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高松高等裁判所 昭和60年(行コ)7号 判決 1986年9月30日

控訴人 新開武

<ほか一名>

控訴人ら補助参加人 三木豊樹

右訴訟代理人弁護士 奥津亘

同 佐々木齊

同 大石和昭

被控訴人 番正辰雄

<ほか一七名>

右一八名訴訟代理人弁護士 小早川輝雄

同 大西昭一郎

同 赤松和彦

同 大西周四郎

主文

本件訴訟は、昭和六一年五月七日、控訴人らの控訴の取下により終了した。

補助参加人の同月一三日付書面による口頭弁論期日指定申立以後の訴訟費用は、補助参加人の負担とする。

事実

一  補助参加人は、主文第二項記載の書面をもって、本件訴訟につき口頭弁論期日の指定を申し立て、その理由として、次のとおり述べた。

1  本件補助参加に至る経過

(一)  控訴人ら及び森正徳(原審で死亡。)、田中孝(原審で訴取下。)山田勝久ら五名は、昭和五二年五月一六日、坂出市民として同市監査委員に対し、同市市長である被控訴人番正辰雄が林田阿河浜地区工業用地造成事業の施行に伴い、関係漁業団体に支出した漁業補償金は違法・不当なものであって、同市が損害を被っているのでその返還の措置を求める監査請求をしたところ、同市監査委員は、同年七月一三日、右監査請求はいずれも理由がないとして右請求人らに対し同日到達の書面をもってその旨通知したので、右請求人らのうち、山田を除く四名は、同年八月八日高松地方裁判所に住民訴訟として本件訴訟(同裁判所同年(行ウ)第四号)を提起した。

(二)  補助参加人は、同年九月一九日、坂出市民として右(一)と同趣旨により漁業補償金名下の支出行為の違法を主張して同市監査委員に監査請求をしたところ、同監査委員は、同年一一月七日、右監査請求は理由がないとして補助参加人に対し同日から書留郵便到達期間内に到達した書面をもってその旨通知したので、補助参加人は、本件訴訟について控訴人らに対する補助参加の申立をなしたが、被控訴人らの異議もなく、昭和五三年一月三一日以降補助参加人として本件訴訟に関与するに至った。

2  本件補助参加の性質

本件補助参加は共同訴訟的補助参加である。

補助参加人がみずから監査請求をしてその結果の通知を受けたとき、既に控訴人らによって本件訴訟が係属していただけでなく、控訴人らの出訴期間も経過していたのであるから、補助参加人は右訴訟について訴提起の資格を喪失し、もはや共同訴訟参加することもできない状態となっていたのである。仮に、このような場合においても、共同訴訟参加が許されるとすれば、既に訴訟の係属している控訴人ら以外の住民に実質的に同一の訴訟の提起を認めることとなって、地方自治法二四二条の二第二項一号が三〇日という短い出訴期間を定め、別訴を禁止して早期、かつ、合一に訴訟を確定させようとする趣旨に反することとなるからである。

補助参加人は、みずからなした監査請求に対する監査結果の通知があったときから、前記法条所定の期間内に参加しているのであり、したがって、右参加は単なる補助参加でなく、共同訴訟的補助参加と解すべきである。

3  控訴人らの控訴の取下による本件訴訟の帰趨

控訴人ら作成名義の控訴取下書は当裁判所に提出されているが、共同訴訟的補助参加については、民訴法六九条二項の適用がないことは明らかであるから、仮に、右取下が有効であったとしても、補助参加人のなした控訴の効力に影響はなく、本件控訴は未だ当審に係属している。

4  控訴人らの控訴の取下の効力

仮に、本件補助参加が通常の補助参加であるとしても、本件控訴の取下は、次の理由により、補助参加人の控訴になんらの影響もない。

(一)  控訴人らは、補助参加人の控訴に対し異議のあるときは直ちに控訴の取下をなすべきであるが、二度にわたって口頭弁論期日の通知を受けたのち、被控訴人らから説得されて右取下をしたものであるから、右取下は時機に遅れたものであって、補助参加人の控訴の効力に影響がない。

(二)  控訴人中山の控訴の取下は、同人の意思によらないものか、錯誤によるものであって無効である。

二  被控訴人らは、補助参加人の右主張に関し、次のとおり述べた。

1  地方自治法二四二条の二第一項所定の訴訟が既に係属しているときは、同条の二第四項により他の住民は別訴をもって同一の請求をすることができない。しかし、適法に監査請求手続を経た他の住民は自己について計算された出訴期間である監査結果の通知の日から三〇日以内においては、本訴訟について民訴法七五条所定の共同訴訟参加をすることができる。

2  補助参加人は、監査結果の通知を受けた昭和五二年一一月七日から三〇日以内で、本件訴訟に共同訴訟参加できた同年一二月六日に、補助参加の趣旨を明示し、これに貼用すべき額の印紙を貼用したうえ、補助参加の申立をなしたものである。

3  そうすると、補助参加人は、控訴人らの訴訟追行につき、みずから通常の補助参加人たる地位に甘じたことは明らかであるから、原審の結果が自己に不利益で、かつ、控訴人らの控訴の取下の事態に直面したからといって、当審において控訴人に準ずる地位の回復を主張することは不当である。したがって、補助参加人の本件補助参加に共同訴訟的補助参加の効力を認めるべきでない。

4  補助参加人の主張4は争う。

三  当裁判所は、職権で控訴人両名の本人尋問をした。

理由

一  一件記録によると、本件補助参加に至る経過が補助参加人主張のとおり(ただし、森正徳は原審で訴取下。)であること、控訴人らが昭和六〇年一〇月三一日本件訴訟について原審で敗訴の判決を受け、原審以来の補助参加人が同年一一月一三日右判決について控訴を申し立てたこと、及び、当審における実質的な口頭弁論期日の前である昭和六一年五月七日控訴人ら作成名義の同日付控訴の取下書が当裁判所に提出されたことの各事実をいずれも認めることができる。

二  右認定事実によると、右控訴の取下書が、控訴人らの意思に基づいて有効に成立している以上、民訴法六九条二項により、補助参加人のなした本件控訴はその効力を失い、本件訴訟は既に終了しているものと解すべきところ、補助参加人は、右控訴の取下書をもってしては本件訴訟は未だ終了していないとして、本件訴訟の係属を主張するので、以下右主張の各事由について順次検討する。

1  まず、補助参加人は、本件補助参加は通常の補助参加でなく、共同訴訟的補助参加であるから、仮に、控訴人らが補助参加人のなした本件控訴を取り下げたとしても、右取下は控訴の効力に影響がない旨主張するが、右主張は、補助参加人は同人個有の出訴期間内であっても、控訴人らの出訴期間経過後は共同訴訟参加ができず、共同訴訟的補助参加をなしうるにすぎないことを前提とするものである。

しかしながら、補助参加人は、既に控訴人らによって提起された本件訴訟が係属している以上、別訴を提起することはできないが、適法な監査請求手続を経たのち個有の出訴期間内であれば、控訴人らについての出訴期間内はもとより、その経過後であったとしても、共同訴訟参加をなしうると解するのが地方自治法二四二条の二、民訴法七五条の法意に適うものであって、右共同訴訟参加を控訴人らについての出訴期間内に限ってなしうるとすることはその合理性を見出し難く、これに従うことはできない。したがって、補助参加人の右主張はその前提を欠くものであって採用するに由ないものと言うべきである。

なお、一件記録によると、本件補助参加は通常の補助参加の方法をもってなされており、特に、これが共同訴訟的補助参加であることを明示してなされているものでないことが認められる。そうすると、仮に、補助参加人が本件訴訟について共同訴訟的補助参加をすることができ、かつ、本件補助参加を共同訴訟的補助参加の意思をもってなしたものであるとしても、右は補助参加人の心裡留保というべきものにほかならず、これによって右補助参加の効力を左右するものではなく、まして、右行為をもって共同訴訟的補助参加と解する余地はない。

結局、補助参加人は、本件訴訟について共同訴訟参加する方法があるにもかかわらず、あえて通常の補助参加の方法を選んだものと言うほかはなく、これを共同訴訟的補助参加として扱うことはできないものと解すべきである。

2  次に、補助参加人は、控訴人らの本件控訴の取下は時機に遅れてなされたもので、補助参加人のなした控訴の効力には影響がない旨主張するが、右控訴はこれが係属する限りその取下をなすことは控訴人らの自由であって、右取下の時期に制約があるとは解されないので、右主張は採用の限りでなく、また、補助参加人は、控訴人中山の控訴の取下は同人の意思によらないものか、錯誤によるものである旨主張するが、《証拠省略》によると、右主張事実の認められないことは明らかであるから、右主張も採用できない。

三  以上のとおりであるとすれば、補助参加人のなした本件控訴は、控訴人らの控訴の取下によって、その効力を失い、本件訴訟は終了したものと言うことができる。

四  よって、本件訴訟については本件控訴の取下に基づきその終了を宣言することとし、期日指定申立以後の訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高田政彦 裁判官 早井博昭 上野利隆)

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