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高松高等裁判所 昭和60年(ラ)37号 決定 1985年11月22日

抗告人 中井玉美

右代理人弁護士 楠瀬輝夫

相手方 東急物産株式会社

右代表者代表取締役 山本馨

右相手方を債権者、抗告人を債務者とする高松地方裁判所昭和六〇年(ル)第二四四号債権差押命令申立事件について、同裁判所が同年八月一六日になした債権差押命令に対し、抗告人から執行抗告の申立てがあったので、当裁判所は次のとおり決定する。

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

(抗告の趣旨)

本件抗告の趣旨は、「原裁判を取り消す。」との裁判を求めるというのであり、その理由は別紙執行抗告の理由書記載のとおりである。

(当裁判所の判断)

一件記録によれば、抗告人主張のとおりの事実が認められる。そうすると、本件は抗告人に対する破産宣告並びに同時廃止の決定が確定し、抗告人が免責申立中に、相手方の破産債権に基づく強制執行として、抗告人の第三者に対する債権につき差押命令が発せられたことになる。

抗告人は、破産同時廃止の場合は、廃止決定確定後一か月の免責申立期間中及び免責審理期間中は、個別執行は許されないから、右差押命令は違法である旨主張する。しかし、破産債権は破産手続によるのでなければ行使できないから(破産法一六条)、破産手続中は破産債権に基づいて個別執行することは許されないが、破産廃止決定が確定し、破産手続が解止することによって右制限は解除され、破産債権者は個々に権利行使ができる。免責手続は破産手続と別個独立のものであり、同時廃止の場合免責の申立がなされているからといって、本来債権の引当てとなっていた財産が破産手続費用にも満たないゆえをもって、破産者のため保留させておくべき理由はないから、同時廃止の場合も破産債権者は、廃止決定確定後は個別に権利を行使することができるものというべきである。抗告人の主張は採用し難い。記録を精査しても他に原裁判を取り消すべき違法の点は認められない。

よつて本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 宮本勝美 裁判官 早井博昭 上野利隆)

<以下省略>

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