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高松高等裁判所 昭和45年(く)28号 1970年10月29日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は要するに、少年を初等少年院に送致する旨の原決定は不当であり、むしろ教護院へ送致するのが相当である、というのである。

そこで記録を調査して検討するに、少年の身許は不詳であるが、少年の供述するところによれば、少年はもと大阪市に居住していたところ、九歳の頃両親に死別し、その後は全国各地を転々として浮浪し、盗みを重ねながら生活していたのであるが、昭和四五年八月二三日愛媛県大三島から今治に至る船中で本件窃盗を犯して補導を受けるに至つたものであり、右のような少年の経歴、保護者の欠如、浮浪癖、非行の反覆性等を考慮すると、少年の非行癖や性格を矯正し、その保護、育成をはかるためにはこの際少年を初等少年院に送致することが必要であり、教護院へ送致することは適当ではないと認められる。

そうすると、原決定は相当であつて、本件抗告は理由がないから、少年法三三条一項によりこれを棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 浮田茂男 裁判官 三木光一 奥村正策)

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