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高松高等裁判所 昭和55年(行コ)7号 判決 1981年6月03日

控訴人(原告) 堀川義起

被控訴人(被告) 岡本要

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(当事者の申立)

一  控訴人

1  原判決を取り消す。

2  本件を松山地方裁判所に差し戻す。

3  訴訟費用は第一・二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

(当事者の主張及び証拠関係)

次に付加するほかは、原判決の事実摘示(但し、同摘示中の「伊予市」を「伊豫市」と改める。)と同じであるから、これを引用する。

一  控訴人の主張

1  被控訴人は、伊豫市の水道事業管理者として白石設計有限会社との間で本件水道工事の監理を同会社に委託する旨の契約を結んでこれを履行せしめ、その監理行為は、本件水道工事の完了日である昭和五四年四月二二日に終わつた。控訴人は、単に右契約の締結自体が違法であるというのではなく、工事の監理を委託し履行せしめたことが契約締結行為を含めて違法であるとして、委託行為により同市が被つた損害のために必要な措置を講じることを求めるべく、右監理行為の終わつた日から一年内である昭和五五年三月二二日本件監査請求に及んだものである。従つて、本件監査請求は、地方自治法第二四二条第二項の制限期間内になされているから、適法というべきである。

2  右監理委託契約の締結は、その必要が全くなかつた(伊豫市の職員において監理でき、現に同市水道課長一級建築士向井淳が監理業務にあたつていた。)のに、しかも、建築士法による建築設計事務所の登録を受けていない白石設計との間でなされているので、被控訴人が水道事業監理者としての管理業務を違法に怠る事実にあたるところ、これについては地方自治法第二四二条第二項の期間制限を受けないというべきであるから、本件監査請求は適法である。

二  被控訴人の認否

控訴人の右主張事実は争う。なお、本件水道工事の一環としてのポンプ室の建築に関する建築確認申請書(甲第一〇号証)及び建築計画概要書(甲第一一号証の一)に設計者として水道課長向井淳の氏名が記入されているが、これは、建築確認を急ぐために便宜上なされたものであつて、同人は設計をしていない。

三  当審における証拠関係<省略>

理由

一  本件につき更に審究した結果、当裁判所も控訴人の本件訴えは不適法であつて却下を免れないものと認める。そして、その理由は、次に付加するほか、原判決の説示する理由(但し、同説示中の「伊予市」を「伊豫市」と改める。)と同じであるから、これを引用する。

1  当審における控訴人の主張1について。

仮に、本件において、地方自治法第二四二条第二項の監査請求期間の始期を、白石設計が監理行為を終わつた時と解すべきであるとしても、証人向井淳の証言及びこれによつて成立の認められる乙第一ないし六号証によれば、白石設計は、昭和五三年一二月一〇日までに監理業務を終了してその旨伊豫市に報告し、同市は、同月二六日工事を検査して合格と認めたうえ、同月二八日白石設計の預金口座に振込む方法で委託料を支払つたことが認められるので、白石設計の監理行為は、遅くとも同月末日までには終わつたとみなければならず、従つて、昭和五五年三月二二日になされた控訴人の本件監査請求は、やはり右請求期間を経過した後のものであるといわざるをえない。

2  同2について。

地方自治法第二四二条第一項、第二四二条の二第一項第四号の規定によれば、地方公共団体の長その他の職員について、違法又は不当に財産の管理等を怠る事実があるときは、住民において、これにつき監査請求を経たうえ、地方公共団体に代位して怠る事実に係る相手方に対し損害賠償の請求をすることができるけれども、右の怠る事実は不作為を意味するものであるから、控訴人主張のごとき事実はそれに該当するとはいえないし、現に、本件記録によると、控訴人は、伊豫市の水道事業管理者である被控訴人が白石設計に本件水道工事の監理を委託する旨の契約を締結したこと(作為)が違法不当であるとして、そのことにつき、右規定に則り、監査請求を経たうえ、同市に代位して当該職員たる被控訴人に対し損害賠償を求めるべく、本訴請求に及んでいることが明らかである。そして、若し、控訴人の監査請求が、被控訴人において不法行為等により同市に対し損害を被らせその賠償義務を負つているのに同市の財産管理者としての市長がその賠償請求を怠つているからこれにつき適当な措置を求める、というのであり、且つ、それを前提として、控訴人が、右規定により、怠る事実に係る相手方たる被控訴人に対し損害賠償請求の訴えを提起したのであれば、右監査請求は、地方自治法第二四二条第一項にいうところの違法又は不当に財産の管理を怠る事実を改めるために必要な措置を講ずるべきことを求めていることになるから、控訴人主張のように、怠る事実については同条第二項の適用がないとの見解による限り、監査請求の時期如何にかかわらず、右訴え自体は適法であるということになろうが、本件の監査請求及び訴えは、右のごときものではない。従つて、右の主張を考慮にいれても、本件訴えが適法な監査請求の前置を欠いた不適法なものであるとの判断は左右し難い。

二  それゆえ、原判決は相当であつて、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 宮本勝美 鴨井孝之 山脇正道)

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