高松高等裁判所 昭和47年(行コ)7号 判決 1972年10月31日
徳島市中徳島町一丁目六六の九
控訴人
高橋重行
同市幸町三丁目六〇番
被控訴人
徳島税務署長
内田敦見
右指定代理人
岩部承志
同
萩原義照
同
松下耐
同
大西敬
同
真鍋一市
右当事者間の贈与税課税処分取消等請求控訴事件につき、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一、控訴人は、「原判決を取消す。被控訴人が控訴人に対して昭和四一年九月九日付徳所(資)第五六号をもつてした昭和三八年度及び同三九年度分の贈与税並びに無申告加算税の各賦課決定(但し、昭和三九年度分の贈与税額並びに無申告加算税額については昭和四三年三月五日付で減額更正されたもの)は、無効であることを確認する。訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。
二、当事者双方の主張、証拠の提出、援用及び認否は、原判決の事実摘示と同一であるから、ここにこれを援用する〔但し、原判決八枚目裏一一行目「第一〇号証」の次に「(第四ないし第七号証はいずれも写)」を挿入する〕。
理由
一、当裁判所の判断も、次に附加するほか、原判決理由の説示と同一であるから、それをここに引用する(但し、原判決一二枚目表末行「以上の事実が認められ、」の次に「この認定に反する乙第一〇号証の記載部分は措信するに足らず、」を挿入する)。
(一) 本件の如き課税処分は、課税対象の実相に則してなされるべきであり、財貨の移動を徴表する外形的現象が存するからといつて、軽々しく課税処分をなすべきものでなく、慎重な調査判定が要請せられるべきことはいうまでもないのであつて、本件の如き課税対象に関する誤認は、重大な瑕疵と評されなければならない。
(二) しかしながら、右の瑕疵により本件課税処分が無効であるとするためには、同瑕疵が処分成立の当初から、その処分の外形上、客観的に明白である場合でなければならないのであり、その判定に当つては、処分庁が怠慢により調査すべき資料を見落したかどうかといつた瑕疵の原因となつた事情の有無などは斟酌されず、当該瑕疵が一見して看取しうるものであつたかどうかによるべきものと解すべきである。
そこで、この見地から本件課税処分の瑕疵の明白性につき検討すると、原判決も説示するように、原審証人岩沢泰男の証言によると、被控訴人は、積極的には、本件土地の所有名義が長らく中野義夫に属していたこと、そして昭和三八年一〇月平井忠一に対する本件土地の売却が右中野名義でなされていること、消極的には、本件課税処分がなされる以前に、控訴人が税理士を伴い徳島税務署で本件の調査を担当していた岩沢泰男に面接した際、本件土地が自己の所有に属する旨を強調していたものの、それを裏付ける証拠を提出しなかつたことなどを総合的に考慮して、本件課税処分に及んだことが看取されるのであり、この認定を動かすに足る証拠はない。
そうだとすれば、本件課税処分の基礎となつた被控訴人の推論も十分に考えうる帰結であつて、その誤認の瑕疵が一見して看取しえたと断することは困難であり、他に右の誤認を明白な瑕疵と解すべき事情も窺いえない。したがつて本件課税処分における被控訴人の課税対象に関する誤認をもつて、本件処分の無効原因とすることはできない。
二、すると控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当であつて、本件控訴は理由がない。
よつて本件控訴を棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用のうえ、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 合田得太郎 裁判官 谷本益繁 裁判官 石田眞)