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高松高等裁判所 昭和28年(う)992号 判決 1954年5月11日

控訴人 被告人 久保儀平 外一名

弁護人 高橋正重

検察官 畠中二郎

主文

被告人久保儀平の控訴を棄却する。

原判決中被告人李相出に関する部分を破棄する。

被告人李相出を原判示第二の(1) (2) の罪につき懲役参月に、原判示第二の(3) の罪につき懲役五月に処する。

被告人李相出より原判示第二の(1) (2) の罪につき金三万二千三百三十円、原判示第二の(3) の罪につき金三万八千七百八十円を夫々追徴する。

原審における訴訟費用は被告人李相出の負担とする。

理由

被告人両名の弁護人高橋正重の控訴趣意は別紙記載の通りである。

控訴趣意中追徴に関する論旨について。

論旨は原判決がたばこ専売法第七十五条第二項により本件違反に係る葉たばこの価額を追徴するにあたり譲渡価格又は譲受価格を価額算定の基準としているのは失当であつて、法定の価格によるべきであると謂うのである。しかしたばこ専売法第七十五条第二項が「同条第一項の物件を他に譲り渡したときはその価額を追徴する」旨規定した法意は、当該違反行為者にその犯則物件によつて享受した不法の利益を保持せしめないために当該違反行為者よりその価額を追徴することとしたものと解せられるから、右追徴すべき価額は法定の価格と異り違反行為当時の取引価格即ち売買の実績があるときは売渡価格又は買受価格等を基準として算定するを相当と考える。従つて原審が原判示第一の(一)及び(三)の(1) の各葉たばこについてはその譲渡価格、原判示第一の(二)及び第二の各葉たばこについてはその譲受価格(他に譲り渡したときの価格が判然しないため)によつて夫々その追徴額を算定したのは蓋し正当であつて論旨は採用できない。

次に職権で調査するに、被告人李相出は昭和二十七年六月二十九日大阪地方裁判所においてたばこ専売法違反罪により懲役六月及び罰金十万円但し三年間懲役刑執行猶予の判決を受け該判決は昭和二十八年六月四日確定(上告棄却により)したことは同被告人に対する前科取調書(記録第九五丁)及び大阪地方検察庁より徳島地方検察庁に対する電信回答(記録第一五二丁)により明かである。従つて被告人李相出に関する原判示第二の犯罪事実中(1) 及び(2) の罪は右裁判確定前に犯したものであつて右確定裁判を経た罪と刑法第四十五条後段の併合罪の関係に立つものと謂わなければならない。然るに原審が右の点を看過し原判示第二の(1) 乃至(3) の各罪を刑法第四十五条前段の併合罪として処断し一個の主文を言渡したのは法律の適用を誤つて居り、右誤は判決に影響を及ぼすこと云うまでもないから、原判決中被告人李相出に関する部分はこの点において破棄を免れない。

仍て被告人久保儀平に関しては原判決を破棄すべき事由がないから刑事訴訟法第三百九十六条により同被告人の控訴を棄却することとし、被告人李相出に関しては量刑不当の論旨に対する判断を省略して同法第三百八十条第三百九十七条第一項により原判決中同被告人に関する部分を破棄し、同法第四百条但書の規定に従い当裁判所において自判することとする。

被告人李相出の罪となるべき事実及びこれを認める証拠は原判決の示す通りである。(但し原判示第二の(1) 乃至(3) の各事実)。

(法律の適用)

被告人李相出の原判示第二の各所為はたばこ専売法第六十六条第一項第七十一条第一号に該当するので所定刑中各懲役刑を選択し、原判示第二の(1) (2) の罪は前示確定裁判を経た罪と刑法第四十五条後段の併合罪の関係に立つから同法第五十条第四十五条前段第四十七条本文第十条により原判示第二の(2) の罪の刑に併合罪の加重をした刑期範囲内において同被告人を懲役三月に処し、原判示第二の(3) の罪につき所定刑期範囲内において同被告人を懲役五月に処し、原判示第二の各葉たばこは同被告人がいずれも他にこれを譲り渡して没収することができないから、たばこ専売法第七十五条第二項により主文第四項掲記の如くその価額(譲受価格による)を追徴することとし、原審の訴訟費用は刑事訴訟法第百八十一条第一項本文により同被告人をして負担させることとする。

仍て主文の通り判決する。

(裁判長判事 坂本徴章 判事 塩田宇三郎 判事 浮田茂男)

弁護人高橋正重の控訴趣意

原審では久保儀平に対しては懲役十月(三年間執行猶予)、李に対しては懲役八月に処し更に久保から金九万六百二十円、李から金七万一千百十円の夫々追徴するとの判決言渡がありました。

然るところ久保は執行猶予の恩典に預つていますが李はこの恩典に浴していません当然八ケ月刑務所生活を送らねばなりませんが公判調書の供述の通り同人は現在妻と離別し幼児等を連れて貧困な生活をしております、同人の入所後の幼児等の生活は想像に余りあるものがあります。何卒御寛大な判決を願います。

次に両名に対する追徴金でありますが右の各金額は夫々譲渡譲受価格によつている様で所謂闇取引の合算額の様でありますがたばこ専売法第七十五条第二項の追徴すべき価格とは法定の価格を指称するもので闇価格ではない筈であります。依て法定価格の追徴金言渡を御願致します。

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