高知地方裁判所 平成16年(行ウ)11号 判決 2004年11月30日
主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 被告が,原告に対し,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書によって別紙1記載の行政情報を非公開とした処分を取り消す。
(2) 訴訟費用は被告の負担とする。
2 請求の趣旨に対する答弁
主文同旨
第2事案の概要
1 本件は,原告が,高知市行政情報公開条例(平成12年条例第68号。以下「本件条例」という。)に基づき,被告に対し,平成11年6月19日付け高知新聞紙面の墓地経営許可申請不許可処分取消請求事件(当庁平成11年(行ウ)第6号。以下「別件訴訟」という。)に関する行政情報(訴訟記録)の公開(写しの交付)を求めたところ(以下「本件請求」という。),平成15年7月16日付けで別紙1記載の行政情報(以下「本件行政情報」という。)を非公開とし,その余を公開する一部公開決定(以下「本件処分」という。)がされたので,原告が,被告に対し,本件処分の取消しを求める事案である。
2 争いのない事実等
以下の各事実は,当事者間に争いのない事実,証拠(甲1,2,乙1ないし3),及び弁論の全趣旨によって容易に認定できる事実である。
(1) 当事者等
原告は,高知県高知市に在住する住民であり,被告は,高知市長であり,本件条例2条1項の実施機関である。
(2) 本件行政情報の記載内容等
本件行政情報は,訴外宗教法人と被告との間で争われた別件訴訟にかかる訴訟記録の一部であり,被告が訴訟当事者として取得し,保有している。なお,別件訴訟は,本件請求の時点で既に確定している。
そして,本件行政情報には,別紙1のとおり,以下の4点の記載がある。
① まず,本件行政情報には,別件訴訟の訴状の請求原因の中の,墓地経営許可申請の要件である墓地の設置場所から100メートル以内にある人家に居住する者の同意の状況についての記載があり(別紙1番号1),個人の居住状況,墓地設置場所における土地の権利関係,宗教法人と人家に居住する個人との同意に係る交渉の内容,宗教法人と人家に居住する個人との民事上の紛争関係について,それぞれ個人の氏名を挙げて記載されている。
② また,本件行政情報には,同じく別件訴訟の訴状の請求原因の中の,墓地経営許可申請の要件である墓地の設置場所から100メートル以内にある人家に居住する者の同意の状況についての記載があり(別紙1番号2),個人の居住状況,宗教法人と人家に居住する個人との民事上の紛争関係について,それぞれ個人の氏名を挙げて記載されている。
③ さらに,本件行政情報には,同じく別件訴訟の訴状の請求原因の中の,宗教法人の墓地経営許可の申請に係る墓地となる土地の一部について所有権又は相続権を有する申請者以外の個人の氏名,及び当該個人を特定し得る土地の地番の記載がある(別紙1番号3)。
④ 加えて,本件行政情報には,別件訴訟の書証である墓地の経営許可申請書(2通)の中の管理者欄に,責任役員の氏名の記載がある(別紙1番号4)。
(3) 前訴の経緯等
① 原告は,平成12年9月4日,平成12年改正前の高知市行政情報公開条例(昭和62年条例第18号。以下「旧条例」という。)7条1項(本件条例6条1項と同様,「行政情報の公開を請求しようとするものは,次の各号に掲げる事項を記載した請求書を実施機関に提出しなければならない。」と規定されていた。)に基づき,被告に対し,平成11年6月19日付け高知新聞紙面の別件訴訟に関する行政情報(前記(2)①ないし④に加え,別の行政情報が含まれていた。以下「旧行政情報」という。)の閲覧を請求した(以下「旧請求」という。)。
② 被告は,原告に対し,平成12年9月20日付け12環保第1153号行政情報一部公開決定通知書により,旧条例6条1項1号(個人識別情報。「個人に関する情報であって特定の個人が識別され,又は識別され得るもの」)又は2号(法人情報)に該当するとして,旧行政情報の一部を非公開とし,その余を公開する決定(以下「旧処分」という。)をし,原告は,そのころ,通知書の交付を受けた。
③ 原告は,平成12年11月20日,旧処分を不服として,被告に対し,異議申立てを行った。
④ 被告は,平成13年6月4日,旧行政情報の一部である本件行政情報について,旧条例6条1項1号本文の個人識別情報に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定(以下「旧異議決定」という。)をし,同決定を同月9日以降に,原告に送達した。なお,被告は,旧異議決定において,旧処分のうち,本件行政情報以外を非公開とした部分については取り消し,平成13年6月4日付け13重環保第1017号によってした決定(以下「1017号決定」という。)により,旧行政情報のうち本件行政情報以外の部分を,原告に対して公開した。
⑤ 原告は,平成13年ころ,旧処分の取消し等を求めて訴訟(当庁平成13年(行ウ)第13号行政情報非公開決定処分取消請求事件。以下「前訴」という。)を提起したところ,平成14年7月5日,口頭弁論が終結し,同年11月22日,旧行政情報のうち本件行政情報にかかる部分について請求を棄却し,その他の部分について訴えを却下し,1017号決定の無効確認を求める部分について訴えを却下する旨の判決がされ,同判決は確定している。
(4) 本件訴訟に至る経緯等
① 原告は,平成15年7月4日,本件条例6条に基づき,被告に対し,本件請求を行った。
② 被告は,原告に対し,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書により,本件行政情報が本件条例9条2号に該当するとして,本件処分をし,原告は,そのころ,通知書の交付を受けた。
③ 原告は,平成15年9月9日,本件処分を不服として,被告に対し,異議申立てを行った。
④ 被告は,平成16年3月25日,本件行政情報は,いずれも本件条例9条2号本文の個人識別情報に該当するとして,異議申立てを棄却する旨の決定をし,同決定を同年4月1日に,原告に送達した。
⑤ 原告は,平成16年6月29日,本件処分の取消しを求めて,被告に対し,本件訴訟を提起した。
(5) 関係規定,旧条例から本件条例への改正の経緯等
本件条例の関係規定,及び平成13年10月に高知市が発行した情報公開の手引(乙1)における高知市行政情報公開条例解釈運用基準(以下「解釈運用基準」という。)の記載については,別紙2及び3のとおりである。
なお,旧条例は,昭和62年4月1日に公布され,同年10月1日から施行されたが,旧条例制定後の情報公開制度をめぐる社会情勢の変化や運用実績を踏まえ,対象情報や非公開条項等のあり方を見直す必要があったこと,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)では,自治体の条例にはない新しい考え方が示され,高知市においてもそれを採り入れることが望ましい部分があったこと,などの理由から,平成11年に見直すこととされ,改正案が,平成12年12月に,高知市議会定例会において可決され,本件条例は,平成13年7月1日から施行されている。
3 争点
本件の争点は,(1)原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か(争点1),(2)本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書ア(「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」)に該当するか否か(争点2)であり,各争点についての当事者の主張は以下のとおりである。
(1) 争点1(原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か)について
① 被告の主張
原告が,被告に対し,別件訴訟の訴訟記録の一部である本件行政情報について公開請求をするのは,本件請求が2度目であるところ,旧請求の際にも,被告は,本件行政情報と同じ部分を,同じ理由で非公開とし,原告は,これに対し,処分の取消しを求める前訴を提起し,請求棄却判決が確定している。
そうすると,前訴と本件訴訟は,申立て及び事実関係が共通で,同一の目標を追及するものであって,訴訟物が実質的に同一であるから,本件訴訟における原告の主張は,前訴の既判力に触れ,主張自体失当であり,請求棄却の判決をすべきである。
② 原告の主張
この点についての原告の主張は明らかではないが,争うものと解される。
(2) 争点2(本件行政情報が本件条例9条2号ただし書アに該当するか否か)について
① 原告の主張
ア 憲法82条は,公開法廷における裁判の対審及び判決について定め,その精神を徹底する趣旨から,民事訴訟法91条1項は,全ての人に対して,訴訟記録を原則として公開することを規定しているところ,本件行政情報は,被告が訴訟当事者となった別件訴訟の訴訟記録の一部であるから,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する。
そして,同法91条2項(公開を禁止した口頭弁論)及び同法92条(秘密保護のための閲覧等の制限)の措置がとられるのは,あくまでも例外であるから,右規定をもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することは実態にそぐわない。
なお,被告は,本件請求は,閲覧の方法ではなく,写しの交付の方法による公開請求であるところ,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の謄写・謄本等の交付請求は,閲覧と異なり,当事者及び利害関係を疎明した第三者のみがこれを請求できると定め,請求主体が制限されているから,この点からも,訴訟記録は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない旨主張する。しかし,同法91条3項と本件条例との公開方法の違いをもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することはできない。
イ 仮に,一般的には訴訟記録が公開されないことがあるとしても,別件訴訟においては,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にあり,被告は,そのことを当然に了知していた。
よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する。
② 被告の主張
ア 本件条例9条2号ただし書アにいう「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」とは,商業登記簿のように,法令等の規定により何人でも閲覧等をすることができると定められている情報をいい,閲覧等が利害関係人に限り認められているもの,あるいは戸籍法による戸籍の謄本・抄本の請求のように,法令等の規定では何人でも閲覧できるとされていても,請求の目的が当該法令等の規定又は運用等により制限され,実質的に何人にも認める趣旨ではない場合には,これに該当しないものであるというのが,本件条例の立法者の解釈である。そして,訴訟記録は,民事訴訟法上,その内容,閲覧請求の主体等について,何らの制限もなく閲覧が可能なものであるとはいえない。
なお,本件請求は,閲覧の方法ではなく,写しの交付の方法による公開請求であるところ,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の謄写・謄本等の交付請求は,閲覧と異なり,当事者及び利害関係を疎明した第三者のみがこれを請求できると定め,請求主体が制限されている。
よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない。
イ 原告は,別件訴訟の訴訟記録は,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にある旨主張する。しかし,本件条例9条2号本文及び3条2項の趣旨からして,本件条例9条2号ただし書アの規定については,厳格に解釈するのが相当であるところ,実施機関のみでは明確に判断ができず,裁判所に照会等しなければ,その該当性の判断が直ちに可能でないような情報は,個人情報の非公開原則に照らし,これを公開してはならないものとされているというべきであり,訴訟記録は右のような情報にあたる。
よって,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アには該当しない。
第3当裁判所の判断
1 争点1(原告の主張が前訴の既判力により遮断されるか否か)について
この点,被告は,前訴と本件訴訟は,申立て及び事実関係が共通で,同一の目標を追及するものであって,訴訟物が実質的に同一であるから,本件訴訟における原告の主張は,前訴の既判力に触れ,主張自体失当である旨主張する。
たしかに,前記第2の2の(3)及び(4)に認定のとおり,原告は,本件行政情報について,旧請求をした上,異議申立てを経て,旧処分に対し前訴を提起していることが認められる。しかし,取消訴訟の訴訟物は,行政処分の違法一般と解されるところ,平成12年9月20日付け12環保第1153号行政情報一部公開決定通知書による旧処分と,平成15年7月16日付け15環保第1141号行政情報一部公開決定通知書による本件処分とでは,取消し対象となる処分が異なっていること,原告が求めている本件行政情報の公開方法も,旧請求が閲覧であるのに対し,本件請求が写しの交付である点で異なっていること,前訴の口頭弁論終結日である平成14年7月5日から,本件訴訟提起時である平成16年6月29日までに,約2年が経過しており,その間には,前記第2の2(5)に認定のとおり,情報公開制度を取り巻く社会情勢が変わり,高知市においても対象情報や非公開条項等のあり方を見直して,旧条例から本件条例に改正されるなど一定程度事情の変化が認められること,などにかんがみると,今後も原告により本件行政情報についての公開請求や訴え提起が繰り返された場合に訴権の濫用になり得ることは別として,本件訴訟の訴訟物が,前訴の訴訟物と実質的に同一であるとはいえず,本件訴訟における原告の主張が,前訴の既判力に触れ,主張自体失当になるということはできない。
よって,被告の主張には理由がない。
2 争点2(本件行政情報が本件条例9条2号ただし書アに該当するか否か)について
(1) 本件条例9条2号本文の該当性について
本件行政情報には,前記第2の2(2)に認定のとおりの各記載が認められるところ,本件行政情報が,本件条例9条2号本文にいう「個人に関する情報」であり,かつ,「特定の個人を識別することができるもの」に該当することは明らかであり,この点につき当事者間に争いはない。そこで,本件行政情報が,「法令等の規定により又は慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」(同条2号ただし書ア)に該当するか否かにつき検討する。
(2) 同条2号ただし書アの該当性について
① この点,原告は,憲法82条及び民事訴訟法91条1項を根拠として,本件行政情報は,別件訴訟の訴訟記録の一部であるから,本件条例9条2号ただし書アに該当する旨主張する。
しかしながら,民事訴訟法は,91条1項において,憲法82条の裁判の公開を徹底する趣旨から,原則として訴訟記録を公開し,すべての人に閲覧請求権を認めているものの,同法91条2項において,一定の場合に閲覧請求の主体を制限し,同法91条3項において,閲覧以外の方法について主体を当事者及び利害関係を疎明した第三者に制限している。また,同法92条は,一定の場合には,裁判所は,当事者の申立てにより,第三者の訴訟記録の閲覧等を制限することができる旨定め,明確な要件と手続のもと,個人のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等の請求権との調整を図っている。
このように,訴訟記録については,民事訴訟法上,閲覧等の請求主体や請求対象に限定が付されていることから,同法91条1項のみを根拠として,訴訟記録の一部であることをもって,本件条例9条ただし書アに該当するとはいえない。この点については,前記第2の2(5)に認定のとおり,解釈運用基準においても,閲覧等が利害関係人に限り認められているもの,あるいは,法令等の規定では何人にも閲覧等が認められるとされていても,請求の目的が当該法令等の規定又は運用等により制限され,実質的に何人にも認める趣旨ではない場合には,「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」には該当しないとされていることも同趣旨であると解される。
原告は,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられるのは,あくまでも例外であるから,右規定をもって,本件行政情報が,本件条例9条2号ただし書アに該当しないと解することは実態にそぐわない旨主張するが,訴訟記録の公開に法律により限定が付されており,その趣旨が,前記のとおり,個人のプライバシーや企業秘密など当事者の秘密保持の利益と第三者の記録閲覧等の請求権との調整を図るものであることに照らせば,同法91条2項及び同法92条の規定が,形式的には同法91条1項の例外規定に該当するからといって,そのことによって訴訟記録が「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」になるものではなく,原告の主張には理由がない。
② また,原告は,別件訴訟において,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述,あるいは提出されたことにより,既に公にされており,何人でも閲覧できる状態にあり,被告は,そのことを当然に了知していたから,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当する旨主張する。
ところで,前記第2の2(5)に認定のような本件条例の解釈運用指針(前文),目的(1条)及び実施機関の責務(3条)に関する諸規定,並びに,解釈運用基準の内容によれば,本件条例9条2号本文は,個人のプライバシーを最大限に保護しつつも,プライバシーの具体的内容が法的にも社会通念上も必ずしも明確ではないため,原則として個人識別情報を一律に非開示とする一方,ただし書アにおいて,公にしても,個人のプライバシーを侵害しないか,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内のものについては,非公開とする理由がないから,これを除外することとしたものと解される。
そして,本件条例3条2項及び同項についての解釈運用基準によれば,本件条例9条2号ただし書アの該当性判断にあたっては,個人のプライバシー保護に最大限配慮することが要請されることから,個人情報を公開しても,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確な場合に限定して,本件条例9条2号ただし書アの該当性が認められると解すべきである。
そうすると,訴訟記録について,民事訴訟法91条2項及び同法92条の措置が取られたか否かなどは,本件条例2条1項の実施機関に必ずしも明らかとはいえず,実施機関としては,本件条例9条2号ただし書アの該当性を判断する際には,裁判所に照会する等の必要があることになるから,結局,訴訟記録というだけでは,それを公にした場合に,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確な場合とはいえない。特に,原告は,本件請求において,写しの交付による公開を求めているところ,前述のとおり,民事訴訟法91条3項は,訴訟記録の正本,謄本若しくは抄本の交付については,閲覧の場合とは異なり,請求主体を当事者及び利害関係を疎明した第三者に制限していることからすれば,本件行政情報を写しの交付という方法で公開することが,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確であるということはできない。
とすれば,原告が主張するとおり,仮に,別件訴訟において,民事訴訟法91条2項や同法92条の措置がとられることなく,公開法廷において,訴訟記録が陳述あるいは提出されたことにより,既に公にされ,何人でも閲覧できる状態にあったとしても,実施機関のみでは,当該訴訟記録の公開によって,個人のプライバシーを侵害しないか,あるいは,侵害するおそれがあるとしても受忍すべき範囲内にとどまることが明確であると判断できない以上,当該訴訟記録の一部である本件行政情報が,「法令等の規定により公にされ,又は公にすることが予定されている情報」に該当するということはできず,原告の主張には理由がない。
③ なお,上記①及び②の説示に照らせば,訴訟記録が,本件条例9条2号ただし書アにいう「慣行として公にされ,又は公にすることが予定されている情報」にも該当しないことは明らかである。
④ 以上によれば,本件行政情報は,本件条例9条2号ただし書アに該当しない。
3 結論
よって,原告の本件請求は理由がないから,これを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 新谷晋司 裁判官 徳増誠一 裁判官 野中高広)
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