高松高等裁判所 昭和39年(ネ)259号 判決 1965年6月15日
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実並びに理由
控訴人代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は、控訴人に対し、金四、一三一、四八六円及びこれに対する昭和三九年六月二六日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、第一、二審分とも、被控訴人の負担とする。」との判決を、被控訴人指定代理人は、主文同旨の判決を求めた。
当事者双方の事実上の主張、法律上の見解は、別紙記載のほかは、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。
当裁判所は、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと考える。
その理由は、左に附加するほかは、原判決理由説示と同一であるからここにこれを引用する。
昭和三五年法律第一四号をもつて不動産登記法が改正され、同法第一〇五条が新設されたが、これは被控訴人が主張するところの理由による。即ち、仮登記に基づく本登記をなすについての手続の明確化と登記上利害関係を有する第三者の保護を考慮しつつ、公示の混乱を防止せんとするにほかならない。
控訴人は、本件の場合(控訴人のいう仮登記に基づき本登記をなす諸態様のうち一の場合)、登記上利害関係を有する第三者の承諾書またはこれに対抗しうる裁判の謄本を添付させることは、本登記をなさんとするものに不能ないし著しく困難な行為を強うることになるというが、必ずしもそうとはいえない。もし本登記をするにつき、その理由があるならば、右第三者の承諾がえられなくても、裁判では容易に従つてまた速かにその義務が認められよう。困難ありとすれば、それはむしろ本登記をするにつき、その理由があいまいであるというような本登記手続をなさんとするものの側に問題があるときであろう。
だから、不動産登記法第一〇五条が、本登記を、なさんとする当事者に右承諾書等添付の負担を要求するとしても、それは、まさしく仮登記、本登記という一つの制度内の問題にすぎず、しかも、右負担を要求するについては前述するとおりの合理的理由があり、その負担たるやさほどのものではなく、同条によつて、控訴人主張の如く本登記をなさんとするものの権利が剥奪侵害され、或は、その行使が妨げられるとは到底解しえられず、従つて勿論のこと乍ら、同条が憲法第二九条に反するものとはいえない。
控訴人の立法論にわたる主張については、触るる要をみない。
そうすると不動産登記法第一〇五条が憲法に反すること、公務員の措置が違法不当であることを前提とする控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないから棄却さるべきものであり、これと同趣旨の原判決は結局相当である。
よつて、民訴法第三八四条、第九五条、第八九条に従い、主文のとおり判決する。