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高松高等裁判所 平成28年(く)74号 2016年12月21日

主文

本件各即時抗告をいずれも棄却する。

理由

本件各即時抗告の趣意は,主任弁護人菊池昌晴及び弁護人田代健連名作成の各即時抗告申立書に記載のとおりである。論旨は,被請求人に対する各刑の執行猶予の言渡しを取り消した原決定は誤っているから,これらを取り消した上,検察官の各刑の執行猶予言渡取消請求を棄却するとの裁判を求めるというのである。そこで,記録を調査して検討する。

被請求人は,(1)平成26年1月28日(同年2月13日確定),窃盗罪により,懲役2年,3年間執行猶予の言渡しを受け,(2)平成27年5月14日(同月29日確定),窃盗未遂罪により,懲役1年,4年間執行猶予,付保護観察の言渡しを受けている。平成28年(く)第74号に係る原決定は,被請求人が,平成28年6月から7月にかけて,3回にわたり窃盗に及んだこと(以下「本件各窃盗」という)を認定し,本件各窃盗は,更生保護法50条1項1号が定める保護観察対象者の一般遵守事項に違反したものであると認めた。そして,同原決定は,被請求人は,(1)(2)のように2度にわたって社会内更生の機会を与えられながら,(2)の言渡しから1年ほどで再び窃盗を繰り返しており,自力更生の意欲に欠けていることから,上記遵守事項違反の情状は重い(刑法26条の2第2号)として,(2)の執行猶予の言渡しを取り消した。さらに,平成28年(く)第75号に係る原決定は,上記のとおり(2)の執行猶予の言渡しを取り消したことから,刑法26条の3により,(1)の執行猶予の言渡しを取り消したものである。各原決定の判断は正当である。

所論は,(2)の執行猶予言渡しの取消しについて,被請求人は,平成28年4月,当時の夫が失踪したことで経済的,精神的に追い込まれ,一時的にクレプトマニアの治療を中断せざるを得なかったと主張するが,そうした経緯を考慮しても,被請求人が(1)(2)と同種の犯行を3回も繰り返したことに照らすと,遵守事項違反の情状が重いとした原決定に誤りはない。その他の所論を検討しても同様である。

よって,本件各即時抗告は理由がないから,刑事訴訟法426条1項により,いずれも棄却することとし,主文のとおり決定する。

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