高松高等裁判所 昭和25年(う)298号 判決
刑訴法第三三五条に所謂「法令の適用を示す」とは、単に法条を羅列することではなく各犯罪事実に法条を擬律し若し科刑上一罪とするの関係又は加重減軽等の事由があれば、それ等についても法令の根拠を示してそれに応ずる措置をし最後に如何なる刑期又は額の範囲内において処断するものであるかを判り得る程度に法令の跡付けをすることを要求するものと解する。このことは上訴審の事後審査と関連することであつて、単に法令を羅列した丈けでは法の運用が正しかつたかどうかを審査することができないからである(従つて第一審において確定した事件の調書判決においては、適用した罰条を記載即ち法条の羅列が認められ(刑訴規則二一九条)る所以でもある)然るに原判決における法令の適用は被告組合と外一人の被告人に対し単に法文を羅列しただけであつて、果して被告組合に如何なる法条を如何なる趣旨で適用したかが判然としないから、敍上趣旨における法令の適用を示すに欠げるところがあり、理由不備の違法があると云わなければならないばかりでなく、その記載によつて忖度するに物価統制令第四〇条を掲げてあるから、被告組合の従業者である判示西岡甚充のした違反行為により被告組合を処罰したことは判るけれども、右西岡甚充の違反行為が前記第四〇条の内容を為す第三十三条乃至第三十五条、第三十七条一号乃至三号、第三十七条の二又は第三十八条の孰れに該るかが示されていない。換言すれば右第四〇条に所謂本条を特定する理由が附されていないし、素々右西岡甚充の判示所為は一面臨時物資需給調整法に反すると共に、他面物価統制令にも反しておるのであるから、刑法第五十四条第一項前段を適用したうえで併合罪の規定を適用すべきものではなかろうかと思われるのに、判示所為につき直ちに併合罪の規定を適用しておるのは法令の適用に誤りがあるか乃至は右刑法第五十四条第一項を適用しない理由が示されてない違法があり、該違法は被告組合の刑責の基礎となる違反行為の内容を確定するに影響するものであるから所論は理由がある。