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高松高等裁判所 平成6年(ラ)1号 決定 1994年2月23日

抗告人

日本教育開発株式会社

右代表者代表取締役

横山周平

右代理人支配人

上杉陽光

相手方

山内佐都子

主文

本件抗告を棄却する

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨は、「原決定を取り消す。本件を広島地方裁判所に移送する。」との裁判を求めるものであり、その理由は、要するに、「抗告人と相手方間の本件加盟契約二四条には、本件契約に関し紛争が生じた場合、抗告人の本店所在地を管轄する広島地方裁判所を専属的合意管轄裁判所とする旨約定されており、右約定は相手方も十分な理解のうえ了解したものである。専属的合意は民訴法三〇条の規定に則ったものであり、相手方の訴訟活動の都合のみ一方的に考慮した原決定は不当である。」というにある。

二一件記録によると、抗告人と相手方との間で締結された「加盟契約書」と題する契約書には、抗告人が主張する管轄に関する合意事項が記載されていることが認められるところ、抗告人の本店は広島市にあるから抗告人が被告となる場合は民訴法一条により、原告となる場合は同法五条によりいずれも広島地方裁判所が管轄権を有することになるので、右の合意の趣旨は、他の法定の管轄裁判所を排除して広島地方裁判所のみを管轄裁判所とすること、すなわち広島裁判所を専属管轄裁判所とする趣旨であると解することができる。

しかし、専属管轄の制度は、法が特に公益性の強い訴訟について法定管轄権をもつ裁判所中から特定の裁判所のみに管轄を認める特別な制度であるから、訴訟の当事者間において、公益性の有無とは無関係に特定の裁判所のみに管轄を認め、他の法定管轄裁判所を排除する合意をすることは許されないものというべきである。

したがって抗告人と相手方との間に前記管轄の合意ができたことを理由として、広島地方裁判所に移送を求める抗告人の申立ては失当といわざるを得ない。

三よって、抗告人の移送申立てを却下した原決定は結論において相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 安國種彦 裁判官 渡邊貢 裁判官 田中観一郎)

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