大判例

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高松高等裁判所 昭和26年(う)433号 判決

論旨は所謂姻族関係が自然的血族関係と異る点及び法律婚主義の不合理を指摘し刑法第二百条の中配偶者の直系尊属に関する部分は憲法第十四条に牴触するものであり原判決が本件につき刑法第二百条を適用したのは法律の適用を誤つていると謂うのである。

仍て考察するに刑法第二百条は「自己又は配偶者の直系尊属を殺した者は死刑又は無期懲役に処す」と規定し殺人罪の被害者が加害者自身又はその配偶者の直系尊属である場合のみを他の殺人罪の場合に比し特に重く処罰する建前を採つているのは「すべて国民は法の下に平等である」旨を明言している憲法第十四条第一項の規定に違反する疑が多分に存し(凡そ殺人罪は個人の生命を被害法益とするものであるところ個人の生命はその貴さの点において人種、民族、年齢、性別、貧富、社会上の地位又は身分等により軽重のあるべきものではなくすべて同一に保護されなければならぬ法益であり、また被害者が加害者に対し如何なる身分法上の関係に立つかによつてその被害法益に軽重の差を生ずべき筋合のものでもない。他方加害者の背倫理性の点より観るも被害者が加害者自身又はその配偶者の直系尊属である一事を以て直ちにその背倫理性をかかる関係のない加害者の場合に比し常に重く視ることは必ずしも妥当ではない。蓋し法律上尊属殺に該る場合であつても社会に生起する事案は実に多種多様であり卑属の尊属に対する倫理を期待することが無理である場合すら存するからである)殊に自然血族である直系尊属の場合は暫く措くとしても所謂継親に対する殺人は普通殺人を以て律する今日それよりも父母的関係の遠い配偶者の直系尊属を殺した場合を尊属殺として重く処罰することは甚だ不合理不釣合であり、刑法第二百条の中配偶者の直系尊属に関する部分は憲法第十四条に牴触するとの所論は無下にこれを排斥し能わざるところである。しかし最高裁判所大法廷は昭和二十五年十月十一日尊属傷害致死に関する刑法第二百五条第二項の規定は憲法第十四条に違反しない旨の判決を下し右判例は被害者の配偶者の直系尊属である場合を除外しているものとは見られないから、最高裁判所(但し多数意見)は尊属殺人に関する刑法第二百条についても全面的に同条が憲法第十四条に違反しないとの見解を有するものであること明かである。従つて原判決が本件(被告人が妻の実父を殺害せんとして未遂に終つたもの)につき刑法第二百条第二百三条を適用したことを以て必ずしも憲法の規定に違反した法案を適用したものと断ずることはできず、原判決に法令適用の誤があるとはいえない。

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