高松高等裁判所 昭和63年(ネ)69号 判決 1990年11月08日
主文
一、本件控訴を棄却する。
但し、原判決主文第二項及び第三項は、被控訴人の請求の減縮により「二第一事件被告内川長年は、同事件原告に対し、別紙物件目録記載(七)の建物を明け渡せ。三 第一事件被告内川長年は、同事件原告に対し、金六一〇万円並びに昭和六二年六月一日から前項の建物明渡し済みに至るまで一か月金四万円の割合による金員を支払え。」に変更された。
二、控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
一、控訴人ら代理人は、「1 原判決を取り消す。2 被控訴人の請求を棄却する。3(一) 被控訴人は、控訴人内川長年(以下「控訴人内川」という。)に対し、原判決別紙物件目録記載(一)の土地(以下「本件(一)土地」という。)について高知地方法務局安芸支局昭和五六年三月二三日受付第八九六号所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。(二) 控訴人内川と被控訴人との間において、原判決別紙物件目録記載(七)の建物(以下「本件(七)建物」という。)について、控訴人内川が所有権を有することを確認する。(三) 被控訴人は、控訴人内川に対し、本件(七)建物について高知地方法務局安芸支局昭和五六年三月二三日受付第八九六号所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。4 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人らの負担とする。」との判決を求めた。
二、当事者双方の主張は、次の1ないし6のとおり訂正し、三のとおり付加するほか、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
1. 原判決書五丁表七行目「訴外中山に交付して」、から同所九行目「抹消登記手続をする」までを「訴外〓口の代理人である訴外中山に交付し、これにより被告内川の訴外〓口に対する債務が弁済されたことにする、これと引換に訴外〓口は本件抵当権設定登記の抹消登記手続をする」に改める。
2. 同五丁裏六行目「訴外中山」を「訴外〓口の代理人中山」に、同所末行「本件(二)建物を原告に明け渡さず、」から同六丁表二行目「に至った。」までを「本件(二)建物のうち本件(七)建物を占有して明け渡さず、本件(七)建物及び本件(一)土地は原告に売っていないとして右土地建物に対する原告の所有権を争っている。」にそれぞれ改める。
3. 同六丁表三行目冒頭から同五行目「月一〇万円である。」まで(請求原因8)を「本件(二)建物(同建物のうち本件(七)建物は住居部分であり、その余の部分はドライブインである。)及び本件(三)土地(駐車場)を一括して住居付きドライブインとして賃貸すれば、少なくとも月額一五万円で賃貸することができる。ところが、被告内川が本件(七)建物を明け渡さないため住居部分のないドライブインは不便であるということで賃借人が殆どなく、また賃借申込人に対しては被告内川が嫌がらせを言って妨害したためドライブインの賃借人がいなかったがようやくにして昭和六二年六月二二日、ドライブインのみを月額賃料一〇万円で賃貸することができた。このように、原告は被告内川の妨害により本件売買代金を完済した昭和五七年四月二七日の後である同年五月一日から昭和六二年五月三一日までの合計六一か月間少なくとも一か月一〇万円の割合による合計六一〇万円の賃料相当の損害を被った。そして被告内川はなおも本件(七)建物を占有しているので原告は、同年六月一日以降、被告内川が本件(七)建物を明け渡すまで少なくとも月額四万円の賃料相当の損害を被っている。」に改める。
4. 同六丁表一一行目の冒頭から同六丁裏三行目「支払を求め」までを「よって、原告は、被告内川との間において、本件(一)土地及び本件(二)建物について原告が所有権を有することの確認を求めるとともに、同被告に対し、所有権に基づき本件(二)建物の一部分である本件(七)建物の明け渡し並びに賃料相当損害金として金六一〇万円及び昭和六二年六月一日から本件(七)建物の明け渡しずみまで一か月金四万円の割合による金員の支払を求め」に改める。
5. 同七丁裏初行「負っており、」を「負担し、その債務につき」に、同八丁表初行「一二三〇万円」から同所三行目「である。」までを「原告が訴外〓口の代理人である訴外中山に一二三〇万円を交付したことは否認する。原告は、右一二三〇万円を被告内川の代理人である訴外中山に交付したものである。」に、同所六行目「請求原因8の事実は知らない。」を「請求原因8の事実のうち被告内川が本件(七)建物を占有していることは認めるがその余の事実は否認する。」にそれぞれ改める。
6. 同九丁表三行目「被告内川は、」から同所四行目「所有した。」まで(請求原因1)を「被告内川は、昭和四六年九月二八日、本件(一)土地を訴外久保嘉彦から買い受けてその所有権を取得した。」に、同所七行目から同所八行目にかけての「所有した。」を「現在の建坪の本件(二)建物の所有権を取得した。」にそれぞれ改める。
三、1. 被控訴人の控訴人岩佐に対する主張
被控訴人は、本件(一)土地に設定された本件抵当権の権利者である〓口孝利(以下「〓口」という。)の控訴人内川に対する被担保債権について、同土地の買受人(所有者)として、控訴人内川に代位して〓口の代理人である中山日和(以下「中山」という。)に対し、昭和五六年五月二六日、その全額である一二三〇万円を支払った。
2. 右主張に対する控訴人岩佐の認否被控訴人の右主張事実は否認する。
3. 控訴人岩佐の抗弁
〓口の控訴人内川に対する右被担保債権は、一二三〇万円以外に五〇〇万円がある。控訴人岩佐は代位弁済をするについて法律上の利益を有する者ではないが〓口に対して控訴人内川に代わって右五〇〇万円を支払った。
なお、〓口の控訴人岩佐に対する本件抵当権の移転は、〓口の同控訴人に対する債権譲渡に伴うものであって、抵当権独自の譲渡ではない。
四、証拠の関係<略>。
理由
一、第一事件
1. 請求原因1ないし3について
請求原因1ないし3の事実のうち、控訴人内川と被控訴人との間で控訴人内川が同人所有の土地、建物を売り渡す契約を結んだこと、右売買代金は二〇〇〇万円であって、売買対象物件に本件(二)建物(但し、本件(七)建物部分を除く。)、本件(三)ないし(五)の各土地が含まれていること、控訴人内川が契約を締結した日に被控訴人から二〇〇万円を受領したこと、本件(三)土地は農地であって所有権移転について農地法上の許可が必要であったこと、本件(五)土地は同控訴人が第三者から買受けたものの同控訴人に所有権移転登記がなされていなかったこと、右の売買物件中には同控訴人が債権者のために抵当権設定登記をしたものがあったこと及び同控訴人が昭和五六年一月三〇日被控訴人から一五〇万円の支払を受けたことは当事者間に争いがない。
そこで、被控訴人と控訴人内川との間の右売買契約の対象物件に本件(一)土地及び本件(七)建物が含まれているかどうかについて判断する。
<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。
(一) 被控訴人は、昭和五五年一二月ころ、かねてから知り合いの永田敏雄(以下「永田」という。)を介して控訴人内川から本件(一)ないし(五)の土地建物を代金二五〇〇万円で買取ってもらいたいとの申し込みを受けたが、これを断った。その後、被控訴人は、再び永田を介して同控訴人から代金を二〇〇〇万円に減額するから右土地建物を買取ってもらいたいとの申し込みを受けたので、これを承諾した。そこで、被控訴人は、同控訴人との間で不動産売買契約書を作成するための準備として、永田から受領していた字図と永田の説明に基づき、司法書士岡林千鶴子に対し、不動産売買契約書原案のタイプを依頼し、同司法書士からこれを受領した。
(二) 被控訴人、控訴人内川及び永田は、昭和五五年一二月二八日、本件(二)建物に集まり、前記不動産売買契約書原案に副って、売買代金は二〇〇〇万円、被控訴人は同日同控訴人に二〇〇万円を支払う、残代金の支払と所有権移転時期については、同控訴人が売買物件中第三者所有名義の物件について移転登記を受け、その他の物件についても抵当権などの負担のない完全な所有権を移転しうる段階で双方が協議して決めること等を骨子とする合意ができ、被控訴人及び同控訴人が右契約書に署名押印し、二〇〇万円の授受を終ったところ、同控訴人から突然、売り渡した本件(二)建物を月額二〇万円の資料で賃借するから、本件(一)土地を売買物件から除外してもらいたいとの申出があった。そこで双方は右の申出について協議したところ、結局被控訴人がこれを承諾し、右不動産売買契約書(甲第一号証、乙第一号証)の売買物件表示中の本件(一)土地の表示を二本の線で抹消して削除したうえ、同所に被控訴人及び控訴人内川がそれぞれ訂正印を押した。しかし、その際、同控訴人から本件(二)建物のうちの本件(七)建物部分を売買の対象から除外してもらいたいとの申出では全くなかった(もっとも、控訴人内川の所持する不動産売買契約書(乙第一号証)の売買物件の表示中「同所同字壱参九八番地七 壱参九八番弐六地上建物約一〇〇坪」の記載のうち「壱参九八番弐六」の部分が二本の線によって消されているが、同所には前記のような押印がないばかりでなく、被控訴人の所持する不動産売買契約書(甲第一号証)の売買物件の表示には右乙第一号証のように二本の線によって消された形跡は全くない。)。
(三) 控訴人内川は、金融業者である中山から一五〇万円を借り受け、その担保として、本件(二)ないし(四)の土地建物及び同控訴人の父所有の不動産に抵当権を設定していたところ、期限に弁済ができなかったため抵当権実行による競売の申立てをされるおそれが生じた。そこで、同控訴人は、昭和五六年一月、被控訴人に対し、前記売買残代金のうち一五〇万円を早急に支払ってもらえるのであれば本件(一)土地を売買物件に加え、本件(一)(二)及び(四)の土地建物について所有権移転登記をしてもよい旨申し入れた。被控訴人は、右申し入れを承諾し、同月三〇日、控訴人内川に対し一五〇万円を支払い、被控訴人の所持する不動産売買契約書(甲第一号証)中の内金支払の金額を二〇〇万円から三五〇万円に変更し、売買物件の表示に本件(一)土地を加えたうえ、その右上部欄外に「拾四字加入」と記載して(なお、「拾四字削除」は前記抹消の時点にされたかどうか証拠上明らかでない)そこに被控訴人及び控訴人内川がそれぞれ事故の印を押した。なお、同控訴人の所持する不動産売買契約書(乙第一号証)は、同控訴人がこれを持参していなかったため右の変更記入はされなかった。そして、被控訴人は、同年三月二三日、同控訴人から右約定のとおり本件(一)(二)及び(四)の土地建物について所有権移転登記を受けた。
以上の事実が認められる。右認定に反する前掲証人内田裕庸、永田敏雄、及び控訴人内川の各供述部分は前掲各証拠と対比して信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右認定事実によると、被控訴人は、控訴人内川から本件(二)建物を本件(七)建物部分も含めて昭和五五年一二月二八日に、本件(一)土地を昭和五六年一月三〇日にそれぞれ買受けて所有権を取得しその旨登記を経たことは明らかというべきである。
2. 請求原因4ないし6(被控訴人の当審における主張を含む)について
控訴人内川が、昭和五六年二月四日、本件(一)土地について〓口のために債権額一六〇〇万円の本件抵当権設定登記(高知地方法務局安芸支局同日受付第三六六号抵当権設定登記)をしたこと及び右抵当権につき同法務局安芸支局同年五月二七日受付第一五五六号をもって控訴人岩佐のため同月二六日債権譲渡を原因とする抵当権移転の附記登記がされていることは当事者間に争いがない。そして、<証拠>並びに弁論の全趣旨を総合すると、被控訴人は、本件(一)土地買受後所有権移転登記をするまでの間に控訴人内川によって本件抵当権設定登記がされたことを昭和五六年五月になって知り、その抹消登記について、同月、〓口の代理人中山と交渉したところ、同人から被担保債権は一二三〇万円であり、同額の弁済を受ければ本件抵当権設定登記の抹消に応ずる旨の申出があったこと、そこで、被控訴人は、同月二六日、控訴人内川、〓口の代理人中山と協議をし、被控訴人が〓口に対し控訴人内川に代って一二三〇万円を支払うものとし、〓口は本件抵当権設定登記を抹消する、被控訴人の支払う右一二三〇万円は被控訴人の控訴人内川に対する売買残代金をもってこれにあて、更に売買残代金四二〇万円は、同控訴人が本件(二)建物及び本件(四)土地につき高知県信用保証協会のため設定された極度額六〇〇万円の根抵当権の被担保債権の残高四二〇万円余りの支払いにあてることにしたこと、被控訴人は、本件(一)土地の買受人として、同年五月二六日〓口の代理人中山に対し前記被担保債権の全額である一二三〇万円を控訴人内川に代位して支払ったこと、更に被控訴人は、昭和五七年四月二七日高知県信用保証協会に対し前記被担保債権四二四万二七二七円を控訴人内川に代って支払い本件売買代金を完済し、同月三〇日本件(二)建物及び本件(四)土地についての前記信用保証協会を権利者とする根抵当権設定登記の抹消登記を受けたことが認められる。
右認定に反する前掲控訴人内川長年の供述及び控訴人岩佐光廣の原審における供述(第一、二回)は前掲各証拠に対比して信用できない。
右認定事実によると、被控訴人は、本件(一)土地の所有権取得者として、〓口の控訴人内川に対する前記抵当権の被担保債権の全額である一二三〇万円を、昭和五六年五月二六日〓口の代理人中山に弁済したのであるから、〓口の右債権及び抵当権は民法五〇〇条により当然被控訴人に移転され、右のうち債権の移転については対抗要件を必要としないものということができる。
ところで、控訴人岩佐は、昭和五六年五月二六日〓口から控訴人内川に対する本件抵当権によって担保される債権の譲渡を受けたと主張し(引用に係る原判決第一事件三抗弁2)、或は、控訴人内川の〓口に対する本件抵当権の被担保債権のうち五〇〇万円について代位弁済したと主張し(当審)、これにより〓口の控訴人内川に対する本件抵当権の被担保債権及び右抵当権を取得したというのである。そして、官署作成部分については成立に争いがなくその余の部分については原審における控訴人岩佐光廣本人尋問の結果により真正に成立したものと認める丙第一号証によると、〓口は昭和五六年五月二六日付で本件抵当権の被担保債権を控訴人岩佐に譲渡し、債務者内川がこれを承諾する旨記載され、これに高知地方法務局安芸支局の同月二七日の日附印のある登記済印が押された証書(確定日附ある証書)が存在することが認められる。しかしながら、右事実から明らかなように、控訴人岩佐の債権譲受けは、たとえそれが事実であったとしても、その確定日附は同月二七日であるから、被控訴人の代位弁済による債権取得より一日おくれるものであって、被控訴人に対抗することができないものであり、また、控訴人岩佐がその主張どおり五〇〇万円について代位弁済をしたとしても、同人は控訴人内川の〓口に対する債務を弁済するにつき正当な利益を有する者ではない(この事実は控訴人岩佐において自認するところである。)から、代位の効果すなわち債権の移転が生じたことを第三者に対抗するためには債権者たる〓口からの通知又は債務者たる控訴人内川の承諾が確定日附のある証書によってされなければならないところ、このような事実を証明する証拠は存しない。したがって、控訴人岩佐は、本件抵当権の被担保債権の取得を被控訴人に対抗し得ないから、債権の移転に随伴して取得された本件抵当権についてもまた被控訴人に対する関係では、たとえ抵当権移転の附記登記を経ていても、対抗することはできないものというべきである(なお、控訴人岩佐からは被担保債権から離れた抵当権独自の譲受け(民法三七五条一項)は主張されていない。この場合においては、被控訴人と控訴人岩佐の抵当権取得の対抗関係は、登記の有無によって決まることとなる。)。控訴人らの抗弁は失当である。
したがって、被控訴人は控訴人岩佐の本件抵当権の取得を否定し、自己への抵当権移転附記登記ないしは混同による消滅を前提として本件抵当権設定登記の抹消登記手続を請求することができる。
3. 請求原因7の事実(控訴人内川が本件(七)建物を占有している事実)は当事者間に争いがない。
4. 請求原因8について
<証拠>並びに弁論の全趣旨によると、本件(二)建物のうち本件(七)建物は住居部分であり、この住居部分を除いた部分はドライブインであって、控訴人内川は右住居部分を占有している(この事実は争いがない。)こと、同控訴人は、前記認定のとおり、当初本件(二)建物を賃料一か月二〇万円で賃借する旨被控訴人に申し出ていること、被控訴人は、本件(二)建物をドライブインとして賃貸しようとしたが、ドライブインの住居部分に控訴人内川が居住しているため住居部分を除いて賃貸するとなると、使用上不便なため借り手がなかなかつかない上、たまに賃借申込があっても同控訴人が嫌がらせを言うことから賃貸するのが困難であったところ、昭和六二年六月二二日ようやくドライブイン部分(本件(七)建物を除く。)のみを賃料一か月一〇万円で賃貸することができたことが認められる。右認定に反する前掲控訴人内川長年本人の供述部分は措信できず他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
右の事実によると、本件(二)建物のうち本件(七)建物部分を除いたドライブイン部分の賃料は少なくとも月額一〇万円と認めるのが相当であるところ、被控訴人は、控訴人内川が本件(二)建物のうち本件(七)建物部分を占有し、また賃借しようとする者に嫌がらせを言ったことなどから右ドライブイン部分を容易に賃貸できなかったのであるから、同控訴人の右妨害行為により被控訴人が同控訴人に対して本件売買代金を完済した前記認定の昭和五七年四月二七日の後である同年五月一日から賃貸することができた月の前月末日である昭和六二年五月三一日までの合計六一か月間一か月金一〇万円の割合による賃料相当の損害(合計六一〇万円)を被ったと認めることができ、また昭和六二年六月一日以降における本件(七)建物の賃料はその面積、用途及びドライブイン部分の賃料額等を勘案して一か月金四万円と認めるのが相当であるから、被控訴人は同日以降右明け渡し済みまで一か月金四万円の割合による賃料相当の損害を被っているものと認められる。
5. 請求原因9の事実(本件抵当権につき控訴人岩佐のため移転の附記登記がされている事実)は、当事者間に争いがない。
6. 以上によると、第一事件の被控訴人の請求は、(一) 被控訴人が本件(一)土地及び(二)の建物の所有権を取得したから控訴人内川に対し、(1)右(一)土地及び(二)建物の所有権確認を求める請求、(2)本件(七)建物の明け渡しを求める請求、(3)賃料相当の損害金六一〇万円及び昭和六二年六月一日以降(七)建物明渡し済みに至るまで一か月四万円の支払を求める請求はいずれも理由があり、(二) 控訴人岩佐に対する請求は、〓口を権利者として設定された本件抵当権は被控訴人の代位弁済により同人に移転したので、被控訴人は現在の登記簿の権利者である控訴人岩佐に対し移転附記登記に代え抹消登記手続を求めることができる(本来ならば、移転附記登記を求め、混同により権利消滅の抹消登記をするのが順序であるが)ものというべきであるから、理由がある。
二、第二事件について
1. 請求原因1ないし3の各事実は当事者間に争いがない。
2. そこで被控訴人の抗弁について検討するに、被控訴人が本件(一)土地及び(二)建物(本件(七)建物を含む。)を控訴人内川から買い受けその所有権を取得したものであることは第一事件で認定判断したとおりである。
したがって被控訴人の抗弁は理由がある。
3. そうすると、控訴人内川の第二事件の請求はいずれも理由がなく棄却を免れない。
三、よって、原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。