大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和24年(控)1569号 判決 1950年4月05日

被告人

新居正夫

主文

本件控訴を棄却する。

当審における未決勾留日数中六拾日を本刑に算入する。

当審の訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人堀耕作の控訴趣意第一点について、

原審第一回公判調書に徴すれば原裁所は檢察官の請求により司法警察員作成にかかる中島彰の第二回供述調書につき証拠調をなし、檢察官は当時右中島彰に対する窃盜被告事件が別件として公判繋属中であつたため裁判官の許可を得て右供述調書の謄本を裁判所に提出した旨記載されているところ、本件訴訟記録には右供述調書の抄本が編綴されていること所論の通りである。しかし当裁判所が職権で取寄せた中島彰に対する窃盜被告事件記録に編綴されている同人の前記第二回供述調書原本につき檢討するに、前記抄本に摘録されている供述部分以外は本件被告人に何等関係のない供述であることが看取されるから、本件被告事件において檢察官が証拠調を請求したのは公判調書上は明確を欠くも右供述調書全部についてではなく、同調書中本件被告人に関係のある部分(右抄本の記載に該当する部分)のみについてであつて、裁判所も亦右部分について証拠調をしたものと認められる。而して刑事訴訟法第三百十条に所謂証拠書類の謄本とは或供述調書の一部が証拠調の対象となつた場合にはその部分の謄本を指すものと解すべきであるから、檢察官が前記中島彰の第二回供述調書中証拠調の行はれた部分の謄本としてその部分に該当する同調書の抄本を裁判官の許可を得た上裁判所に提出し、右抄本が訴訟記録に編綴されている本件は訴訟手続上違法の点はなく、又所論の如く整備されていない記録に基いて被告人が審理を受けたと断ずる余地もない。從て論旨は採用し難い。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例