高松高等裁判所 平成8年(ラ)23号 決定 1996年8月16日
抗告人 長門待子
相手方 際田等
事件本人 際田栄一
主文
一 原審判を取り消す。
二 抗告人を申立人とし、相手方を相手方とする徳島家庭裁判所平成7年(家イ)第××号養育料請求調停事件は、平成7年9月6日審判に移行することなく調停が成立しないものとして終了した。
理由
一 記録によれば、以下の事実が認められる。
1 抗告人と相手方は、その間の長男として事件本人を有する夫婦であったが、抗告人の提起した訴訟により、平成3年11月8日、離婚並びに親権者を抗告人と定める旨及び相手方に対し事件本人の養育料として1か月4万円の支払いを命ずる判決が確定した。
2 その後、抗告人は事件本人を監護、養育していたが、平成7年5月17日、原裁判所に対し、本件相手方を相手方として、養育料の支払いを求める旨の調停を申し立てた。
3 原裁判所は、右申立てを、平成7年(家イ)第××号養育料請求調停事件として受理したが、前記養育料の支払いを命ずる確定判決があるので、抗告人に対し、右申立てをしたことにつき意向を確認したところ、抗告人は、右申立ての趣旨について、事件本人の養育のために仕事を辞め、経済的に困窮し、抗告人の両親にも援助を求めたため右両親も多大な経済的損失を被ったこと及び抗告人と前夫との間の子らも損害を被ったことを主たる理由として、損害賠償を請求するものであり、未払いの養育費の請求や養育費の増額を求めるものではない旨述べた。
4 右事件について、原裁判所の調停委員会において調停が行われたが、平成7年9月6日の調停期日において、家事審判官は、「調停委員会は、当事者間に合意が成立する見込みがないと認め、調停が成立しないものとして事件を終了させる」旨を宣した。
5 しかるに、原裁判所は、右事件につき、同日審判に移行する手続きを取り、家庭裁判所調査官の調査により、再度抗告人の意向を確認したところ、抗告人は、前記と同旨の返答をした。そこで、原裁判所は、平成8年2月23日、右事件は、家事審判法第9条1項乙類に親定する審判事件としての申立てではないことに帰するから、本来であれば、審判に移行せず、調停不成立により終了しているべきものであり、審判移行をすべきでなかったものであるとの理由により、抗告人の申立てを却下した。
二 右事実によれば、抗告人の原裁判所に対する申立ては、原審判も説示するように、審判に移行せず、調停不成立により終了しているのであるから、これを却下する旨の審判をすべきではない。
よって、原審判を取り消すこととして、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 渡邊貢 裁判官 豊永多門 大泉一夫)