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高松高等裁判所 昭和61年(ネ)108号 判決 1988年4月27日

控訴人

福留孝夫

(ほか一三名)

右控訴人ら訴訟代理人弁護士

土田嘉平

右訴訟復代理人弁護士

久保和彦

被控訴人

御国ハイヤー有限会社

右代表者代表取締役

明石直美

右訴訟代理人弁護士

徳弘壽男

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一申立て

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人ら各自に対し、それぞれ別表請求金額欄記載のとおりの各金員及びこれらに対する昭和五八年七月八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文同旨の判決

第二主張

別表

<省略>

当事者双方の主張は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決三丁裏一二行目の「したがって」の前に「本件規則二八条の賞与請求権は、労使双方の合意がなくても、使用主の一方的な支給債務の実行、弁済という行為によって具体化すると解すべきであるから、被控訴人が昭和五六年度、五七年度について、管理者及び非乗務員に対して支給した限り、乗務員に対してもこれと同一基準で支給すべき義務が具体化している。仮に、同一企業、同一職場で働いているにもかかわらず、非乗務員には賞与を支給し、乗務員には支給しないという取扱いをするならば、このような差別取扱いは、労働基準法三条の趣旨に照らして、社会的妥当性を欠き、公序良俗に反する。」を加える。

2  原判決五丁裏七行目の「このように、」の次に「本件規則は、これにより直ちに賞与請求権を発生させるものではなく、」を加える。

3  原判決五丁裏一〇行目の「義務はない。」の次に「また、賞与支給は使用者がその裁量で支給することができるのであるから、被控訴人が非乗務員に賞与を支給した結果、乗務員と差異が生じたとしても、非難されるべきいわれはない。」を加える。

4  原判決六丁表二行目の次行に「(被控訴人の主張に対する控訴人の反論)」を加え、さらにその次行に「被控訴人会社における乗務員と非乗務員の賃金体系は、昭和五〇年以前はいずれも基本給制であったが、その当時でも、非乗務員の退職金算定の基礎額には差異があり、また、乗務員には、乗務手当、洗車手当が支給され、さらに奨励金制度も設けられていたのであるから、乗務員と非乗務員とはもともと賃金体系を異にしていた。その後、乗務員には、歩合制的奨励金制度が導入され、さらに、これが歩合給制度へと変還していったのであって、乗務員の賃金の実態としては、右の変遷の前後を通じて格別の異同はない。このように、乗務員に歩合給制度が導入されたからといって、賞与の支給について非乗務員と別異の取扱いをすべき実質的根拠はまったく存しないのであるから、昭和五一年に歩合給制度が導入されたことをもって、賞与を支払う必要がなくなったことにはならない。」を加える。

第三証拠(略)

理由

一  当裁判所も、控訴人らの本訴請求は理由がなく棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  〔略 後掲74頁4段目後から5行目の証拠の訂正〕

2  原判決七丁表六行目〔同75頁1段目15行目〕の「また、」の次に「昭和五〇年五月一六日に締結された」を加え、さらに同行の「乗務員につき」を「非乗務員の賃金体系は従来どおりとされたのに対し、乗務員の賃金体系については」と改める。

3  原判決九丁表五行目〔同75頁3段目後から2行目〕の「異なっているから」を「基本的に異なるものとなったのであるから、」と改め、同八行目〔同4段目3行目〕の「いえない。」の次に「また、同一企業内に勤務するものであっても、非乗務員と乗務員は労務内容を異にするだけでなく、前記のとおり賃金体系を異にするのであるから、賞与支給の有無のみを比較して、一方に支給しながら他方に支給しないことは公序良俗に反するものとは、到底いえない。」を加える。

4  〔略―同75頁4段目4行目の人証の訂正〕

二  以上の次第で控訴人らの請求を棄却した原判決は相当であって本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柳澤千昭 裁判官 市村陽典 裁判官福家寛は転補のため署名押印できない。裁判長裁判官 柳澤千昭)

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