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高松高等裁判所 昭和43年(ネ)182号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕控訴人が、被控訴人塩田佐二に対する土庄簡易裁判所昭和三九年(ロ)第九号仮執行宣言付支払命令に基づき、預入名義人塩田佐二商店債権者代表山本秀登、第三債務者株式会社百十四銀行なる原判決付目録記載の普通預金債権につき、昭和三九年五月二八日高松地方裁判所より債権差押並びに転付命令を得、右命令は翌日右銀行に、又翌月二日被控訴人塩田に夫々送達せられたことは何れも当事者間に争いはない。

控訴人は右預金債権の預金者は被控訴人塩田であると主張し、被控訴人等はこれを争うので以下この点について判断する。

<証拠>を総合すると、被控訴人塩田は塩田商店の商号で石炭、セメント等の販売業を営んでいたが、昭和三九年二月一二日不渡手形を出して倒産したこと、そして右同日から翌一三日にかけて被控訴人塩田方に大和スレート、浅野セメント、宮山モーター等大口債権者及び債権者飛岡商店の代理として被控訴人山本等が集まり、被控訴人塩田の資産並びに負債の状況を調査した結果、総債権者四一名を確定し、且右財産状態から同被控訴人の再建は不可能であるとの結論に達したこと、そして同月一七日同被控訴人方で債権者集会を開いたところ控訴人を含めて約三〇人の債権者が集まり、同集会において被控訴人山本外五名の者が債権者委員に選出され、更に同被控訴人が債権者委員長に選ばれたこと、又被控訴人塩田は右債権者集会において右委員等に対し同被控訴人の有する一切の資産の処分並びに右処分によつて得られた代金等を各債権者に対する弁済に当てることを委ねることし、その趣旨を明確にする為乙第一号証の譲渡証を作成して債権者委員長である被控訴人山本に交付したこと、そこで被控訴人山本及び各委員等は夫々手分けして被控訴人塩田所有の動産類を逐次売却処分し、又被控訴人塩田の協力を得て同被控訴人の売掛債権の回収も逐次行ない、これ等の金員は何れも債権者等に分配する為に被控訴人山本の手許に集めていつたこと、そこで同被控訴人はこれ等の金員を分配に適する一定の金額に達するまで銀行預金として保管することとし、同年三月二日株式会社百十四銀行内海支店に塩田佐二商店債権者代理山本秀登名義をもつて先ず四万三、八六〇円を預入し、爾後逐次集まる前記処分代金等を同預金口座に預入し、同年五月一一日現在六八万六、六四八円に達したこと、(これが本件預金である。)右預金の為の届出印は同被控訴人所有の印章を用い、その印章並びに預金通帳は右預金開始後引続き同被控訴人において保管していること、ところが同年五月二八日に右預金債権につき控訴人によつて前記のとおり債権差押並びに転付命令が発せられたので右金員を各債権者に弁済の為支払うことは不可能となつたが、その後に同被控訴人の手許に集つた前記売却代金等については同年一一月上旬同被控訴人において各債権者に対しその債権額に応じて分配したものであること、以上の事実を夫々認めることが出来る。

以上認定の事実によると本件預金債権の預入金員は被控訴人塩田の資産を処分した代金及び同人の売掛債権を回収した金員であるが、同被控訴人は右金員を同人に対する各債権者へ弁済として支払つて貰う趣旨で債権者委員会の委員長である被控訴人山本に交付したものであつて、被控訴人塩田の預金とする趣旨で右山本に交付したものではないのであり、而して被控訴人山本は右金員を各債権者に弁済として支払いするまで同人の責任において保管する必要があるところから、右保管方法として本件預金をなしたものであるから、同被控訴人は本件預金を自己の預金として預入したものであることは明らかである。又右預金の名義である塩田佐二商店債権者代表山本秀登なる表示も右塩田の代理人としての資格を示すものではなく、塩田の債権者の代表なることを示し、山本個人の財産たる預金と区別してその委任事務の責任を明確にする趣旨のものと解するのが相当である。更に右預金に用いた印章及び預金通帳も被控訴人山本が自ら保管しているのであつて、以上の点からすると本件預金の預金者は被控訴人山本であることは明白というべきである。

そうすると本件預金債権が被控訴人塩田に帰属することを前提とする本訴請求の失当なことは明白であり、これを排斥した原判決は結局正当であつて本件控訴は理由がない。(合田得太郎 谷本益繁 林義一)

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