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高松高等裁判所 昭和41年(ネ)285号 判決 1968年4月15日

控訴人被控訴人(原告)

松原幸子

被控訴人(被告)

宇摩陸運株式会社

控訴人被控訴人(被告)

石川武行

主文

本件各控訴を棄却する。

当審における訴訟費用中本件各控訴に要した費用はそれぞれその控訴人の負担とする。

事実

第一審原告(以下単に原告という。)訴訟代理人は原判決中原告敗訴の部分を取消す、第一審被告(以下単に被告という。)らは連帯して原告に対し、金五二五万二七四四円、およびこれに対する昭和三八年一〇月一日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一・二審とも被告らの負担とする。との判決を、被告石川の控訴につき控訴棄却の判決を、被告会社訴訟代理人は原告の控訴を棄却する、との判決を、被告石川訴訟代理人は、原判決中被告石川の敗訴部分を取消す、原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも原告の負担とする、との判決を求めた。

〔証拠関係略〕

理由

当裁判所の事実の認定、法律上の判断は次に付加訂正する外原判決理由の記載と同一であるからこれを引用する。

原判決理由一〇・一一行目「証人森田日出行の証言」の次に「当審証人赤瀬豊子の証言」を加え、同二〇行目「被告石川は」以下「同衾した。」までを削り、同所に「同宿した。」を加え、同二六行目「自己の車の、云々同乗させ」を「自己の車に同女らを見物の目的で同乗させ」と訂正する。

原判決理由四、の一四行目「本件につき」以下同項末尾(一八行目)迄を削り、次のとおり加える。

「同法条を適用してもその結論は異ならない。即ち自賠法は民法の特別法として危険責任の思想を加味し、民法の法条以上に広く自動車の運行供用者の責任を認めんとするものであることは論ずるまでもない。

しかして被告会社が同法第三条の運行供用者に該当すること、同乗車たる原告が同法条にいう「他人」に該ることは何れも前示認定に照し多言を要しない。

しかし運行供用者の責任が生ずるためには右運行供用者の「自己のためにする運行」による事故なることを要するものと解すべきところ、本件事故当時の被告石川の運転が業務の執行中であつたことは前認定のとおりであつたとしても、原告を同乗せしめたことはこれが運行業務に何ら関係のない前示のような被告石川との行楽のためであつたのであるから、その限りにおいて業務とは何ら関係がなかつたものという外はない。そうである以上被告会社に対し運行供用者として右法条による責任を問うことを得ない。

尤も被用運転手の無断運転中の事故についても運行供用者の責任が肯定せられる点からすれば、少くとも本件の如く、業務に従事中の運転を利用した如き場合(もしこの場合過つて通行人に傷害を与えたときは運行供用者として被告会社は責任を免れ得ない。)にも、均衡上供用者責任を肯定するのが至当とも考えられなくもない。ことに業務と関係のない同乗の如き事態も今日のごとく車両の激増と、自動車自体の性質上それほど異例の事態でなく、むしろかかる場合の事故も激増していること、いわんや交通不便の山間部においては好意的同乗の事例が少くないこと等をも考慮すれば、運行供用者にとつても同乗車に対する事故が予測し得ない事故であるとも断じ得ないところである。

しかしこれらの場合にもある程度供用者責任を認むべきか否かは将来立法的に考慮せられるのは別として前記法条の解釈として本件の如き場合に運行供用者の責任を肯認することはできない。

当審証人赤瀬豊子の証言、被告石川本人の供述も上記認定(原判決理由引用)を動かすものではない。

以上の次第であるから原告の請求は原判決認容の程度において正当であるから、これと同旨に出た原判決は相当で、原告の被告両名に対する控訴、ならびに被告石川の控訴は何れも理由がないから、これを棄却すべきものとし、控訴費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 橘盛行 合田得太郎 鈴木弘)

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