高松高等裁判所 昭和37年(く)9号 決定 1962年5月08日
少年 T(昭一九・三・一三生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、記録に綴つてある少年の保護者田○○○作成名義の抗告申立書に記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。
まず、職権をもつて本件抗告申立の適否につき判断するに、本件記録及び添附の少年調査記録を精査し並びに阿南市長の当裁判所宛の身上照会に対する回答書及び同市長作成にかかる少年の戸籍抄本によると、少年は、田○○を父とし○本○コを母として昭和十九年三月十三日出生したのであるが、その後昭和二十九年八月六日父母が協議離婚しその際少年の親権者は父○と定められたのであるところ、父母離婚後は少年の祖母田○○○(少年の父○の母)に事実上監護養育されて来たのであるが、法律上は父の単独親権に服していたのであつて田○○○が少年の後見人になつたような事実のないことが認められるのである。
さて、少年とその祖母田○○○との関係について考えてみるに、同女が事実上少年を監護養育していたことは前示のとおりであるから同女が少年法第二条第二項に所謂少年を現に監護する者として同法に所謂保護者に該当することは明らかであるが、少年法第三二条によると、少年の保護処分決定に対する抗告権者は、少年本人、法定代理人及び附添人と定められており、法定代理人でない保護者には抗告申立権はないといわなければならない。更に、少年法第一〇条第二項によると、保護者は家庭裁判所の許可を受けて附添人となることができるのに拘らず、記録を調査しても保護者田○○○が少年の附添人となつた事跡は認められない。そうすると、本件抗告の申立をした田○○○は少年法第三二条所定の抗告権者のいずれにも該当せず、結局本件抗告の申立は抗告権のない者からの抗告申立に帰し不適法であるというの外はない。
よつて、本件抗告の申立は不適式であつて、抗告理由に対する判断をなすまでもなく(なお、記録を精査しても、原決定の処分が著しく不当であるとは到底認められない。)棄却を免れないから、少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 三野盛一 裁判官 木原繁季 裁判官 伊東正七郎)