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高松高等裁判所 昭和35年(く)21号 決定 1960年12月24日

少年 Y(昭一七・一一・二二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の理由は、記録に綴つてある法定代理人T名義の「少年事件再審査申請書」と題する書面記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

所論は、原決定には次の諸点において重大な事実の誤認が存するというのである。

論旨(一)及び(四)について。

所論は、少年は本件犯行計画には参画していないのみならず、また、その実行行為にも加担していないというのであるが、本件記録を調査するに、少年は本件犯行当日八幡浜市○○町○丁目○○○○喫茶店において共犯者K、S及びU等とともに大洲市に行き同市内で他人から金品を喝取することを謀議した上同市に赴き原決定説示のような各犯行に及んだことが認められるから、論旨は理由がない。

論旨(二)及び(三)について。

所論は、原決定説示の第四の腕時計の被害者○原○から直接強奪したのは少年ではなく共犯者Kであり、同被害者を殴打したのは少年ではなく他の共犯者であるというので、本件記録を調査して案ずるに、少年、U、K及びSの司法警察員に対する昭和三五年九月一九月付各供述調書○原○及び○野○の司法警察員に対する昭和三五年九月一八日付供述調書並びに○原○の検察官に対する同年一〇月五日付供述調書を綜合すると、○原○から直接同人の腕時計を強奪したのはKであることが認められるのであつて、右認定に反する本件記録中少年、K、S及びUの各審判調書中の同人等の各供述記載は前掲各証拠に照してたやすく採用できない。してみると、少年が直接○原○の腕時計を強奪したと認定した原決定は事実を誤認したというべきであるが、しかし本件記録によると、少年は前記共犯者三名とともに○原○から腕時計を強収することを共謀の上、Kにおいて右腕時計を強取し少年において○原○の反抗を抑圧するため所携の薪で同人の頭部及び左手背部を各一回殴打したことが認められるのであるから、右事実の誤認は決定に影響を及ぼさないというべきである。論旨は理由がない。

論旨(五)について。

所論は、犯行用のヒ首所持については少年は何等関係がないというのであるが、原決定は少年がヒ首を所持していたとかもしくはこれを犯行の用に供したとは何等認定していないのであるから、右所論は原決定を正解しないで独自の見解に立ち原決定を論難することに帰し、論旨は理由がない。

よつて、少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 三野盛一 裁判官 木原繁季 裁判官 伊東正七郎)

別紙(原審決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

第一 Kと共謀の上、昭和三五年九月一七日午後三時頃、大洲市○○町○丁目○保○一方横付近道路上において○田○文(一八年)に対し「お前ええネックレスやつとるのう、これ呉れや」と申し向け、この要求に応じないとどんな危害を加えるかもしれないような態度を示して同人を畏怖させ、その場で同人からネックレス一個(時価三〇〇円位)の交付を受けて、これを喝取し、

第二 K、S、Uと共謀の上、同日午後四時頃、同市大洲大洲職業安定所横広場において、○田○孝(一八年)に対し「金を都合してくれ、五〇円か一〇〇円いるのじや」と申し向け、この要求に応じないとどんな危害を加えるかもしれないような態度を示して同人を畏怖させ、その頃同所において同人から現金一〇〇円及び写真ネガ一組(時価二一〇円位)の交付を受けて、これを喝取し、

第三 右三名と共謀の上、同日午後四時三〇分頃、同市○○町○会喫茶店前付近道路上において○野○生(一六年)に対し「金を持つてないか、なんでもええけん出せ」と申し向け、この要求に応じないとどんな危害を加えるかもしれないような態度を示して同人を畏怖させ、その場で同人から現金一〇〇円の交付を受けて、これを喝取し、

第四 右三名と強盗しようと共謀の上、同日午後七時一五分頃、同市○○総社宮境内において、友達と雑談中の○原○(一七年)を取り囲み、同人に対し「今何時ぞ」と申し向け、同人がポケットより時計をとりだし時間をみようとした際、少年が矢庭にその時計を奪いとつた上所携の長さ約一メートル直径約四センチメートルの薪で同人の頭部及び左手背部を各一回殴打してその反抗を抑圧し、よつて同人所有の腕時計一個(時価三、〇〇〇円位)を強取したが右暴行により同人の左頭頂部、左手背部に全治一週間を要する打撲傷を負わせたものである。

(適条)

少年の上記所為中第一乃至第三の各事実はいずれも刑法第二四九条第一項、第六〇条に、第四の事実は同法第二四〇条前段、第六〇条にそれぞれ該当する。

(処分理由)

少年は知能は低く限界級でしかも、その性格は攻撃的、活動的で衝動性が強く気分が動揺し易くグループ内に入れば非常に簡単に逸脱行為に走り付和雷同的というより寧ろ卒先して主動的立場において重大犯罪をも敢行して憚らないもので、少年は本件非行が初発とはいえ、極めて計画的で且主動的で非行性は相当進行している。それ故少年をして更生させるためには強制教育によるほか他に途がないものと思料せられるので少年法第二四条第一項第三号、少年院法第二条を適用して主文の通り決定した。

(裁判官 矢野伊吉)

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