大判例

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高松高等裁判所 昭和29年(う)434号 判決

しかし原判決挙示の各証拠に依つて原判示事実は孰れも認定できる。殊に贈賄の趣旨については記録上明らかである原判示冐頭記載の事実関係を原判示島田周吉の富岡町農業委員会委員としての地位及びその職務と較べ、なほ、同人と被告人との従来の交友関係即ち本件当時迄両者の間に殆んど交際のなかつたこと、等から見て原判示二級酒一升もこれを単なる社交上の儀礼としての贈物とは認め難いのみならず、原判示第二の(1)、(2)の金一万円及び二万円の二口についてもこれを所論のように単なる旅費とのみ見ることはできない。これを当審の証拠調の結果から見ても、寧ろ却つて原判決に認定したように、所論の旅費をも含めた前記島田周吉の原判示尽力に対する謝礼として夫々これを供与したものと認めるのが相当であり、この点原判決には事実誤認の違法は認められない。ところで、所論は、本件は島田周吉が岡山行の必要がなく又岡山行の意思もないに拘らず殊更岡山行の必要を説き農林省岡山農地事務局への旅費として被告人を欺罔し収賄を仮装して被告人より二口合計三万円を詐取したものであつて、被告人は寧ろ詐欺の被害者であり、最早賄賂罪の成立する余地はないと主張するのであるが、なるほど原判決に掲げる証拠からも又当審の証拠調の結果に依つても本件二万円については福島照夫を通じ島田周吉から被告人に対し所論旅費の請求のあつたことはこれを肯認できるのみならず、島田周吉がその後右旅費を使つて被告人の為に前記岡山農地事務局に赴いたかどうか当審証人島田周吉の証言からも頗る曖昧であることは所論の通りであるが、しかし他方右証拠に依つて被告人としてもこれが要求に応じたとはいえ、その旅費をも含め原判示のように右島田の尽力に対する謝礼として、任意前記二口の出損を為したことは優にこれを肯認できるのみならず、右金額が孰れも所論の旅費のみとしては多額に過ぎ、なおその後、これが精算も為されていない事情等から見ても、そこに旅費をも含めこれを賄賂として供与する被告人の犯意が窺われるので、仮に島田周吉に所論のような欺罔の意思があつたとしても、同人の職務に関し被告人が賄賂としてこれを供与した以上贈賄罪の成立を妨げるものでない。結局原判決には所論のような違法はないので論旨は理由がない。

(裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 合田得太郎)

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