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高松高等裁判所 昭和25年(う)1124号 判決 1952年2月29日

控訴人 被告人 高橋増一

弁護人 宇和川浜蔵

検察官 十河清行関与

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人宇和川浜蔵の控訴趣意は別紙に記載の通りである。

本件記録を精査し総べての証拠を検討するに原審の量刑は相当であつて弁護人の援用する事実其の他の情状を斟酌してもこれを非難することはできない。

尚本件被告人の犯行は、政府の免許を受けないで焼酎を製造しようと企て、愛媛県松山市衣山町八四番地中塚秀之進方の裏小屋で、昭和二十五年九月十四日蒸麦一斗五升位、米麹一斗二升位、水三斗位を桶に仕込んだ外、同月十五日、十七、十八日、二十日にそれぞれ蒸麦、米麹、水を桶に仕込み、同月二十一日収税官吏に検挙せられるまでの間、(一)同月二十日右仕込みの醪となつたものを蒸溜してアルコール分約二十五度の焼酎二斗位を製造し、(二)同月二十一日同様の方法で同様の焼酎二斗位を製造し、(三)検挙せられた際には右仕込みのアルコール分約十度の醪となつたもの二石九斗位及び(四)仕込むために麦二斗位を蒸して蒸酵としたもの約二斗五升を右小屋内に所持していた原判示事実であつて、かゝる一群の酒類密造の行為は酒税法第六十条第一項に該当する包括一罪と解すべきであつてこれと同旨に出た原判決の見解は相当である。

その他職権で調査するも刑事訴訟法第三百七十七条乃至第三百八十三条に規定する事由が認められないから同法第三百九十六条により本件控訴はこれを棄却する。

よつて主文の通り判決する。

(裁判長判事 坂本徹章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)

(控訴趣意は省略する。)

原審判決の主文及び理由

主文

被告人を懲役参月及罰金壱万五千円に処する。

右罰金を完納することができないときは金百円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

罪となるべき事実

被告人は政府の酒類製造の免許を受けずして、昭和二十五年九月予ねて知合の松山市衣山町中塚秀之進方裏空地を借受け同所に小屋を建てゝ同小屋で蒸溜器其の他の機具を使用して酒類を製造しようと企て

(一)同年九月二十日頃蒸麦一斗五升、米麹一斗二升を原料として、アルコール分約二十五度の焼酎二斗位を製造し

(二)同月二十一日頃蒸麦一斗五升、米麹一斗二升を原料として、アルコール分約二十五度の焼酎約二斗を製造し

(三)同月十七日頃から同月二十一日迄の間蒸麦八斗五升米麹七斗を原料として醗酵させアルコール分約十度の醪約二石九斗を製造し

(四)同月二十一日麦二斗を蒸して蒸酵二斗五升を製造したが収税官吏に発見せられてその目的を遂げなかつた。

ものである。

証  拠<省略>

適用法条

被告人の判示(一)乃至(四)の行為は包括一罪として酒税法第十六条、第六十条第一項、第六十三条の二、罰金等臨時措置法第四条、第二二条に該当する(懲役刑及罰金刑併科)刑法第十八条

刑事訴訟法第百八十一条

(昭和二五年一〇月二四日松山地方裁判所)

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