた。
ウ 以上によれば,控訴人は,被控訴人に対し期限の利益喪失を宥恕し,あるいは,被控訴人との間で,期限の利益を再度付与する(期限を延長する)黙示の合意をしたというべきである。
(2) 控訴人の主張
ア 被控訴人の期限の利益喪失後に控訴人が交付した「領収書兼ご利用明細書」(乙2の8~64)と,上記喪失前に控訴人が交付した「領収書兼利用明細書」(乙2の1~7)とを比較すると,次のとおり明らかな違いがある。
すなわち,期限の利益喪失後は,「領収書兼ご利用明細書」(乙2の8~64)の入金明細の「延滞日数」欄に日数が記載されているほか,「通常利息充当」欄ではなく「延滞利息充当」欄に充当関係が記載されている。また,「ご注意」欄の記載は,期限の利益喪失前は,「期日を延滞されますと遅延損害金の適用となります。また解約となり元利一括請求となる場合もございます。」という単なる警告文とされていたが,期限の利益喪失後は,「お客様は上記の日付で期限の利益を喪失しております。よって(中略)元利金を一括にてお支払下さいますようよろしくお願い申し上げます。なお,期限の利益喪失日以降は遅延損害金の適用となります。」という注意喚起文兼要請文に変わっている。期限の利益喪失後,控訴人は,被控訴人に対し,一貫して,被控訴人の弁済の都度,期限の利益喪失の事実を告げると共に一括弁済を求める意思を表示し,さらに,弁済金の一部を利息ではなく遅延損害金に充当することを明らかにしていた。
イ 以上のとおりであるから,控訴人は,被控訴人に対し期限の利益喪失を宥恕したとか,被控訴人との間で,期限の利益を再度付与する(期限を延長する)黙示の合意をしたことはない。
4 控訴人による期限の利益喪失の主張の信義則違反(本訴請求,反訴請求関係)
(1) 被控訴人の主張
ア 本件では,① 控訴人は,控訴人の顧客が零細事業者であり,60回(5年)という弁済期間中に多少の遅滞が生じうることを認識しながら,期限の利益喪失特約を厳格に設定し,遅延損害金の名目で高利を得るため,期限の利益喪失事由が生じた後も,一括弁済を求めることなく従前と同様の分割弁済を求め,これを継続させている,② 控訴人は,平成13年2月5日から平成18年2月6日まで,64回にわたって被控訴人の分割弁済を継続させており,この間の平成13年9月5日の約定支払日にわずか5日遅れただけで,期限の利益喪失を認めて遅延損害金を発生させることは,著しく不公平であるし,被控訴人にもたらされる不利益は,事業の倒産や保証人への取立てなど,著しく苛酷で重大である,③ 控訴人は,期限の利益喪失事由が生じた後,被控訴人に対し,催告したり一括弁済を求めたことはなく,保証人に対し保証債務の履行を請求したこともなければ,本件保証会社に代位弁済を求めたこともなく,被控訴人自身,期限の利益を喪失したことを認識せず,5年間にわたり約定の分割弁済を継続していた,④ 控訴人は,期限の利益喪失事由が生じた後も,遅延損害金について,約定利息と同率の年28.0%を適用していた,という事情が存する。
イ 以上の事情に加え,前記3(1)で述べた事情を総合すると,本件訴訟において,控訴人が期限の利益喪失を主張することは,信義則に反し,権利の濫用として許されないというべきである。
(2) 控訴人の主張
控訴人が前記3(2)のアで述べた事情に照らすと,控訴人が期限の利益喪失を主張することが,当事者間の公平を害するということはできず,利息制限法の潜脱になるということもできない。
したがって,控訴人の上記主張が信義則に反するとか,権利の濫用として許されないということはできない。
5 被控訴人の履行遅滞についての違法性の欠如(本訴請求,反訴請求関係―当審での新争点)
(1) 被控訴人の主張
ア 本件期限の利益喪失特約の下では,次に述べる理由から,控訴人は,借主である被控訴人に対し,法的に正しい支払義務を告知して誤解を解消すべき義務を負っているというべきであるから,控訴人がかかる義務を履行しない限り,被控訴人が約定支払日に約定金の支払を怠ったこと(履行遅滞)が直ちに違法であると評価することはできず,したがって,被控訴人は,履行遅滞の責めを負わないと解すべきである。
イ 平成18年判例は,期限の利益喪失特約について,法的には制限利率を超える利息の支払部分を無効とし,元本及び制限利息さえ支払えば期限の利益を喪失しないという法的解釈(正解)を示しつつ,同時に,しかし,法的素人である借主は,特段の事情のない限り,約定利息を支払わなければ期限の利益を喪失すると誤解しているから,約定利息の支払を事実上強制されている旨判示している。被控訴人も,特に法的知識のない法的素人にほかならないから,上記の誤解の下で本件各弁済を行ってきたものといえるところ,この誤解は,控訴人が惹起したものである。
ウ そして,被控訴人をはじめとする法的素人たる借主は,控訴人が策定した期限の利益喪失特約により誤解させられた結果,約定支払日に制限利率を超過する約定利息の支払を事実上強制させられている。裁判例(福岡地裁平成18年12月22日判決〔甲18〕)も,期限の利益の喪失についての誤解の故に,借主の支払が遅れてしまう事態を的確に指摘している。また,その上告審判決である福岡高裁平成19年8月30日判決(甲53)は,「利息制限法所定の利率を超過する利率で借入れがされた場合において,支払期日を徒過したとしても,当該支払期日と近接した日に必要額(ただし,利息については当該支払日までの制限利息)の支払がされた場合には,① 債務者において引直計算を熟知していた,又は② 債権者において当該支払期日の直後に一括弁済を請求した等の特段の事情がない限り,債務者は期限の利益を喪失しないものと解し,本件につき上記特段の事情はないとして,期限の利益の喪失を認めなかった原審の判断は,これを是認することができる。」旨判示している。
エ したがって,本件期限の利益喪失特約のように,制限利率を超過する利息を含む約定利息を支払わないと期限の利益を喪失するという特約の下においては,貸主は,借主の上記誤解を解消させる措置を執るべき消費貸借契約上の義務を負っていると解すべきであり,貸主がこの義務を履行しない限り,借主が支払を怠ったことについて違法性はないと解すべきである。
(2) 控訴人の主張
被控訴人の上記(1)の主張は争う。
6 遅延損害金の起算日(本訴請求,反訴請求関係―当審での新争点)
(1) 被控訴人の主張
本件基本契約に係るローン取引約定書(以下「本件基本契約書」という。乙1)の遅延損害金に関する条項(第1条⑨)には,「その違約日の翌日より(中略)損害金をお支払いいただきます。」との記載があり,この「違約日」とは,本件で問題とされている平成13年9月5日の翌日である同月6日であるから,遅延損害金の発生日は同月7日になるはずである。
したがって,同月5日に被控訴人が当然に期限の利益を喪失し,同日から遅延損害金が発生するとの控訴人の主張は,失当である。
(2) 控訴人の主張
被控訴人は,平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき約定金の支払を怠ったため,期限の利益を喪失した。
したがって,控訴人は,被控訴人に対し,本件基本契約で定める遅延損害金の約定に従い,期限の利益喪失日の翌日である同月6日から支払済みまで年21.9%の割合による遅延損害金の請求をすることができる。
7 控訴人の悪意の受益者性(本訴請求関係)
(1) 被控訴人の主張
民法704条の「悪意」とは,いわゆる過払金返還請求においては,借主が客観的に過払状態に陥った時点で,貸主が制限利率を超える利息を徴収することを認識していたことである。
したがって,制限利率を超える約定利息で本件貸付けを行っていた控訴人は,被控訴人が客観的に過払状態に陥った時点から悪意の受益者に当たり,同時点から,過払金について年5分の利息を付してこれを返還すべき義務を負う。
(2) 控訴人の主張
被控訴人の上記(1)の主張は争う。
8 再生計画認可決定の確定による控訴人の反訴請求債権の失効(反訴請求関係―当審での新争点)
(1) 被控訴人の主張
控訴人は,被控訴人の申立てに係る小規模個人再生事件について,松山地方裁判所西条支部から,被控訴人に対する小規模個人再生による民事再生手続開始決定の謄本と債権の届出書の送付のほか,被控訴人が上記申立ての際に同裁判所に提出した債権者一覧表(甲33)に記載されている事項の通知を受けたにもかかわらず,反訴請求債権につき再生債権の届け出をしなかった。
その結果,上記債権者一覧表記載の内容,すなわち,「債権額0円」,発生原因を「平成12年12月26日金銭消費貸借,顧客番号●●●,過払残元金金18万1579円,過払利息金7407円,新居浜簡裁平成18年(ハ)第131号過払訴訟係属中」とする内容で再生債権の届出があったものとみなされ(民事再生法225条),かつ,同債権が確定した。
このように,上記民事再生手続において,控訴人の債権額が0円で確定した以上,控訴人の反訴請求は失当である。
(2) 控訴人の主張
被控訴人の上記(1)の主張は争う。
第4当裁判所の判断
1 本件保証料のみなし利息該当性(争点1)について
(1) 本件におけるみなし利息該当性の判断基準
利息制限法3条本文は,金銭を目的とする消費貸借に関し債権者の受ける元本以外の金銭は,礼金,割引金,手数料,調査料その他何らの名義をもってするを問わず,利息とみなす旨規定する一方,同条ただし書において,元本利用の対価ではない契約の締結及び債務の弁済の費用をみなし利息から除外する旨規定している。
このように,同条本文で利息とみなされる金銭は,債権者の受けるものでなければならないから,債務者が交付する金銭のうち,同条ただし書の契約の締結及び債務の弁済の費用以外がすべてみなし利息に当たると解することはできない。また,同条本文の「債権者の受ける」ものとは,債権者に利益帰属するものでなければならないと解される。
したがって,本件のように,本件借入れに際し,被控訴人が控訴人の求めに応じて本件保証会社との間で本件保証委託契約を締結し,本件保証料を本件保証会社に支払った場合において,本件保証会社の法人格を否認して控訴人と同一視できる場合,あるいは,法人格を否認できない場合であっても,控訴人が,同法を潜脱し,控訴人に本件保証料を還流させる目的で,被控訴人をして本件保証会社に対する保証委託をさせていたと認められる場合には,本件保証料は同法3条本文のみなし利息に当たるというべきである(平成15年判例参照)。
そして,本件において,被控訴人は,本件保証会社の法人格否認の主張をしていないから,控訴人が同法を潜脱し,控訴人に本件保証料を還流させる目的で,被控訴人をして本件保証会社に対する保証委託をさせたと認められるか否か,以下検討する。
(2) 事実の認定
ア 前記前提事実に加え,証拠(甲9,32,乙17,18)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 控訴人は,平成12年7月3日,本件保証会社との間で本件信用保証契約を締結した。本件信用保証約定書(乙17)には,債務者が支払う信用保証料は,本件保証会社の基準に従い債務者の信用度に照らし合わせて本件保証会社が決定し(4条1項本文),債務者の住所などプライバシー保護を目的とし保証委託申込書等の受付事務及び郵送手続等を控訴人が本件保証会社の委託を受けて代行し(5条),控訴人の債務者について8条1項各号所定の事由が生じた場合,本件保証会社は,控訴人の請求により代位弁済の履行をする(8条1項)などの定めがある。また,本件覚書(乙18)には,上記信用保証料につき,保証料率を控訴人の貸付けに係る債務者の借入金又は借入限度額の5%とし,そのうち3.75%を代位弁済準備金として積立てをし,これを超える部分を事務手数料として本件保証会社が収受するなどの定めがある(なお,控訴人は,本件覚書記載の保証料率5%について,本件貸付け当時には,本件保証会社と協議の上,すべての顧客について保証料率を4.5%としていた旨主張するが,上記主張を裏付ける客観的な証拠がないことは,控訴人が自認している。)。
(イ) 被控訴人は,本件借入れに際し,控訴人の求めに応じて,本件保証会社との間で本件保証委託契約を締結し(甲9),平成12年12月27日,本件保証会社に対し本件保証料を支払った(甲32)。
なお,控訴人は,本件保証委託契約に関し,本件信用保証契約で定められた保証委託申込書等の受付事務及び郵送手続等の代行にとどまらず,本件保証委託契約の締結に係る一切の事務を代行していたことがうかがえる(弁論の全趣旨)。
イ 他方,証拠(乙19,20)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
(ア) 控訴人は,昭和29年3月30日に設立された金融業等を目的とする会社であり,資本金は20億2256万円,本店所在地は東京都中央区日本橋(肩書地住所)である(記録上明らかな事実)。
(イ) 本件保証会社は,平成12年5月1日に設立された信用保証業務等を目的とする会社であり,資本金は1億円,本店所在地は名古屋市千種区今池である。
本件保証会社の役員について,本件保証会社の設立当時はもとより,現時点においても,控訴人の役員又は従業員が本件保証会社の役員に就任したことはない(乙19,20)。
また,控訴人と本件保証会社との間には,本件信用保証契約が存することのほかに,資本提携や業務提携といった関係が存することはうかがえない。
(ウ) 控訴人は,被控訴人が本件借入金の弁済をしなくなった平成18年2月6日以降,本件貸付けに係る残債権(本件反訴請求債権)につき,本件保証会社に対し,本件信用保証契約に基づく代位弁済を求めた事情はうかがえない。
(3) 検討
本件保証会社が被控訴人から支払を受けた本件保証料(本件借入金の4.5%)は,銀行等の金融機関が顧客に融資する際に系列の信用保証会社が信用保証して顧客から徴収する信用保証料(融資額の数%と思われる。)と比較して,決して高額とはいえず,本件保証料の決定が不合理であるとの事情は認められない(仮に,被控訴人が主張するように,本件保証料の決定につき,控訴人が主体的に関与していた事情があるとしても,本件保証料は,本件覚書〔乙18〕記載の保証料率5%の範囲内であるから,上記決定が不合理であるとはいえない。)。
そして,上記(2)の認定事実によれば,控訴人が本件保証会社を支配している関係にはなく,本件覚書上,本件保証会社は,債務者から支払を受ける保証料のうち,3.75%を代位弁済準備金として積立てをし,これを超える部分を事務手数料として収受するとされているのであって,被控訴人が本件保証会社に支払った本件保証料又はこれに相当する価値が本件保証会社から控訴人に利益還流される関係にあるとは認められない。
確かに,本件保証会社が保証料の中から積み立てた代位弁済準備金は,控訴人に対し代位弁済する際の原資になるから,その意味で保証料が本件保証会社から控訴人に還流される関係にあるといえなくはない。しかしながら,控訴人の顧客に対する貸付けにつき,本件保証会社が常に顧客に代わって控訴人に代位弁済しているわけではないし,保証料の一部は事務手数料として本件保証会社が収受しており,これによって本件保証会社が得た利益が,株式配当等を通じて控訴人に還流されているわけでもない。
以上によれば,本件保証料が利息制限法3条本文のみなし利息に当たると認めることはできない。他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。
(4) 被控訴人の主張の検討
ア これに対し,被控訴人は,要旨,① 利息制限法3条本文のみなし利息該当性について,貸主に最終的な利益が発生するように仕組まれた金銭の流れが存在すれば足り,控訴人に利益が還流されていることを要件とする必要はないと解すべきであるところ,本件信用保証契約上,上記のような金銭の流れが存在するといえる,② 仮に,控訴人に利益が還流されていることを要件とする見解に立つとしても,控訴人は,本件保証会社が借主から受け取った保証料名目の金員の中から一定の代位弁済を受けた場合には利得があるといえるし,代位弁済を受けていないとしても,本件保証会社に対し保証債務履行請求権という債権を有しているので利得があるといえ,また,控訴人が貸倒れによるリスクを回避するのであれば,自ら保証料を負担して本件保証会社との間で信用保証契約を締結すべきであるところ,控訴人は,保証料名目の金員(本件保証料)を被控訴人に負担させ,自ら負担すべき保証料の負担を免れているから,その意味で利得があるといえる,などと主張する。
イ しかしながら,まず,上記①の点に関する被控訴人の主張は,利息制限法3条本文の「債権者の受ける」という文言に反する解釈である上,平成15年判例等が判示するところにも反するものであって,採用することができない。
次に,上記②の点に関する被控訴人の主張のうち,前者の代位弁済又は保証債務履行請求権を有することによる利得の点について検討するに,これらの利得は,控訴人が本件保証会社との間で本件信用保証契約を締結したことにより必然的に享受する利益といえ,被控訴人が本件保証料を支払ったがために享受することのできる利益ではないし,かかる利益が常に本件保証会社から控訴人に還流されているともいえないから,みなし利息該当性の間接事実となるものではない。また,後者の保証料の負担を免れたとの点は,控訴人が貸倒れのリスクを回避するために自ら保証料を負担すべきであるといえるのか大いに疑問があるから,やはりみなし利息該当性の間接事実となるものではない。
ウ なお,控訴人は,平成3年判例を引用して,控訴人が被控訴人による本件保証料の交付により利得を得ていないと主張するのであれば,その立証責任を負う旨主張するが,平成3年判例は,「金銭の交付によって生じた不当利得につきその利益が存しないことについては,不当利得返還請求権の消滅を主張する者において主張・立証すべきである。」旨判示したものであって,金銭の交付を受けたことにより不当利得が成立した場合に,利得者が返還義務を負う現存利益の範囲(民法703条)について判示したものであるから,本件と事案を異にしており,適切でない。
エ したがって,被控訴人の上記アの主張は採用することができない。
2 本件期限の利益喪失特約の適否等(争点2)について
(1) 本件期限の利益喪失特約の適否等
(利息制限法1条1項所定の)制限利率を超える約定利息と共に元本を分割返済する約定の金銭消費貸借に,債務者が支払期日に元本又は約定利息の支払を遅滞したときには当然に期限の利益を喪失する旨の特約が付されている場合,同特約中,債務者が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとの部分は,同条項の趣旨に反して無効であり,債務者は,支払期日に約定の元本及び同項所定の利息の制限額を支払いさえすれば,期限の利益を喪失することはなく,支払期日に約定の元本又は利息の制限額の支払を怠った場合に限り,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である(平成18年判例,最高裁平成15年(オ)第456号,同年(受)第467号平成18年1月19日第一小法廷判決・裁判集民事219号31頁,最高裁平成16年(受)第424号平成18年1月24日第三小法廷判決・裁判集民事219号243頁参照)。
これを本件についてみるに,前記前提事実のとおり,本件期限の利益喪失特約は,平成18年判例のいう期限の利益喪失特約と同様の内容であるから,被控訴人が約定利息のうち制限超過部分の支払を怠った場合に期限の利益を喪失するとの部分は無効であるところ,被控訴人は,平成13年9月5日の約定支払日に約定の元本又は利息の制限額の支払すら怠ったのであるから,本件期限の利益喪失特約が定める期限の利益喪失事由に該当するものと認めるのが相当である。
(2) 被控訴人の主張の検討
ア これに対し,被控訴人は,要旨,① 債務者のした一連の弁済の中で,約定の元本と制限利率に基づいて計算した利息の合計額が当該支払期日までに支払われている場合には,期限の利益喪失特約は適用されない(ボトルキープ論)と解すべきであるところ,被控訴人は,平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき元本8万9834円及び制限利息25万6479円の合計34万6313円を上回る金員を同日までに支払っているから,本件期限の利益喪失特約は適用されない,② 利息制限法の趣旨や同法の制限解釈の必要性,事故の形式を採って制限利率を潜脱する高利を貸金業者が取得する危険性が高いことなどからすると,催告及び解除の意思表示の手続がなされて初めて期限の利益喪失特約が適用されると解すべきであるところ,控訴人は,上記の催告及び解除の意思表示の手続を執っていないから,本件期限の利益喪失特約は適用されない旨主張する。
イ まず,上記①について検討するに,期限の利益喪失特約の目的ないし機能は,相当な期間にわたって,利息の制限額を超える約定利息と共に元本を分割弁済する約定の金銭消費貸借契約において,債務者に対し,各回の約定どおりの分割弁済がされなかったときには一括弁済を義務づけるという制裁を課すことにより,各回の約定どおりの分割弁済を確保ないし担保することにあると解される。そして,債務の弁済に関する条項は,公序良俗に反しない限り,当事者が任意にこれを約することができるから,民法137条の規定する以外の事由によって期限の利益を喪失させる旨の当事者間の特約も,公序良俗に反しない限り,有効に成立すると解されるところ,債務者が法律上支払義務を負っている元本及び利息の制限額について,その不払により期限の利益喪失という不利益を課すことによって,その支払を確保ないし担保しようとすることが,債務者に不利益を強いることになるとは解されない。したがって,期限の利益喪失特約は,制限超過部分の限度で無効であるが,債務者が支払期日に約定の元本及び利息の制限額の支払を怠ったときは,期限の利益を喪失するものと解するのが相当である。そして,この理は,事後に制限利率に引き直して計算された元利金を債務者が当該期日までに支払っていたとしても同様というべきである。なぜなら,上記の場合に期限の利益を喪失しないと解すると,期限の利益喪失の特約をすることにより各回の約定どおりの分割弁済を確保ないし担保しようとした意義を没却することになるからである。
また,そもそも,制限利率を超過する利息の弁済は,民法491条により当然に残存元本に充当されるものであり(最高裁昭和39年(オ)第1151号昭和39年11月18日大法廷判決・民集18巻9号1868頁参照),元本に充当されることなく来るべき後の弁済期日のために控訴人に留保されるものではない。
したがって,被控訴人の上記①の点は,採用することができない。
ウ 次に,上記②について検討するに,本件期限の利益喪失特約は,約定の支払期日に1日でも支払を遅滞したときは,控訴人から何らの通知催告を要せず,被控訴人は当然に期限の利益を喪失することを定めたものであり,本件基本契約書(乙1)上,被控訴人の期限の利益を喪失させるに当たり,控訴人が催告又は解除の手続をすべきことを義務づけた規定はなく,本件期限の利益喪失特約を含む本件基本契約の合理的な意思解釈として,控訴人が上記の手続を執ることを約していたと解することもできない(なお,控訴人が被控訴人に交付した「領収書兼ご利用明細書」〔乙2の1~64〕の「ご注意」欄には,「期日を延滞されますと遅延損害金の適用となります。また解約となり元利一括請求となる場合もございます。」との記載があるが,かかる記載をもって,控訴人に対し,催告又は解除の手続をすべきことを義務づけたと解することはできない。)。
したがって,被控訴人の上記②の点も,採用することができない。
3 控訴人による期限の利益喪失の主張の信義則違反(争点4)について
(1) 事実の認定
前記前提事実に加え,証拠(乙1,乙2の1~64,乙8,乙9)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
ア 本件借入金につき,被控訴人が行った本件各弁済の経過は,控訴審原告側計算書記載のとおりであり(ただし,前記1の本件保証料を除く。),被控訴人は,平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき約定金(7万円)の支払を怠った(5日後の同月10日に7万円を控訴人に支払った。)。
イ 控訴人は,被控訴人から本件各弁済を受ける都度,「領収書兼ご利用明細書」(乙2の1~64)を被控訴人に交付していた。
上記アの支払を怠るまでの同明細書(乙2の1~7)には,「入金明細」欄に弁済金の通常利息及び元本への充当関係の記載があるほか,「次回お支払日」欄及び「次回ご請求額」欄にそれぞれ約定支払日及び約定金(7万円)の記載があり,約定金7万円の内訳(利息額及び元本充当額)についての記載もある。また,「ご注意欄」には期日を延滞すると遅延損害金の適用となり,解約となり一括請求となる場合がある旨の記載がある。
これに対し,上記アの支払を怠った後の同明細書(乙2の8~64)には,「入金明細」欄に遅延日数の記載や弁済金の延滞利息及び元本への充当関係の記載があるほか,「次回お支払日」欄及び「次回ご請求額」欄にそれぞれ約定支払日及び約定金(7万円)の記載があり,約定金7万円の内訳(利息額及び元本充当額)についての記載もある。そして,その下には,「平成13年9月5日から違約適用となっております。」との記載があり,「ご注意欄」には,上記日付で期限の利益を喪失しており,元利金を一括して支払うよう求め,期限の利益喪失日以降は遅延損害金の適用となる旨の記載がある。
このほか,本件基本契約で定められた遅延損害金の利率は年29.2%であるところ,上記各明細書の「遅延利率」欄には,上記アの支払遅滞の前後を通して(年)28%の記載があり,約定利息の利率(年28%)と同率である。
(2) 検討
ア 上記(1)で認定した事実によれば,控訴人は,被控訴人が平成13年9月5日の約定支払日に支払うべき約定金(7万円)の支払を怠った後,被控訴人に交付した「領収書兼ご利用明細書」(乙2の8~64)において,被控訴人から弁済を受けた分割弁済金のうち元本充当分以外を遅延損害金に充当する旨明示するとともに,被控訴人が期限の利益を喪失しているので元利金の一括弁済を求め,遅延損害金の適用があることを明示していたと一応いうことができる。
イ しかしながら,上記(1)アの弁済の経過(控訴審原告側計算書)によれば,被控訴人は,控訴人が期限の利益喪失と主張する同年9月5日の後も,約定支払日に遅れながらも,基本的に毎月規則的に弁済を継続し,控訴人は,月々の弁済を受け入れている。そして,その際に控訴人が被控訴人に交付した「領収書兼ご利用明細書」(乙2の8~64)をみると,上記(1)イのように,弁済金の遅延損害金への充当や期限の利益を喪失しているので元利一括弁済を求める旨の記載がある一方で,同年9月5日より前に控訴人が交付した「領収書兼利用明細書」(乙2の1~7)と同様,次回の支払日及び請求額としてそれぞれ約定支払日及び約定金(7万円)を記載し,7万円の内訳についても,単に「お利息額」と記載して当該利息の性質(同明細書の「入金明細」欄記載の項目に従えば,通常利息又は延滞利息)については明らかにしていない。加えて,「領収書兼ご利用明細書」(乙2の8~64)に記載された遅延利率年28%は,本件基本契約で定められた遅延損害金年29.2%と異なるばかりか,約定利息の利率28%と同率である。かかる記載は,被控訴人において,期限の利益を喪失した後であっても,控訴人が従前どおり本件基本契約で定められた支払方法に従って分割弁済をすることを求めているとの誤解を抱かせるに十分なものであって,被控訴人が上記(1)アのとおり分割弁済を継続していたことは,まさに被控訴人が上記のような誤解をしていたことを示すものということができる。そうだとすると,控訴人は,被控訴人がこのような誤解をするであろうことを想定しながら,あえて上記のような非常に紛らわしい記載を継続したものと評価せざるを得ない。
したがって,控訴人は,被控訴人に本件期限の利益喪失特約に該当する事由が生じても,直ちに被控訴人に対し一括弁済を求めたものとは解されず,その意思もなかったところ,上記のとおり「領収書兼ご利用明細書」の「遅延利率」欄記載の利率は,約定利息の利率と同率であることをも併せ考慮すると,控訴人による遅延損害金に充当する旨の表示は,制限利率を潜脱し,遅延損害金として高利を獲得することを目的として行われたものというべきである。
そうすると,以上の事実関係の下において,被控訴人に生じた支払の遅滞を問題にすることなく,その後も本件基本契約で定められた分割弁済方法,約定利息で計算した金額による弁済の受領を長年にわたり反復継続してきた控訴人が,被控訴人から本件不当利得返還請求を受けるや,何年も遡って本件貸付けにつき平成13年9月5日に期限の利益を喪失した旨主張して,利息制限法が定める最高限度額の遅延損害金の支払を求めることは,控訴人のそれまでの対応を前提として長年にわたり分割金の支払を続けていた被控訴人の信頼を裏切るものであり,従前の態度と相反する行動というべきであって,同法を潜脱することを意図するものであるから,信義則に反し許されないというべきである。
4 法定充当による計算の結果
前記3の説示によれば,本件各弁済に係る弁済金を制限利率に引き直して充当計算するに当たっては,被控訴人が期限の利益を喪失していないものとして扱うことになる。そして,本件基本契約で定められた利息は,期間計算を1年365日の日割計算とするものであるから,これらに従って充当計算をすると,本判決別紙控訴審利息計算書(以下「控訴審利息計算書」という。)記載のとおり,平成18年9月1日時点で18万1579円の過払金が発生していることになる。
5 控訴人の悪意の受益者性(争点7)について
貸金業者が制限利率を超過する部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち,民法704条の「悪意の受益者」であると推定される(最高裁平成17年(受)第1970号平成19年7月13日第二小法廷判決・民集61巻5号登載予定,裁判所時報1440号1頁参照)。
これを本件についてみるに,前記前提事実のとおり,貸金業者である控訴人は,被控訴人に対し,制限利率を超過する約定利率(年28%)で本件貸付けを行い,被控訴人から本件各弁済を受けているところ,本件各弁済に係る弁済金のうち制限超過部分について貸金業法43条1項の適用があり,かつ,上記特段の事情があることの主張立証がない本件では,控訴人は,過払金の取得について悪意の受益者であると推定されるのであり,この推定を覆すに足りる証拠はない。
したがって,控訴人は,過払金の取得につき悪意の受益者であると認められる。
6 まとめ
前記4で充当計算した結果に基づき,前記5の説示に従って,控訴人の取得した過払金につき民法所定の年5分の割合による利息を計算すると,控訴審利息計算書の「過払利息合計」欄記載のとおり,平成18年9月1日時点で5899円となる。
他方,前記前提事実のとおり,控訴人は,平成19年3月29日,被控訴人に対し,原判決主文第1項で支払を命じられた金員(18万7478円及びうち18万1579円に対する平成18年9月2日から支払済みまで年5分の割合による金員)を上回る20万2747円を支払っているところ,被控訴人は,附帯控訴及び訴え変更申立書において(平成19年6月25日の当審第1回口頭弁論期日で陳述),上記金員を過払金及び過払利息に充当している(相手方の援用しない自己に不利益な陳述)ことからすると,上記20万2747円を前記4の過払金18万1579円及び上記過払利息5899円の弁済に充当するのが相当である。
そうすると,被控訴人の本訴請求(当審拡張請求を含む。)は,その請求債権が弁済により消滅しているので,これを棄却すべきものであり,控訴人の反訴請求は,前示のとおり本件各弁済により被控訴人の過払となっているのであるから,これを棄却すべきものである。
第5結論
よって,控訴人の控訴(被控訴人の本訴請求を一部認容した部分に関するもの)に基づき,原判決主文第1項を取り消し,同部分に係る被控訴人の本訴請求を棄却し,控訴人のその余の控訴(控訴人の反訴請求を棄却した部分に関するもの)及び被控訴人の附帯控訴(当審拡張請求)はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 紙浦健二 裁判官 小池晴彦 裁判官 島岡大雄)
<以下省略>