大判例

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高松高等裁判所 昭和29年(う)843号 判決

原判決がその判示第一として、起訴状には「被告人が住福燃料株式会社嘱託大平国時より同会社が新に工場設置するにあたり、国鉄から同工場に敷設する古軌条約二〇〇米の払下を受けるについて、速急に現品を必要とするため正規の払下契約成立前に便宜現品の引渡をされたい旨の請託を受け、昭和二六年三月頃高松市高松駅構内において同人からその謝礼として供与されることの情を知りながら現金一万円の供与を受けてその職務に関し賄賂を収受し」とあるのを、訴因変更の手続を執ることなく「被告人は住福燃料株式会社嘱託大平国時より、同会社が新に工場を設置するにあたり、国鉄から同工場に敷設する古軌条約二〇〇米の払下を受けるについて、速急に現品を必要としたところより、右払下契約の申請手続の促進方を依頼する旨の請託を受け、昭和二六年三月頃高松市高松駅構内において同人からその謝礼として供与されることの情を知りながら現金一万円の供与を受けてその職務に関し賄賂を収受し」と判示したことは所論指摘のとおりである。

論旨は右の如く起訴状に「正規の払下契約成立前に便宜現品の引渡をされたい旨請託を受け」とあるのを訴因変更の手続を執ることなく「払下契約の申請手続の促進方を依頼する旨の請託を受け」と判示したのは審判の請求を受けない事件につき判決をしたものであるというのである。

しかし「正規の払下契約成立前に便宜現品の引渡をされたい」というのも「払下契約の申請手続の促進方を願いたい」というのも両者とも結局依頼者の目的とするところは急ぐので早く品物が入手できるようになることを期待しての依頼であつて、早く品物が入手できるようになるための依頼の表現が異るだけのことである。従つて起訴状に「正規の払下契約成立前に便宜現品の引渡をされたい旨の請託を受け」とあるのを「払下契約の申請手続の促進方を依頼する旨の請託を受け」と判示しても、本件請託収賄の訴因としては同一であつて審判の請求を受けない事件について判決をしたことになるものではない。よつて論旨は理由がない。

(裁判長判事 谷弓雄 判事 渡辺進 判事 松永恒雄)

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