大判例

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高松高等裁判所 昭和26年(う)212号 判決

本件訴訟記録並びに証拠内容を検討すると当初検察官より審判請求のあつた公訴事実は被告人は朝鮮人であるが昭和二十二年五月二日外国人登録令が公布即日施行せられた際現に本邦たる岡山県児島郡福田町に居住しており乍ら右施行の日より三十日以内に居住地を定めてその長に対し所要事項の登録の申請をしなかつたものであると云うのであつたが審理の経過よりみて被告人が右登録期間に居住していた地は右福田町ではなく福井県三方郡三東村であつたことが判明したがために検察官は原審第九回公判期日に於て右公訴事実中岡山県児島郡福田町とあるを福井県三方郡三東村と変更する旨を陳述し右変更に対し訴訟関係人に於て異議なく次でその変更せられた事実に基き証拠調が実施せられたのであるが原審は判決に於て右変更は公訴事実の同一性を害する訴因の変更であるから許されないと判断し最初の公訴事実に対し無罪の判決を言渡したものである。併し乍ら昭和二十二年勅令第二百七号外国人登録令附則第二項同令第四条の登録申請手続懈怠の罪の構成要件は(一)同勅令施行の際現に本邦に在留する(二)外国人が(三)所定期間内に居住地を定めて所定の手続により居住地の市町村の長に所要事項の登録を申請しなかつたと云う事項であり此の要件を充足する具体的事実として前記公訴事実が審判の対象に附せられたものである。その公訴事実の中基本的事実となつているものは被告人が(一)同令施行の日である昭和二十二年五月二日現に本邦内に在留していたこと(二)外国人(の範囲に入る朝鮮人)であること(三)所定期間内に(所定の)登録申請をしなかつたことであつてこの基本的事実に変更を来たさない以上公訴事実の同一性を害せられることはない。右登録期間中被告人が本邦中何処に在住したかと云うこと従つて登録申請手続は何処の市町村の長にすべきであつたと云うことは訴因を明確にする必要上公訴事実に於て明瞭にせねばならぬ重要な事項であるからその事実に関する変更は訴因の変更として取扱うのが相当でありその変更後の居住地が変更前のそれと地理上、社会生活上に関係が有ることは必要でない。

記録によつて本件審理の経過を顧みると検察官の右訴因変更の申立に対しては被告人及び弁護人に於ても異議のないところであり被告人は第二回公判期日に於て昭和十四年日本内地に渡り同二十二年十一、二月頃迄福井県三方郡三東村に居住し同年竊盗罪により懲役一年六月に処せられ福井刑務所に於て服役中同所で登録手続をした旨供述しているのであるから右変更は実質上被告人の防禦権行使に不利益を来たすものとも考えられない。又原審に於て適法に取調べられた福井市長熊谷太三郎作成の「登録申請有無の件照会に対し回答」と題する書面の記載によれば被告人は右登録期間経過後である昭和二十二年十一月二十六日登録番号第七六〇号を以て福井市に登録済のものであることを知ることができるのであるから検察官が右訴因の変更を申立てたことは正当であつて許可せねばならないものである。然るに原審が右変更に許すべからざるものと解し変更前の公訴事実について無罪の判決を言渡したのは刑事訴訟法第三百十二条第一項の規定に違反しその違反は判決に影響を及ぼすことが明かである。

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