大判例

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高松高等裁判所 昭和28年(ネ)143号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が昭和二四年六月二〇日附でなした、従前の宅地宇和島市湊町二番地の九、横新町二八番地の三合計三八坪三合一勺の換地予定地として、同市湊町一番地の一(仮番地)宅地三一坪四合二勺を指定する旨の処分を取消す」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求めた。当事者双方の事実上の主張は、次の事実を附加する外、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

控訴代理人の主張事実。(一)控訴人は本件換地予定地の指定通知書を昭和二四年六月二〇日に受領した。その頃から控訴人は度々市長に陳情し、市長は不服の理由を陳情書にして出せというので、昭和二五年四月八日附で陳情書を、同月一二日附で追申書を市長に提出したところ、同年六月二八日附で市長から、これを却下する旨の通知があつた。控訴人は右陳情を訴願とみなし、別に知事に対しては訴願を提出しなかつた。(二)本件換地予定地の指定は名を都市計画に藉り控訴人の権利を不当に侵害したもので特別都市計画法の濫用である。

被控訴代理人の主張事実。控訴人が市長に提出したのは陳情であつて訴願ではない。従て被控訴人はその陳情に対する結果を控訴人に通知したに過ぎない。控訴人主張右(二)の事実を否認する(各証拠省略)。

三、理  由

控訴人が本件土地の地上権者として昭和二四年六月二〇日に、控訴人主張のような特別都市計画法による換地予定地の指定通知を被控訴人から受領したことは当事者間に争いがない。

本訴は右指定処分の取消を求める訴である。(控訴人の主張は特別都市計画法一五条三項の補償金額に不服の趣旨を包含するが、本訴はその訴旨から見て同法二五条の訴ではない)ところが同法二六条の準用する都市計画法二五条によると、本件指定処分に対しては訴願が認められているから、行政事件訴訟特例法二条によると、その訴願裁決を経た後でなければその処分取消の訴訟を提起することができない。特都計法二六条の準用する都計法二六条は行政裁判所廃止後は空文に帰したものと解すべきである。それは同様の規定たる旧土地収用法八一条が新土地収用法一二九条、一三二条により訴願前置に改められていることからも推知できるであろう。(当裁判所昭和二六年(ネ)一〇五号同年九月二二日判決参照)。そして本件の訴願は地方自治法一五〇条、一五一条による市長の直接上級行政庁たる県知事に対し、行政処分を受けてから六〇日内に文書を以て為すべきことは訴願法二、五、八条により明らかである。

ところが本件につき控訴人が知事に対し訴願を提出していないことは控訴人の自認するところである。成立に争のない甲第三、六号証、同第五号証の一、二、三によると本件指定処分の通知された昭和二四年六月二〇日以前に、控訴人は再三陳情書を宇和島市長に提出したが当時いづれも不採用の決定を受け、右処分通知後は昭和二五年四月八日陳情書(甲第五号証の一)、同月一二日陳情追申書(同号証の三)を同市長宛に提出したが、同年六月二八日市長から不認容の通知を受けたことが認められる。控訴人は右陳情が実質上訴願であると主張するがその文面(前示甲第五号証の一、三の表題、宛名等の形式並にそれが六〇日の訴願期間を遠く経過して提出されていることなどから、之を訴願と解することは困難である。その他に有効な訴願が為されたことを認めるに足る資料は何もない。また訴願を経ないことにつき正当な事由があるものと認めるに足る資料もない。従て本訴は訴願を欠き不適法と言わねばならない。

なお仮に訴願を経ずに直に出訴できるものと解しても、その場合は控訴人が本件処分の通知をうけた昭和二四年六月二〇日から行特法五条の出訴期間内に訴を提起せねばならない。然るに本訴は二五年一二月二六日提起されたことは記録により明白で出訴期間を過ぎているからいずれにしても本訴は不適法である。

仮に本訴の提起が適法になされたものとして本案につき審按するに、当裁判所の判断は、原判決が原審検証の結果により認定した事実を同検証の結果と当審の証拠保全による検証の結果とにより認定し、更に次の点を附加する外原判決摘示の理由と同一であるから之を引用する。

(一)  原審証人加納綱雄の供述によると、被控訴人は既存建物の移動をできるだけ避ける必要上訴外土井晃に対し現地で交付する換地予定地の坪数に通常の減歩率以上多大の犠牲を負担させたので、同人に対しては旧位置を尊重して予定地を交付するのが相当であつたことが認められるからこの点に於ても同人に対する予定地の指定は不当と解し難い。

(二)  同証言に成立に争のない甲第四号証、原審検証の結果及び弁論の全趣旨を綜合すると、被控訴人が土井晃に現地で換地予定地を指定した三〇坪二五(原判示の約九〇坪以外の分)は土井が訴外今岡八千代の他の土地と交換した為右三〇坪二五を同人の権利に帰属させたい旨申出でたので、被控訴人がその分は今岡の換地予定地に指定したことが認められるから、その措置は不当といえない。

(三)  控訴人は訴外山下幸三、山下良雄に対する換地予定地は従前の地積より増加していると主張するが、原審証人山下幸三、山下良雄の証言によると、かえつて若干減少して指定されていることが認められ、原審証人中山照一の証言によると、同人に対する指定は従前より若干増加していることが認められるが原審証人加納綱雄の証言によると、建物や土地の状況によつては一定の減歩率を固執できない場合があり、中山照一の関係土地はその所有者が他の場所で公共用地を提供したので、その埋合せの意味で控訴人等近隣の者の減歩率に影響しない範囲で若干増加して指定されたものに過ぎないことが認められるから減歩の割合に多少差等があり、中には幾分増加したものがあつても必ずしも不当視できない。

(四)  原審証人寺田静男、清水豊稔、杉浦藤一、山下幸三の証言及び甲第一号証の内容中認定に抵触する部分は措信できない。

(五)  控訴人は本件換地予定地の指定は名を都市計画に藉り、控訴人の権利を不当に侵害するもので、権利の濫用であると主張するが、それを是認するに足る資料は何もないからその主張は採用できない。

以上によると、控訴人の本訴を排斥した原判決は相当であるから民訴法三八四条九五条八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 前田寛 太田元 森本正)

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