高松高等裁判所 昭和26年(ネ)460号 判決
控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人が控訴会社に対し昭和二十三年一月十日附でなした戦時補償特別税の課税行為の無効であることを確認する、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張は控訴代理人において、
原判決事実摘示中「仮りに被告の主張のような契約が存在し、且つこれの給付が完了しているとしても右契約に基く給付行為は昭和二十年八月十五日以降に完了したものであるから(弁済期は同日以後であつて)課税の対象とならない」との予備的主張は撤回すると述べ、被控訴代理人において控訴人主張の如く課税対象が存在しないとしてもそれはひつきよう更正処分の存在しない戦時補償請求権を誤つて存在すると認定した違法があるというに過ぎずその請求権の存否並びに之に対する決済の存否は外観上明白ではなく行政上の認定をまたねばならぬのであるから、かような違法の存在は該処分の無効を来すのではなくただ取消の原因となるに止まる。けだし行政処分の無効はそれが単に重要な法規に違反したというのみでは足らずその法規違反が一見して明白であることを要すると解すべきであるからであると述べた外は原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。(各証拠省略)
三、理 由
控訴人が戦時補償特別措置法施行に際し八幡浜税務署長に対し金額約百万円につき「申告金額は終戦直前の受領か終戦直後の受領か調査未了だが一応申告する」旨を附記して同法に基く申告書を提出したこと、その後右申告の金額が課税の対象とならないとて同税務署長に対し申告の取消を通告したこと、八幡浜税務署長が昭和二十三年一月十日附通知書を以て戦時補償特別税の課税価格の更正決定を為し同通知書を控訴人に送達したこと、控訴人主張の如き差押が行われたことは当事者間に争がない。控訴代理人は控訴会社に対し八幡浜税務署長のなした本件課税価格更正処分は課税対象がないのに拘わらず課税価格を認定してなされたものであるから無効であると主張するに対し被控訴代理人は仮りに控訴人主張の如く課税対象が存在しないとしてもそれは畢竟前記更正処分は存在しない戦時補償請求権を誤つて存在すると認定した違法があるというに帰着するのであつて、かような違法は無効原因ではなく唯取消の原因となるに過ぎぬから右更正処分の無効確認を求める控訴人の請求はそれ自体失当であると主張するから、この点につき按ずるに、仮りに控訴人主張の如く課税対象が存在しないとしてもそれはひつきよう更正処分の存在しない戦時補償請求権を誤つて存在するものと認定した違法があるというに過ぎずかような違法の存在は該処分の無効原因となるものでなく、唯取消の原因となるに止まるものと解する。けだし行政処分の無効は単にそれが法規に違反したというのみにては足らず、その法規違反が重大であり且つその処分に外観上明白なかしが存在する場合をさすものと解すべきところ、本件の場合においては戦時補償請求権の存在を認定したことに違法があるというのであつてかような請求権の存否並びにこれに対する決済の存否は外観上明白でなく行政庁の認定にまたねばならぬ関係にあるものというべきであるからである。以上の如き控訴人主張の事実関係であつてみれば被控訴人のなした本件処分が仮りに違法だとしてもそれは取消の原因となるに止まり、その取消のない限り適法というの外はない。
してみれば本件課税処分の無効を主張しその確認を求める控訴人の本訴請求はそれ自体失当たるを免れないから本件控訴は結局棄却すべきものとし民事訴訟法第三百八十四条第九十五条第八十九条を適用し主文のとおり判決する。
(裁判官 前田寛 萩原敏一 裁判官近藤健蔵は病気のため署名捺印することができない。裁判官 前田寛)