高松高等裁判所 昭和24年(控)896号 判決
論旨は原判決は罪となるべき事実の判示及び証拠において理由不備の違法があると主張する。仍て被告人西内及び井上に対する原判決を検討するに、原判決(第一乃至第三の各事実)は本件各金員供与の趣旨につき「候補者西山茂幹を当選させる目的で何某に同候補者の選挙運動を依頼しその実費名目の下に(又は同候補者の為選挙運動をしてくれたことに対する実費弁償名目の下に)金何円を供与し」と判示し、またはこれを受けて「前同様(又は右同様)の趣旨の下に金何円を供与し」と判示していること所論の通りである。而して「実費名目の下に」または「実費弁償名目の下に」という語句によれば、原判示各金員が表面上は実費或は実費弁償として授受されてはいるがその実質は実費或は実費弁償に非ざることを一応窺い得るけれども、然らば如何なる趣旨の金員であるかは判文上必ずしも明確でない。また原判決の掲げる証拠によつては原判決認定の各事実全部に亘つて原判示各金員が如何なる趣旨の金員であるかを充分認めることができない。而して本件の如き事案において授受した金員が如何なる趣旨のものであるかは犯罪の成否を決する重要な条件であるから(本件供与の相手方は選挙運動者であるから若し純然たる実費と認められるものであれば衆議院議員選挙法第百十二条違反罪を構成しないものと解する)、単に「実費名目の下に」又は「実費弁償名目の下」にと判示するのみで如何なる趣旨の金員であるかを判示していない原判決は衆議院議員選挙法第百十二条第一項第一号、第三号又は第四号に該当する罪の判示として不充分であると謂わなければならない。従て原判決は理由不備の違法があり、論旨は理由がある。