大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和52年(ネ)82号・昭52年(ネ)189号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

控訴人(一審原告)X1〜4らは、国鉄共済組合から共済年金を受給していたAの死亡による逸失利益として、一審で主張していた三七七万七九五三円を、事故からすでに三年を経過した控訴審において九八六万五八四〇円に、又、X1は、固有の慰藉料を、同様に控訴審において五〇〇万円にそれぞれ拡張した。

控訴人(附帯被控訴人) 尾方喜美栄

控訴人 尾方敬志

同 佃靖子

同 岡田幸子

右四名訴訟代理人 三野秀富

被控訴人(附帯控訴人) 植原聰雄

右訴訟代理人 熊野勝之

【判旨】

また、被控訴人は、右共済年金損害金の拡張部分六〇八万七八八七円について消滅時効を主張している。

記録によると、控訴人らは、本件訴状において、熊市の共済年金の損害金として、同人の共済年金を余命年数二〇年間受給できたものとしながら、控訴人喜美栄が熊市の年金額の二分の一を控訴人喜美栄の余命年数二七年間受給できるものとしてこれを控除した金三七七万七九五三円を主張していたところ、控訴審において右認定のとおり主張を変えたことがうかがわれる。

思うに、控訴人らが右のように訴状で控除した部分は、これを明示したものであるとして本訴中の右損害部分については一部請求を求めているものと解せないでもないが、右控訴部分は、法律に照らすと本来控除すべきものでないことが明らかであるから、裁判所は、この点の主張がないものと解して差しつかえないものであり、控訴人らは、熊市が余命年数の間受給できたであろう共済年金額を同人の逸失利益であるとして、その全部を主張しているものと解するのが相当である。もつとも、このように解しても控訴人喜美栄が熊市の共済年金額の二分の一につき別に受給権があることを全然考慮に入れないというのではなく、公共企業体職員等共済組合法第三〇条に照らし、右控訴人がすでに給付を受けた年金額の限度で同控訴人の損害賠償債権額から控除すべきものと解するのが相当である。

また、被控訴人は、右慰藉料額の拡張部分について消滅時効を主張している。

記録によると、控訴人らは、本件訴状で主張していた各慰藉料額を控訴審において拡張したことは明らかであるが、控訴人らは、当初において、本件損害賠償の一部についてのみ判決を求める趣旨で右金額を主張していたものではなく、その全部を求めながら、ただ、その相当額の評価として右のような拡張前の金額を主張していたにすぎないことがうかがわれるのである。このような場合には、控訴人らの請求は一部請求といえないから、被控訴人の消滅時効の主張は前提を欠き失当であるから採用できない。

(越智傳 菅浩行 川波利明)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!