大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 平成2年(ネ)286号 判決 1991年9月30日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴人ら代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人らは、連帯して控訴人らに対し各金一〇〇〇万円を支払え。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決、並びに、仮執行の宣言を求め、被控訴人ら代理人は、控訴棄却の判決を求めた。

二  当事者双方の主張及び証拠の関係は、当審における証拠につき当審記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用するほか、原判決事実摘示のとおりであるからこれをここに引用する。

理由

一  当裁判所も被控訴人らの請求は、失当として棄却されるべきものと判断する。その理由は、原判決理由説示(ただし、原判決一一丁裏一〇行目から一二丁表初行までを「以上の認定事実によれば、本件事故は、被告細木の運転の誤りによつて発生したものではなく、亡大野直人が自動車を運転中操縦を誤り同人自身が死亡するに至つた事故であることが認められるから、直人は、他人の運転により被害を被つた者からの損害賠償責任を認めた自賠法一六条に基づき、保険者である被告農協に対し損害賠償を求めることはできない。」に改める。)と同一であるから、これをここに引用する。

なお、敷衍すると、本件事故による自動車の損害は、運転席側(自動車右側)がひどく、乗員も運転席側の後部座席にいた池龍二が死亡し、反対側後部座席にいた森は生存していることからみて前部座席でも運転席にいた者が死亡したとみられる可能性が高いこと、ハンドルに付着した血液型はO型であるところ、直人の血液型はO型であるのに対し被控訴人細木の血液型はA型であり、同型の血液はハンドルには付着していないこと、直人は、助骨骨折の傷害を負つているが、これは、事故時ハンドルで胸部を強打したことによるものと推定されること等の事実関係(これらは、引用に係る原判決認定事実から明らかである。)に基づいて考察すると、本件事故時、事故車両を運転していた者は、被控訴人細木ではなく直人であつたと認定することには十分な客観性、合理性があることに加え、四人の同乗者のうち被控訴人細木以外の他の一人の生存者である森譲二が、原審及び当審において、「コインスナツクで大野を除く三人がうどんを食べた後、大野が事故車を運転し事故現場まで運転を続けた。」と明確にかつ、具体的に証言しており、右証言が故意に事実を曲げてされたものとみるべき客観的な事情は何ら存在せず、信用するに値するものであるから、本件事故時における事故車両運転者は直人であると認めることができる。救助時における車外に放り出されていた者の位置関係は極めて不明確であつて、これにより同乗者の座席位置を推定することは困難である。

当審における控訴人英子の本人尋問の結果も右の判断を左右するものではない。

二  よつて原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条及び九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 安國種彦 山口茂一 井上郁夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例