高松高等裁判所 昭和26年(う)235号・昭26年(う)234号 判決
関税法第八三条第一項は、同項所掲の犯罪行為に供した船舶は犯人の所有するものの外、その占有に係るものをも没収する旨規定し関税法違反事犯の取締の必要上、刑法第一九条第二項の適用を排除し没収刑を設けたものではあるが、右はいわゆる占有は単なる所持即ち事実上の支配と解するは広きに失し、所有者の権利を保護すべき十分の理由があり、所有者の犠牲において船舶を没収すべき実質的根拠がない場合、例えば所有者の意思に基ずかない犯人の占有のごときは、同条項にいわゆる占有に該らないものと解するを相当とする。(大阪高等裁判所昭和二五年(う)第三〇五七号、同二六年三月一九日判決、福岡高等裁判所昭和二五年八月一八日言渡被告人佐藤正雄外二名関税法違反被告事件判決参照)本件につき考察すると、原判決が罪証に供した司法警察員作成の高司実・衛藤虎夫の各供述調書及び大蔵事務官作成の衛藤虎夫の質問調書等によれば、本件船舶三吉丸は高司実と株式会社大塚鉄工所との共有に係り、昭和二二年七月より一年間漁業経営のため傭船料月二万円及び水揚高の五分を支払うべき約旨の下に被告人長岡鶴一に貸与し、期間満了後再三再四船の返還につき交渉したが借主たる右被告人において所在を明にせず、擅にこれを本件密輸出入の用に供したものの如く認められる。原審はこの点につき審理をして、被告人等の本件船舶の占有が前記法条にいう占有に該るかどうかを明にした上裁判をすべきものであるのに、記録を精査しても右事実関係を確定することができない。即ち原審は本件船舶の没収の点につき未だ審理を尽さず、その結果事実を誤認したか、或は法律の解釈を誤つて不当に前記法条を適用した違法があり、その違法は判決に影響を及ぼすことが明であるから、本論旨前段は上敍の意味において理由があり、原判決は破棄を免れない。