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高松高等裁判所 昭和40年(ネ)221号 判決 1966年10月21日

控訴人 兵頭恵子 外二名

被控訴人 兵頭勝 外二名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実

控訴人らは(但し、控訴人兵頭弘一は当審口頭弁論期日に出頭しなかつたが、その陳述したものと看做された控訴状による。)、「原判決を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審分とも被控訴人らの負担とする。」との判決を、被控訴人ら代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否は、左のとおり附加する外は、原判決事実摘示と同一であるから、ここにこれを引用する。

被控訴人ら代理人は、控訴人恵子、同弘一の、被控訴人らは、同控訴人らの遺贈減殺請求により、原判決別紙目録記載の不動産(以下本件不動産という。)につき、更正登記手続を求めるべきであるとの主張に対し、

「訴外亡兵頭宇治吉は、その生前において、控訴人恵子の先代亡兵頭斉に対し、その生計の資本として贈与を行い、更に、控訴人弘一に対し、その生計の資本として、及び婚姻のため贈与を行い、控訴人弘一、右斉ひいては控訴人恵子、何れについても、その額は、同控訴人らの遺留分(一五分の一)を超えるものであるから、同控訴人らの遺贈減殺請求は失当である。」

と述べた。

理由

本件不動産が、もと訴外亡兵頭宇治吉の所有であつたこと、同人が、昭和三八年一二月三日死亡したこと、本件不動産につき、被控訴人ら主張の如き登記がなされていることは当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第一号証の一、二、同第二号証の一ないし三、同第四号証の一ないし二一、控訴人妙子本人尋問の結果によれば、宇治吉の相続人は、控訴人ら、被控訴人ら六名であつて、控訴人兵頭妙子は、宇治吉の妻、被控訴人ら三名は、何れも宇治吉と控訴人妙子との間の子、控訴人兵頭弘一は、宇治吉と先妻亡兵頭正子との間の子、控訴人兵頭恵子は、宇治吉と正子との間の子亡兵頭斉の子(代襲相続人)であり、右登記もそれぞれその相続分に応じ、控訴人妙子は一五分の五、その余の控訴人らは、何れも一五分の二宛の持分でなされていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

ところで、被控訴人らは、本件不動産所有権を宇治吉の遺贈によつて取得したと主張するところ、成立に争いのない甲第三号証、控訴人妙子本人尋問の結果から、被控訴人ら主張の如くに昭和三八年一一月九日宇治吉が、民法第九六九条所定の方式に従つた公正証書によつて、本件不動産その他の財産を相続権のある被控訴人らに遺贈したことを認めえ、右認定に反する証拠はなく、前述同人の死亡により、死亡の時からその効力が生じ、被控訴人らは本件不動産の所有権を取得(共有)するに至つた(被控訴人らは、本来相続人であるから、本件不動産中農地の所有権移転につき、農地法所定の許可は必要がないと解する。)ものということができる。

控訴人恵子、同弘一は、それぞれその遺留分(一五分の一)に基づく右遺贈の減殺請求により、被控訴人らは、本件不動産につき、更正登記手続を求めるべきであると主張する。しかし前記の如き被控訴人らの、控訴人弘一、控訴人恵子の先代斉は、何れも同控訴人らの右遺留分を超える贈与を受けていたとの主張事実は、右甲第三号証、控訴人妙子本人尋問の結果、弁論の全趣旨により認めうるところであるから(この認定を覆すに足りる証拠はない。)、同控訴人らの遺贈減殺の請求は失当で、右主張は採るをえない。

そうすると、被控訴人らが、本件不動産の所有権に基づき、控訴人らに対し、本件不動産の前記登記の抹消を求める本訴請求は理由があり、これを認容すべきもので、原判決は、結局相当である。

よつて、民訴法第三八四条、第八九条、第九三条、第九五条に従い、主文のとおり判決する。

なお、原判決主文及び事実摘示中右登記受付日が「昭和三九年八月一一日」と記載されているが、これを「昭和三九年八月七日とする。

(裁判官 呉屋愛永 杉田洋一 鈴木弘)

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