高松高等裁判所 平成5年(ネ)292号 判決 1993年12月03日
控訴人
三好長子
被控訴人
岸田悦男
主文
一 原判決を取り消す。
二 本件を高松地方裁判所に差し戻す。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 高松地方裁判所が同庁平成四年(ケ)第二号不動産競売事件につき作成した平成五年五月一三日付配当表のうち、被控訴人に対する配当額を〇円と変更する。
3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。
第二 当事者の主張
原判決二枚目表一行目の「別紙物件目録一及び二記載の各土地」の前に「訴外三好常三郎(以下「訴外常三郎」という。)所有名義の」を、同五行目の「配当額を」の次に「手続費用五八万二七三〇円を含め」を、それぞれ加え、同裏二、三行目の「訴外三好常三郎(以下「訴外常三郎」という。)」を「訴外常三郎」と改めるほかは、原判決事実摘示(「第二 当事者の主張」の項)のとおりであるから、これを引用する。
理由
一本件は、訴外常三郎所有名義の本件各土地について担保権の実行としての不動産競売がなされた後、その売却代金について作成された配当表に対し、当該不動産競売にかかる担保権の被担保債権の債務者である控訴人が、配当期日に異議の申出をし、配当異議の訴(本件訴)を提起した事案であるところ、原審は、控訴人が本件担保権の被担保債権の単なる債務者であるから本件訴の原告適格を有しないことを理由として、本件訴を不適法として却下した。そこで、いわゆる物上保証における被担保債権の債務者である控訴人が本件担保権の実行としての不動産競売における配当異議訴訟の原告適格を有するか否かについて、以下判断する。
二民事執行法に基づく担保権の実行としての不動産競売手続については、同法一八八条により、不動産に対する強制競売に関する規定が準用されるところ、配当異議の申出等に関する同法八九条一項、九〇条一項にいう「債務者」は、担保権実行においては「債務者及び所有者」と読み替え、担保権実行に伴う差押時における担保物件の所有者のみならず、当該担保権の被担保債権の債務者も、配当異議の申出をすることができ、配当異議訴訟の原告適格を有するものと解するのが相当である。けだし、右被担保債権の債務者は、売却代金が自己のいかなる金銭債務に充当されるかについて法律上利害関係を有する者であるし、また、売却代金の配当手続の段階において、事情に通じた被担保債権の債務者につき配当異議の申出を認めることにより、配当手続を厳正にし、適正な売却代金配当の実施が期待でき、配当に関する後日の紛争を防ぐことができるからである。
したがって、控訴人は、本件の被担保債権の債務者として本件配当異議訴訟の原告適格を有するものというべきである。
三すると、控訴人が原告として提起した本件訴は適法であるから、これを不適法として却下した原判決は相当でなく、その余の点につき判断するまでもなく、取消しを免れない。
よって、民事訴訟法三八八条に従い、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 砂山一郎 裁判官 上野利隆 裁判官 渡邉左千夫)