大判例

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高松高等裁判所 平成5年(う)190号 判決

論旨は要するに,原判決は,原判示第1の1及び2において,被告人が,氏名不詳者と共謀のうえ,営利の目的で,2名の者に対し覚せい剤合計約1.499グラムを代金合計5万円(以下「本件代金」という。)で譲渡した旨認定しながら,被告人から右代金相当額を追徴せず,同人が右譲渡により現実に得た利益である5,000円を追徴するにとどめているが,本件代金は,「国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律」(以下「麻薬特例法」という。)14条1項1号にいう不法収益として没収の対象となるところ,本件においては,右現金の現存が確認できず,これを没収することができないため,同法17条1項により,右代金相当額である5万円を犯人である被告人から追徴すべきものであるから,原判決には,この点につき,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるというのである。

よって検討するに,記録によると,原判決は,原判示第1の1及び2において所論のいうとおりの事実を認定したうえ,「法令の適用」の欄において,麻薬特例法17条1項は,不法な利益を犯人に保持させず,これを剥奪するための規定であるところ,被告人は,覚せい剤の売買を委託されたにすぎず,本件代理の所有権を取得していないばかりか,現にその代金額の利益を享受してもいないから,これに相当する金額を被告人から追徴することは公正の理念に反し,被告人が本件各譲渡の報酬として得た手数料の範囲で追徴するのが相当である旨説示して,結局のところ,被告人から5,000円を追徴したことが明らかである。

ところで,麻薬特例法が新たに制定された経緯ないし同法の趣旨等にかんがみると,同法が不法収益等の没収,追徴の規定を設けた目的は,単にこれを犯人に保持させないためというにとどまらず,その剥奪を通じ,覚せい剤等の規制薬物に係る不正行為が行われる主要な要因を除去するとともに,薬物犯罪組織を壊滅させ,年々深刻の度を増す薬物濫用問題の解決を図ることにあると解すべきであり,そうだとすると,被告人のように薬物犯罪の犯罪行為に及んだ者に対しては,同人が不法収益等の所有権を取得し,または現にその利益を得たか否かにかかわらず,同法17条1項にいう「犯人」に該当するとして当該犯罪行為にかかる不法収益等の価額の全額を追徴すべきものと考えるのが相当である。

してみると,本件においては,被告人から本件代金の価額である5万円を追徴すべきであったから,追徴額を5,000円にとどめた原判決は,麻薬特例法17条1項の解釈,適用を誤ったものといわざるを得ず,この誤りが判決に影響を及ぼすことは明らかである。

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