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高松高等裁判所 平成6年(ネ)498号 判決 1995年12月18日

控訴人 株式会社西日本銀行

右代表者代表取締役 後藤達太

右訴訟代理人弁護士 植松功

三浦邦俊

作間功

亡石村壽史訴訟承継人

被控訴人 石村壽子

石村泰律

石村須壽香

石村勝彦

右法定代理人親権者母 石村壽子

右四名訴訟代理人弁護士 黒田耕一

主文

一  原判決を取り消す。

二1  被控訴人石村壽子は、控訴人に対し、金七九万八二四九円及び内金二四万三二九二円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一八パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金二四万七一一〇円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金三〇万七八四七円に対する平成二年二月二四日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合による金員を支払え。

2  被控訴人石村泰律、同石村須壽香及び同石村勝彦は、各自、控訴人に対し、金二六万六〇八二円及び内金八万一〇九七円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一八パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金八万二三七〇円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金一〇万二六一五円に対する平成二年二月二四日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合による金員を支払え。

三  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

四  この判決の第二項1、2は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

主文同旨(当審で請求を減縮)

第二事実関係

次に訂正、付加するほか、原判決の事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決の事実摘示の補正

1  二枚目表一行目の「請求原因」を「当事者の主張」に改め、同行目と同二行目の間に「一 請求原因」を加える。

2  二枚目表三行目の「利息一一・一パーセント(毎月一〇日利息を元本に組み入れ)」を「利息を左記のとおり定め」に改め、同九行目から同枚目裏三行目までを次のように改める。

「   記

(1) 利息は、年一一・一パーセントとする(年三六五日の日割計算。なお、延滞利息は元本に組み入れる。)。

(2) 右利息は、金融情勢の変化その他相当の事由がある場合には、原告は、一般に行われる程度のものに変更できる。

(3) 右合意に基づき、利息は、平成元年一一月一三日から〇・五パーセント引き上げられ、年一一・六パーセントとなり、平成二年二月二二日から〇・四パーセント引き上げられ、年一二パーセントとなった。

(二) 原告は、亡石村壽史に対し、右当座貸越契約に基づき、別紙一覧表≪省略≫1の「貸出額」欄記載のとおり貸し付けた(なお、同表の「入金額」欄記載のとおり分割弁済がなされた。)。

(三) 平成二年三月一二日(約定の同年二月一三日の分割弁済日の次回の分割弁済日)が経過した。」

3  二枚目裏五行目の「利息一〇パーセント(毎月一〇日利息を元本に組み入れ)」を「利息を左記のとおり定め」に改め、同末行から三枚目表五行目までを次のように改める。

「   記

(1) 利息は、年一〇パーセントとする(年三六五日の日割計算。なお、延滞利息は元本に組み入れる。)。

(2) 右利息は、金融情勢の変化その他相当の事由がある場合には、原告は、一般に行われる程度のものに変更できる。

(3) 右合意に基づき、利息は、平成元年一一月三〇日から〇・六パーセント引き上げられ、年一〇・六パーセントとなった。

(二) 原告は、亡石村壽史に対し、右当座貸越契約に基づき、別紙一覧表2の「貸出額」欄記載のとおり貸し付けた(なお、同表の「入金額」欄記載のとおり分割弁済がなされた。)。

(三) 平成二年三月一二日(約定の同年二月一三日の分割弁済日の次回の分割弁済日)が経過した。」

4  三枚目裏一行目から八行目までを次のように改める。

「 (二) 平成二年二月二三日(約定の分割弁済日)が経過した。

4  被告は、平成七年四月一九日に死亡した。石村壽子は妻であり、石村泰律、石村須壽香及び石村勝彦はいずれも子である。

5  よって、原告は、①請求原因1の元金残四八万六五八四円と②同2の元金残四九万四二二〇円と③同3の元金一〇〇万円中六一万五六九五円につき、その法定相続分に従い、

(一) 石村壽子に対し、①の金員の二分の一の二四万三二九二円と②の金員の二分の一の二四万七一一〇円と③の金員の二分の一の三〇万七八四七円との合計金七九万八二四九円及び内金二四万三二九二円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一八パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金二四万七一一〇円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金三〇万七八四七円に対する平成二年二月二四日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求め、

(二) 石村泰律、石村須壽香及び石村勝彦に対し、各自、①の金員の六分の一の八万一〇九七円と②の金員の六分の一の八万二三七〇円と③の金員の六分の一の一〇万二六一五円との合計金二六万六〇八二円及び内金八万一〇九七円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一八パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金八万二三七〇円に対する平成二年三月一三日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合、内金一〇万二六一五円に対する平成二年二月二四日から支払済みまで年一四パーセント(年三六五日の日割計算)の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因事実のうち、4は認め、その余は否認する。」

二  当審における新たな主張

1  控訴人

仮に、控訴人との間で本件1の契約を締結したのが佐野紀であったとしても、亡石村壽史は、昭和六三年五月二七日から同月三〇日までの間に、控訴人から簡易書留で郵送を受けたローンカードを佐野紀に交付し、同人の右契約締結行為を追認した。

2  被控訴人ら

控訴人の右主張事実は否認する。

第三判断

一  請求原因1(一)(本件1の契約の成立)・2(一)(本件2の契約の成立)・3(一)(本件3の契約の成立)について

1  本件1の契約書(≪証拠省略≫)、本件2の契約書(≪証拠省略≫)及び本件3の契約書(≪証拠省略≫)の亡石村壽史の氏名が同人の自署による事実は、筆跡鑑定がなされず、本件全証拠によっても明らかでないが、亡石村壽史名下の印影がいずれも同人の印章によるものであることは、当事者間に争いがないので、反証のない限り、右印影はいずれも亡石村壽史の意思に基づいて顕出されたものと推定され、その結果、民訴法三二六条の規定により右各文書全体が真正に成立したものと推定される。

2  そこで、反証の有無について検討する。

(一) 証拠(≪証拠省略≫、亡石村壽史本人)を総合すると、亡石村壽史は、松山市役所に勤務する技術系の公務員で、同市役所の住民課に勤務していた佐野紀とソフトボールを通じて知り合って付き合ううち、佐野のためにサラ金から金を借りてやったり、亡石村壽史自身がサラ金から借りるときは佐野に連帯保証人になってもらったりしてきたもので、平成元年一〇月には、佐野のために高利貸しから一五〇〇万円を借りてやったが、佐野は、同年一一月から行方不明になった事実が認められる。

(二) ところで、亡石村壽史は、原審における本人尋問において、本件1ないし3の各契約を締結したことはなく、勤務場所の松山市役所道路維持課の机の引き出しに入れていた亡石村壽史の実印を佐野が無断で本件各契約書に押捺したように供述し、≪証拠省略≫(亡石村壽史の本人調書)にも、同旨の供述記載がある。

しかし、①証拠(≪証拠省略≫、証人北村安則、同尾辻卓己)によれば、控訴人は、亡石村壽史に対し、本件3の契約に係る貸付実行の計算書を普通郵便で送り、本件1の契約に係るCDカードを昭和六三年五月二七日に簡易書留で郵送し、また、毎月本件3の契約に係る引き落としの金額と元本残額を記載した「返済予定明細表」を普通郵便で送り、二月と八月には本件1・2の各契約に係る「残高のお知らせ表」を普通郵便で送っていたが、亡石村壽史から何らの異議の申し出はなかったことが認められる。それに、②本件各契約書に押捺された亡石村壽史の印章は実印である(亡石村壽史本人)ところ、実印が勤務先の机の引き出しに保管されるようなことは通常考えにくく、たとえその事実があったとしても、昭和六三年当時、亡石村壽史は松山市役所五階の道路維持課に、佐野は同市役所一階の住民課に勤務していたこと(亡石村壽史本人)に徴し、右実印の所在場所を佐野が知っていたことを首肯しがたいばかりか、それを佐野が勝手に一時持ち出すことは容易でないと考えられる。これらの点に前示(一)の事実を合わせ考えれば、亡石村壽史の前記供述は、たやすく信用することができない。他に前記1の推認を妨げる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

3  そうすると、≪証拠省略≫の各契約書は、いずれも亡石村壽史の意思に基づいて作成されたものと推定される(なお、右の各契約書の亡石村壽史の氏名の記載者が誰かは、本件全証拠によっても明らかでないが、文書の真正とは、挙証者が当該文書の作成者と主張する者の意思に基づいて作成されていることを意味し、作成者の氏名を含む文書の実際の記載者が分からぬことはもとより、作成名義人の記名や捺印の代行の事実が明らかになっても、それだけでは右推定が妨げられるものではない。)。そして、≪証拠省略≫によれば、亡石村壽史が本件1の契約をしたこと、≪証拠省略≫によれば、亡石村壽史が本件2の契約をしたこと、≪証拠省略≫によれば、亡石村壽史が本件3の契約をしたことをそれぞれ認めることができる。

二  請求原因1(二)・(三)について

証拠(≪証拠省略≫、証人北村安則)によれば、控訴人は、亡石村壽史に対し、本件1の契約に基づき、別紙一覧表1の「貸出額」欄記載のとおり貸し付け、同表の「入金額」欄記載のとおり分割返済がなされた事実が認められ、平成二年三月一二日(約定の同年二月一三日の分割弁済日の次回の分割弁済日)が経過した事実は、顕著である。

三  請求原因2(二)・(三)について

証拠(≪証拠省略≫、証人北村安則)によれば、控訴人は、亡石村壽史に対し、本件2の契約に基づき、別紙一覧表2の「貸出額」欄記載のとおり貸し付け、同表の「入金額」欄記載のとおり分割弁済がなされた事実が認められ、平成二年三月一二日(約定の同年二月一三日の分割弁済日の次回の分割弁済日)が経過した事実は、顕著である。

四  請求原因3(二)について

平成二年二月二三日(約定の分割弁済日)が経過した事実は、顕著である。

五  請求原因4の事実は、当事者間に争いがない。

六  そうすると、控訴人の亡石村壽史に対する本訴請求は、正当として認容すべきであるのに、これを棄却した原判決は不当であって、本件控訴は理由があるところ、当審において被控訴人らが亡石村壽史の訴訟承継人となったから、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 豊澤佳弘)

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