大判例

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高松高等裁判所 昭和30年(う)43号 判決

判決理由〔抄録〕

被告人は昭和二十六年九月徳島県の阿波麻植地方事務所に臨時雇として勤務し、その耕地課の乗用車の運転の業務に従事中、昭和二十九年四月十五日午後五時三十分頃同耕地課のジープ型自動車(徳三―一〇三六号)に同課員等三名を乗せて、前示耕地課に帰る為、被告人がこれを運転して麻植郡川田町(現時山川町)旗見通称チンヂュさんと言われる道路を進行中、その幅約三米の下り勾配約五十分の一の直線道路上前方約百米の左側に三、四名の子供がいるのを認め、更に同子供等との距離約五十米に近附いた時、そのうちの一人兼松スミ子がその道路を左側から右側に横切ったので、被告人は一、二回警笛を鳴らしたが、被告人に取っては左側の子供等は一見その儘右自動車が通過し終るまで退避しているもののように思われたので、時速約二十粁で進行を続けた。しかし自動車に乗りつけた者は、道路を連れの子供が横切った場合他の子供も、自動車が接近して来るのに拘らず不注意にもこれを無視して、前者に倣って道路を横切ったり或は子供は自動車が相当接近して来るまでは退避しておきながら、自動車が真近かに迫った時突然道路を横切ろうとすることがあるのを経験しているのであって、自動車運転者たる者も成人と異なる児童の精神作用とその行動に理解を持って、一見その自動車を路傍に退避しているかのように思われる子供がある場合にも、前示のような突発行動に出ることもあることを思い、思い遺りに満ちた注意を払い、幅約三米のような狭い道路では、その子供の脇を通過する際は即時に停車せしめうる時速四、五粁程度の超低速度にするとか、その子供の直前で一旦停車して、その子供にその儘退避するか又は道路を横切るように指示する等々とかして、自動車事故を未然に防止する注意義務があるものと言わなければならない。被告人は前示のような児童の不注意な行動に起因する交通事故もありうることに注意を払わず、一見して道路の左側にいる子供等は自動車が来ることに気附いているから自動車の通過し終るまでその儘退避しているものと速断して、その子供等の態度行動に深い注意を払わず、時速約二十粁でその子供等の脇を通過しようとしたため、同自動車がその最先端のバンバーとその子供等との距離が約一米八五に迫った時、その中の兼松直子(昭和二十四年八月三日生)がその連れの川下房恵の自動車が来るからとて制止するのをきかず、前示姉兼松スミ子に倣って、幅約二米の右道路を横断しようとして、同自動車の前面に飛び出したので、被告人は急停車の処置を取ったが間に合わず、同女児に同自動車の前面を衝突させ同児を転倒させ、因って同児に両上腕骨幹骨折及び右鎖骨骨折の全治約一ヶ月半を要する傷害を与えた、原判決認定の業務上過失傷害の事実を認定することができる。

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