大判例

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高松高等裁判所 昭和27年(う)1085号 判決

原判決挙示の証拠を綜合すると被告人は昭和二三年頃から愛媛県西字和郡三瓶町敷島紡績株式会社三瓶工場に雇はれ倉庫係として同工場内倉庫に於ける原綿及び製品の搬出、搬入特に入庫する製品であるチーズの数量の点検とこれが帳簿記入等の仕事に従事していたところ昭和二四年二月中旬頃同工場八幡浜倉庫の前に於て勤務中同僚の久保田四郎及び宇都宮利夫の両名から「チーズの計算を一俵不正に誤魔化して貰ひ度い」旨申向けられこれが暗黙の承諾を与へたこと、そこで同日同工場内の同倉庫に於て前記久保田四郎及び宇都宮利夫の両名が同工場の製品であるチーズ一俵(当時の時価十万円位)を窃取したこと、被告人が右両名から前記のような依頼を受け、右久保田等がチーズを同倉庫から窃取することが予見せられたに拘らず被告人が殊更これを看過しこの盗難を未然に防止するについて原審認定の通り何等の措置を取らなかつたこと及びその後に於て被告人が久保田四郎から右チーズの処分代金の内から金一万円を受取つていることを認めることができる、しかも右各証拠に依つても窺ひ得られるように同社の倉庫係は製品であるチーズが工場から倉庫に搬入されたときはその数量を確かめこれを所定の帳簿に記入しこれが保管と盗難等の事故発生を未然に防止すべき義務のあるものであるから同僚から前記のようなチーズの計算を一俵不正に誤魔化して貰ひ度い等と申込まれたときは同人等が同倉庫内からチーズを盗み出すことが予知し得られるのであるから倉庫係である被告人としては速かにこれが盗難防止の為に原判示のような適当な措置を採るべき職務上の義務があると云はなければならない、しかるに被告人がこれを制するでもなく会社の当該係の者に連絡する等の措置にも出でずこれを看過し却つてその態度に依つて暗黙の承諾を与へ久保田等に窃取の決意を固めしめその機会を容易ならしめたことは即ち不作為に依り窃盗を幇助したものと云はなければならない、蓋し他人の犯罪行為を認識しながらこれを防止すべき職務上の義務に違背し自己の不作為に依つてその実行を容易ならしめたときは不作為に依る犯罪の幇助ありと解するを至当とするからである、従つてこれと同一の見解に出た原審の認定は正当であつて原判決には所論のような事実誤認の違法はなく所論は結局独自の見地に立つものであつて採用できない、論旨は理由がない。

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